今晩、30日、アメリカのインフレ指標に重要なPCEが発表されます。発表後、どういったマーケットの反応があるのに注目が集まっていますが、今週1週間は多くの重要な経済指標の発表がありました。住宅関連、消費者信頼感指数、銀行のストレステストなど発表されましたが、全てにおいて現況の米経済は非常に強いと、改めて確認をできています。
パウエル議長もおっしゃるように、今のアメリカの経済は強いと裏付ける内容になり、株式市場も強い展開が続いています。ただ、今週いくつか注目すべき点がありました。その中の1つとして軟調な状態が続くSOX指数について、今後どうなるのかを見ていきたいと思います。
[ 目次 ]
最初に、消費者信頼感指数を細かく見ていきます。下の図表は、カンファレンスボードの資料です。青いチャートが現況指数、赤いチャートが、これからの期待指数です。注目すべきところは、今まで現況指数は強かったものの、期待指数は見通しが明るくないとされていました。しかし、今回の期待指数は5月の71.5から79.3と大幅に改善しています。労働市場がいい、所得が増えそうだという消費者の短期的な見通しが改善したことから、現況のみならず、今後も経済が強いのではないかということがマーケットの期待として高まっています。ソフトランディングできるのではと、マーケットは強く思ったような状況になっています。現時点での景気は引き続き強そうです。
次にこちらをご覧ください。消費者信頼感指数の中で調査があるのですが、今後12ヶ月でアメリカが景気後退に陥る可能性はどのくらいあるのか、質問したものになっています。5月は73.2%の方が景気後退に入るとしていましたが、今回は69.3%まで景気後退があるという方が減っています。
69.3%もあることも言えますが、以前に比べると景気後退に関する懸念は薄れてきていることから、プラス材料になったことは事実です。これに加えて、今週の住宅に関する指標がすごく強いということで、これから経済はソフトランディングするとの期待感から、今週の株式市場は支えられています。
その中で注目していただきたいことは2つです。まずはFRBのバランスシートに関するものを見てみましょう。左の図表、バランスシートの残高を見ると、3月と再び同じ水準まで下がっています。FRBのバランスシートが少なくなっているということで、世の中に対するマネーの供給量が減っていることを「意味します。今後QTが続くことを考えると、FRBのバランスシートが減ってくるということで、マーケットとっては向かい風になる可能性があるというのが1つ目のポイントです。
次に右のチャートをご覧ください。BTFP、地方銀行が保有するアメリカの国債が金利上昇などを伴い、値下がりし、それを担保に短期資金を12ヶ月間、お金を借りられるというプログラムが3月からスタートしました。一時期のように大きくは伸びていないものの、利用額は増えています。今週に入っても、10年金利の上昇が見られていますから、今後も利用が増えてくると想定をされます。これが増えると、資金を調達できたことで信用不安面では安定を増しますが、BTFPの調達金利は非常に高く、地方銀行の収益性がさらに損なわれます。結果、今後金融株が重くなってくる可能性も十分にあります。現況の経済が強い一方で、こういったところも少し念頭においていただければと思います。地銀株の上昇がなければその懸念がある証拠です。
次にこちらをご覧ください。赤がFRBの準備金、青いチャートが米株式市場の時価総額です。FRBの準備金は、マーケットに対してお金を供給しているものです。こちらが低下すると、株式市場全体でも時価総額が低下しています。現在は乖離があるので、いずれは収れんするだろうというのが1つ目のポイントです。
さらにポイントになってくるのは、FRBの準備金は、FRBから見ると負債項目になるということです。政府預金が、債務上限問題が解決したことで今後増えていきます。政府の預金が増えると、FRBの準備金は減っていきます。赤いチャートは、これから下向きに向かう傾向が来月以降より強くなってくる可能性を表しています。アメリカの時価総額が下がった際に想定されることは、来月以降の注目点となるでしょう。
