【米国株】ISM製造業指数と米学生ローン再開による株価と消費動向への影響【7/5 マーケット見通し】

【米国株】ISM製造業指数と米学生ローン再開による株価と消費動向への影響【7/5 マーケット見通し】

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

7月3日に発表されたISM製造業指数、週末の学生ローンの返済免除について最高裁判所の判断が下りました。今後の消費にどういった影響があるかを見ていきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

米国の景気先行指数

ISM製造業景況指数は低下継続

青いチャートは、3日に発表されたISM製造業景況指数です。緑のチャートがS&Pグローバルの米国製造PMI、3日に発表された確定値です。共に下落し、50を割っています。3日に発表されたISM製造業景況指数は46という結果です。予想の47.2も下回り、前回の46.9も下回っています。また、8ヶ月連続で50を割り込んでいます。これは景気の拡大と後退の分岐点として知られ、製造業が景気後退を示していることが分かります。

ISM製造業景況指数は縮小が続く

次にこちらをご覧ください。ISM製造業指数の結果を受け、株式市場は本来大きく崩れるようなヘッドラインでしたが、実際には崩れていませんでした。中身を見ると、まちまちの内容だったためです。

今回のISM製造業数について、一番の注目材料だった新規受注は、前月の42.6から45.6と上昇しています。10ヶ月連続で縮小の領域に入っているものの、前月よりも新規受注がプラスに推移したことは、非常に明るい材料になっています。

これまでにも何度かお伝えしていますが、ISM製造業指数の総合PMIが50を下回ることは、株価にとってマイナスの影響があります。ISMのPMIに対して、新規受注と、赤で示した在庫を引いた数字がプラスになる場合、PMIの3ヶ月先行指数として機能します。つまり新規受注-在庫がプラスになった後は、3ヶ月後にPMIが上昇することが過去の実績から想定できます。今回の45.6から在庫の44を引くと、1.6ということでプラス圏になっています。これは素直にいい内容でした。

この内容を受けて、新規受注が50を割っているものの、今後ISMが上昇すると考えられるプラス材料となりました。ただ、他の箇所を見ると、全ての項目が50割れとなっています。雇用の低下、海外需要の減速など、中国等も大きく影響しているかと思います。

顧客在庫を見ても大きく減少しています。これは今後の景況感をしっかりと判断して、予備的に減らしていると考えられます。確かに新規受注-在庫はプラス材料ですが、全項目が50を割れているということで、なかなか判断が難しい内容となり、マーケットは動きづらくなりました。

前回記事でもお伝えしたように、今回のISM製造業指数については、ある程度持ちこたえる、もしくは上昇する兆しがありました。もともとそういう予想もあったことから、サプライズ的な内容にはあまりなっていません。しかし、新規受注が増えたことはプラスですから、6日のISM非製造業指数がどうなるかに注目が集まると思っています。

学生ローンの返済が再開する影響は

S&P500企業の利益成長率は低下するか?

こちらをご覧ください。ISMのPMIとS&P500の企業利益は、連動性が高いことで知られています。青いチャートのPMIは46になっていますので、S&P500の利益成長率はマイナス圏に推移してもおかしくありません。今は8%の近く利益成長率が見込まれています。

ただ、こちらのチャートを見ていただければ分かるように、ISMのPMI総合指数が50を割って行くと、追いかけるように赤の利益成長率は下がってきます。今後、利益成長率が下がる可能性があります。

さらに先ほど見てもらったように、新規のオーダーが増えてきているということは、青いチャートが上昇するようであれば、利益は下がりません。今回これをどう捉えるかは、マーケットにとって非常に難しい判断を迫られる状況です。ISMの非製造業指数、実際にサービス業がどうなっているかに注目が移っていると思っています。

学生ローンの返済開始の影響

そんな中で週末に発表された、学生ローンの返済についての最高裁の判決が出ました。結果として、最短でも8月29日から学生ローンの返済がスタートする可能性が出てきました。

学生ローン返済開始による影響の有無については、各情報ベンダーからいろいろなニュースが出ています。今回は、バークレーズが出した資料の中から、今回の学生ローン返済再開は今後消費に大きなインパクトがあるというものを、ご紹介したいと思っています。

チャートの左下は、学生ローンの返済が再開することで、小売売上高の成長率からローンの返済額を引いたところ、点線のように、前年比でマイナスの小売になると予想されることを出したものです。小売が前年比マイナスになるということは、グレーの網掛けを見ていただいても分かるように、景気後退に入ることになります。小売が落ちてくるということは、製造業というよりも、6日に発表されるISM非製造業の結果がどうなるのかに焦点が移るきっかけにもなっていると思っています。

