本日のテーマは、今週最大の注目イベントであるFOMCです。FOMCはハト派的な内容になるとマーケットでは予想されています。今回の内容を確認しつつ、FOMC以降に市場が注目するであろう点についてもお伝えしたいと思います。
[ 目次 ]
マーケットでは、マーケットの予想をタカ派的な発言で牽制する可能性は低いと言われています。私も、2つの観点からハト派的な内容となる可能性が高いのではないかと考えています。
1つ目のポイントは、FRBのインフレ目標に近付きつつあることです。先週金曜日にPCEコアの価格指数が発表されました。前年比でプラス2.9%の上昇になりましたので2%の目標に対して、まだ上回っていると見る方もあるでしょう。しかし、2021年以来の低い伸びです。また、直近6ヶ月の年率ベースで見ると1.9%と、2ヶ月連続で2%を下回っています。
図表は、過去6ヶ月を年率換算した場合のPCEコアのパーセンテージを表していますが、2%を切っていることで、FRBがターゲットとしているインフレを下回ってきていることがわかりました。
直近3ヶ月で見ると年率ベースは1.5%で、2%を大きく下回っています。インフレはある程度沈静化していると、FRBは自信を持っているのではないかと考えられます。インフレの現状を踏まえると、FRBが強い牽制をマーケットに対して打ってくるとは、少し考えにくいのではないかというのが1つ目のポイントです。
2つ目のポイントは、実質FFレートが高いことから、金利引き下げにある程度前向きになる可能性が高いということです。
前回のFOMCの議事要旨の中で注目すべきポイントは、「多くの参加者が、金融引き締め策をどの程度、長期間維持する必要があるかを巡って不確実性が非常に高まっているとして、過度に制約的な金融政策に伴う景気下振れリスクを指摘」していることです。政策金利を高く留めることで、景気を過度に押し下げてはならないという懸念がFRB内で、話し合われたということです。
その際、FRBのメンバーが注目しているのは実質FFレートです。実質FFレートとは、FFレートから、コアCPIを引いたものです。
実質FFレートがプラスに推移すると、経済に対して抑制的な効果を持ちます。現在の実質FFレートは2.4%という高水準になっています。現在の高水準が続けば、経済を過度に抑制し、景気後退につながる可能性があると考えられます。過去のチャートを見ても、実質FFレートが急激に上昇した後には、景気後退に陥っているケースが多く見られます。
ほとんどのケースにおいて、実質金利が大きく上昇した後は経済が疲弊し、景気後退になっています。FRBとしては、今回の利下げを予備的に3月~6月に実施すると言われています。PCEコアデフレーターが目標に近付いていること、実質金利が高くなっていることから、金利の引き下げを前向きに検討することがメインシナリオとなっています。
FOMCで、利下げの先延ばしを主張する可能性は非常に低いと、市場関係者は考えています。しかし、左の図表にあるように、1970年代には利下げ後のインフレ再燃で再度の利下げを行った結果、大きな景気後退に陥ったことがありました。
青は70年代のチャート、黒が今回の動きとなっています。下がったからと金利を引き下げた後、インフレが再燃する可能性は以前パウエル議長も言及していました。このような事例を意識し、金利の引き下げを主張すれば景気後退が起こる可能性があるため、リスクが高いと考えられています。
次に右の図表をご覧ください。最近はWTIが再び上昇する動きが見られています。地政学による原油価格高騰が意識されています。また、中国が積極的な財政施策を取ることで景気が回復すれば、原油需要が高まります。結果としてインフレが高まる可能性が出てきます。
インフレ再燃、地政学リスクによるWTIの上昇をFRBが重要視し、金利の引き下げを遅らせると、実質金利が経済を圧迫する可能性があります。先延ばしは大きなリスクとなる可能性がありますので、ハト派的ではなく先延ばしにすると発言すれば、マーケットは大きく反応する可能性があります。
リスクはあるものの、メインシナリオとしては利下げが視野に入ってきています。利下げが視野に入ると、FOMC後は雇用関連に注目が集まるでしょう。今週は雇用統計やISM製造業指数の雇用指数も出てきます。JOLTSなどの雇用関連指標は注目する必要があります。
利下げ開始後、ソフトランディングが成功したのは、1996年のケースのみだと言われています。赤い矢印は、3回の利下げを行った1995年7月6日~1996年の1月31日までの7ヶ月間を示しています。FFレートは6%から5.25%に下がり、0.75%の利下げに留まりました。この時は利下げを開始しましたが、ソフトランディングができました。実質FFレートが高くなりましたが、そこまで下げることがなかったため、ソフトランディングが達成できたケースとなります。
一方で、1980年代後半、1990年代、2000年、2008年の利下げ実施後には、もれなく景気後退をしています。
なぜ1996年は景気後退をしなかったのでしょうか。それは失業率が上昇しなかったためです。緑のチャートで示した失業率が、利下げ後に大きく上昇しています。今後失業率が上がるか、上がらないかが、利下げが視野に入ってくると非常に注目されます。
そのため、雇用統計の失業率、JOLTSにおける求人件数減少が今後かなりの注目を集めることとなるでしょう。今後失業率が上昇するようであれば、リセッションの可能性が高まったとしてマーケットは警戒します。
逆に、失業率が上昇せずに強い雇用状態が継続すれば、ソフトランディングを達成できるとの期待感が高まります。
ただし、現在のマーケットは、6回の金利引き下げを織り込んでいます。もし失業率があまり上昇せず、金利引き下げの回数が3回程度に留まれば、市場の期待と大きく異なる結果となり、短期的には軋轢が生じる可能性があります。雇用次第では、マーケットの反応は大きく変わってくる点に注目いただければと思います。
今週はFOMCだけでなく、企業決算にも注目が集まっています。1月30日と2月1日は、FOMCを挟んでAlphabet、Microsoft、Amazon、Metaに注目いただきたいと思います。
なぜこの4つを取り上げたかといいますと、Alphabet、Microsoft、Amazon、Meta、NVIDIAの5社が、今年のS&P500の価格上昇の70%に寄与しているためです。5社が大きく決算を外すことになれば、マーケットは大きく下落します。
左の図表をご覧ください。23年の第4Qは、M7企業が牽引している以外、見通しが大きく低下しています。5社がいかに踏ん張れるかが注目されます。1月30日と2月1日に決算発表を控えるAlphabet、Microsoft、Amazon、Meta の4社が、無難に決算をこなせるかが注目となります。
今週はFOMCのコメント、その後の雇用関連情報、4社の決算に注目が集まっています。結果が出た後は、市場の方向感がある程度出てくるでしょう。いい結果であればマーケットは伸びるでしょうし、マーケットが嫌がる展開になれば、警戒感を高めてポジションを減らすなどの対応が必要となるでしょう。そのため、今週は注目が集まる1週間となります。
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