冒頭でもお伝えしたように、SOX指数は今週、軟調な状況が続いています。その背景も含めて確認していきましょう。今週、企業決算の発表がありましたが、半導体関連で言えばマイクロンが、消費関連ではゼネナルミルズ、NIKEが発表されました。注目された決算3つの内容はあまり芳しくありません。例えば、ゼネラルミルズは在庫の積み上がりがあり、CEOは「うちだけではなく、他の企業も積み上がっている」と発言しています。NIKEは今後の売り上げガイダンスが期待を下回ったことで、今後の消費、特に北米の消費が落ち込むと言われています。マイクロンは、今後、半導体の米中関係において輸出が細るのではないかと言われていることもあり、今後のガイダンスへの期待を下回ったとして、売られています。
今週の企業決算はあまり良くない状況だったことで、来月以降に控えている企業決算に向けて、少し不安材料が多くなった状況です。
そんな中、先週から今週にかけて各地方連銀の製造業指数が発表されました。ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀以外にも、リッチモンド、カンザスシティ、ダラスなどがありますが、そちらを全て平均化したものが左の黒いチャートです。若干改善しているものの、引き続きゼロを割り込んでいます。製造業は引き続き、あまり業況としては良くないことが地方連銀の調査では分かっています。7月3日に発表が予定されているISM製造業指数も、そんなに強い内容は出ないと言われています。前回の46.9から47.1に若干上昇する程度に収まると言われていますが、その上で右の方をご覧いただければと思います。
ISM製造業指数は、各地方連銀の製造業指数と連動性が高く、7月3日に発表されるものもあまり強くないと思われています。それを表したものが下の図表です。グレーのチャートがISMの製造業指数、赤いチャートはアメリカの株式市場の時価総額を表したもので、連動性がすごく高いと知られています。グレーのISMは、利益に対して10ヶ月間先行しますから、46.9が47.1と来週月曜日になってくるようであれば、50を割り込んだ状態ですから、業況としては悪いことが製造業では確認できます。NIKE、ゼネナルミルズだけではなく、製造業も悪いとなってくると、株式市場には向かい風になる可能性があるということには注意して、7月中旬以降の決算を見ていただければと思っています。
そして最後にこちらです。SOX指数について見ていただきたいと思います。SOX指数とISM新規受注は非常に相関が高いことで知られています。
左をご覧ください。青がSOX指数、半導体を集めたもので、赤いチャートがISMのPMIにおけるNew order、新規受注です。新規受注が大きく下落をしている中において、今回、マーケットを大きく引っ張っていたSOX指数は上昇しています。SOX指数とニューオーダーは非常に連動性が高いですが、赤い矢印のように、たまにSOX指数が先行することがあります。過去においては、現状に大きく乖離した場合、ISMのニューオーダーに引っ張られる傾向があります。こういった観点からいきますと、どちらが正しいのか。AIが成長することを考えてSOX指数が先行しているわけですが、ガイダンスが期待通りにいくかどうかも含めて来週以降の注目材料になります。もしも過去と同じようにニューオーダーのように引きずられることがあれば、株式市場にとっては材料される可能性があります。
次に右のチャートをご覧ください。SOX指数とS&P500です。青いチャートがSOX指数、S&P500はオレンジのチャートです。SOX指数が横ばい、もしくは下落すると、S&P500も下がります。赤い網掛けをご覧ください。今週に入り、SOX指数は下落しています。マイクロンの決算もそうです。米中の輸出関係も含めて、SOX指数に関する懸念が若干広がっている中においてS&P500は上昇していますが、来週以降も、こういった状況が続くのか、それともSOX指数が上昇するのか、引っ張られるのか。そういったところも来週以降の注目材料となるでしょう。
30日のPCEコアをしっかりと見つつ、物価がどうなるのか、政策金利が今後どうなるのかを確認いただければと思います。今週までに出てきた経済指標がすごく強いことが確認できたわけですが、7月中旬からは決算を控えています。決算の見通しにどういった影響があるのか。例えばISMの製造業やISMの非製造業など、来週はいろいろな経済指標が揃っています。
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