今回話題になっている学生ローンの保有者自体は4,050万人いて、学生ローンの返済免除プログラムは、30年間で約57兆円減額になると言われていました。しかし、今回それは認めないことになりました。学生ローンの金利は、政府から借りているものが約97%、金利は5~7.5%程度と高い金利になっています。再開されるのが8月29日から予定されているわけですが、平均の毎月返済額が約5万6,000円(390ドル)。返済対象としている方の月給ベースでいけば、8%程度の負担が増えると言われています。

ここ3年間、コロナショックの後に利息分も含めて元本の返済を止めてきたことによって、かなり生活が安定してきたわけですが、これは9月以降に支払いが再開することになると、全体で毎月158億ドルの返済をしなくてはなりませんから、大きく消費に影響があると言われています。

また、これを返済する学生ローンの対象者は、コト消費を行うゾーンと言われています。その意味では、サービス業に対するインパクトがかなり大きくなります。今後サービス業の影響、ハイテク株の中でもAppleなどの業績に影響があるとのレポートも出ています。そういった意味では注目していただければと思っています。

そのうえで、小売がマイナス圏に推移することはリセッション入りを表します。ポイントは、ISMの製造業指数です。過去のISM製造業指数に関して言えば、リセッションに入った暁には、ISMがボトムをつけるのはリセッション入り後という結果が過去には出ています。小売がマイナスに推移してリセッションに入るということは、過去の流れから言うと、ISM製造業指数がさらに低下する可能性があります。小売がどうなるのかは、かなり大きな判断材料となるでしょう。

さらに右のチャートをご覧ください。赤いチャートが失業率です。一方で青いチャートは、クレジットカードの延滞率を表しています。1つ目のポイントは、コロナショック前の延滞率を超えない程度に低いことです。今後、学生ローンの支払いを行ったとしても、クレジットの返済はそこまで落ちていないから大丈夫と言う方もいらっしゃいます。ですが、コロナショック後、大きく延滞率が低下しています。この背景には、学生ローン停止や、給付金で2兆ドル近くあった過剰貯蓄により、カードの返済がうまくいっていたことが挙げられます。

ただ、学生ローンが止まっているうえ、まだ過剰貯蓄も残っている状態で延滞率が上がってきていますから、今後過剰貯蓄が10~11月に枯渇し、5月から学生ローンの支払いがスタートすると、コロナ前の延滞率の水準を超えてくると考えられます。もし失業率が上昇すれば、さらに消費が滞ることに繋がります。カードの延滞率が高くなれば、銀行の貸し出し態度にも影響を与えることになります。今回の学生ローンの返済猶予がなくなったことは、マーケットに大きな影響があるのではと考えた方がいいでしょう。

6日にはISM非製造業指数の発表があります。ISM製造業指数の内容がまちまちだったうえに、学生ローンの影響がどう出てくるかが気にかけられる中で、ISM非製造業指数は非常に注目を集めています。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

ファミリーオフィスとは  〜 資産運用や資産管理で注目を集める理由 〜

ファミリーオフィスとは 〜 資産運用や資産管理で注目を集める理由 〜

ここ最近、「ファミリーオフィス」という言葉を、新聞や雑誌記事などで見かけることも多くなってきました。そこでは、 …

【第4回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程②後工程:日本企業はリードを保ち成長できるのか?今後の展望〜

【第4回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程②後工程:日本企業はリードを保ち成長できるのか?今後の展望〜

半導体製造の工程は、ウェーハ上に電子回路を形成する「前工程」と、完成したウェーハを個々のチップに分割し、外部と …

日本株の浮沈を握る決算シーズン到来!注目セクターはココだ!

日本株の浮沈を握る決算シーズン到来!注目セクターはココだ!

日本株の浮沈のカギを握る決算発表シーズンが始まりました。歴史的な賃上げと円安というコストアップ要因が企業にどの …

【第3回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程①前工程。日本企業の将来は?今後の展望〜

【第3回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程①前工程。日本企業の将来は?今後の展望〜

半導体は現代社会のあらゆる分野で重要な役割を果たしており、その複雑かつ高度な製造工程は、現代のテクノロジーの基 …

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

東証グロース市場250指数(グロース250)が年初来安値を更新するなど、グロース株の下落が目立っています。4月 …

【第1回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

【第1回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

近年、世界の株式市場の牽引役は間違いなく半導体企業でした。ただ、全ての半導体企業に対して広がった成長神話は、こ …

【第2回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

【第2回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

今回は、半導体業界を理解するために業界の概要と市場動向を見ていきます。 [ 目次 ]1 半導体業界の概要と市場 …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

おすすめ記事