【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、アメリカの利下げなどで環境が整ってきていることから、米国小型株に注目する方がより増えている印象です。

そこで本日は、なぜ米国の小型株に注目が集まっているのかを、バリエーション、金融環境の観点から確認します。今後の投資判断に役立つかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

米国小型株の現状

ここ数年アンダーパフォームする米小型株

まずは、ここ数年間のパフォーマンスを確認します。黄色がS&P500、緑がラッセル2000です。2020年まではパフォーマンスに大きな違いは見られませんでした。

しかし、最近になってS&P500に対して、ラッセル2000がアンダーパフォームするようになっています。過剰流動性から、成長性に期待して大型株にシフトしていることが影響していると考えられますが、いずれにしても、ラッセル2000のパフォーマンスが芳しくないことは確かです。

右のチャートをご覧ください。こちらは、ラッセル2000をS&P500で割ったレシオです。上昇すると小型株が高くなり、下降すると小型株が安くなっていることを示します。下降が続いていることから、最近は小型株が安くなり続けていることがわかります。2000年のような歴史的な安さには至っていませんが、ラッセル2000がかなり割安な水準にあると言えます。

ただ、投資を行う際に、水準感のみで判断することはあまりにも危険です。そこで、バリエーションはどうかを見てみましょう。

ラッセル2000は割安に評価されている

結論から言えば、ラッセル2000は非常に割安に評価されています。左の図表をご覧ください。ラッセル2000をS&P500で割ったレシオを2つご用意しました。

濃い緑のチャート、指数を割ったものを見ると、ラッセル2000が非常に割安で放置されていることがわかります。薄緑色のチャートは、12ヶ月の予想PERはでラッセル2000は16.9倍で評価されていることになります。過去の平均は19.4倍です。標準偏差(65%内に収まる確率)の下限、16.4倍をかろうじて超えている状況です。

PBRから見ても、株価は標準偏差1の下限に近い2.04倍です。平均が2.2倍ですから、やはり割安となっていることがわかります。

S&P500は、予想PERが過去平均16.1倍に対して20.6倍と、標準偏差を超える割高な評価になっています。また、PBRでも、平均3.4倍に対して4.6倍ですから、こちらも割高となっています。S&P500が割高な一方、ラッセル2000は割安に放置されていることがわかりました。

資金の流れがS&P500を選好しているわけですが、この流れが変わるきっかけがあれば、ラッセル2000が上がるのでは、との期待が持たれ、今年は注目を集めているのです。

ラッセル2000に影響を与える経済環境

小型株の成長率が大幅に上昇する可能性も

昨年対比のEPS成長率を見ると、S&P500とラッセル2000で、いくつか興味深い変化が見られます。

S&P500の成長率を濃い青の棒チャート、ラッセル2000の前年比成長率を水色の棒チャート表しました。昨年末の12月時点の昨年対比EPS成長率を見ると、S&P500をラッセル2000が2022年の9月以来上回ったことが見てとれます。

下落が非常に大きかったことが前年比での伸びにつながっているわけですが、いずれにしても下落傾向をラッセル2000が抜け出し、EPS成長率はプラス圏に推移してきています。EPSの成長が鈍化する局面では、バリエーションは大きく下がります。EPSが上がる状況、S&P500を上回る前年比成長を遂げる場合でも割安なままで放置されるのか、ということがラッセル2000に注目が集まっている理由の1つです。

次に右側、大和アセットマネジメントが提供している指数別EPS成長率をご覧ください。S&P500、2024年の成長を示した棒グラフを見ると、現在の成長を支えるM7は、2024年も大きく成長することが期待されていることがわかります。

一方、ラッセル2000に含まれる小型グロース株は、2024年に非常に大きな成長が見込まれています。2024年は、M7よりも小型グロースの方が成長する、という期待感を持たれているのです。割安で放置された状態がいつまで続くのか、ということで注目される方が多くなっています。

ここまで、バリエーションとEPS成長率の観点から、ラッセル2000に多くの注目が集まっている理由をご説明しました。

利下げ開始が小型株に優位になる可能性も

最後に、経済環境を確認します。緑のチャートはFFレート(アメリカの政策金利)、オレンジのチャートはラッセル2000をS&P500で割ったレシオです。オレンジは上昇するほど小型株高、下降するほど小型株安を示しています。

先週の金曜日に公表されたPCEコアデフレーターは、予想をそこまで大きく上回らなかったことで、恐らく6月に金利が引き下げられるとマーケットは考えています。言い換えれば、6月以降、緑のFFレートが下がってくるのでは、とマーケットは考えています。

では、過去の局面において、利下げは小型株、S&P500の関係にどのような影響を与えてきたのでしょうか。2000年に利下げを行った際には、小型株が大きく上昇しました。また、2008年の利下げ後にも、小型株は大きく上昇しました。コロナショック後、小型株は一時的に大きく上昇しましたが、資金の余りで加工しています。

金融政策によって、小型株が必ず上昇する、とまでは断言できません。ただ、経済の原則から考えると、緩和的な姿勢に転じると、小型株に資金流入する可能性が高まります。金融を借りる状況としては、非常にいいコンディションとなります。そうなれば、小型株の業績改善が良くなると言われています。経済の原理、原則から考えると、利下げが進むと小型株は優位になる可能性があることも、ラッセル2000に注目が高まっている理由となっています。

本日は、ここ最近、話題となることが多いラッセル2000を取り上げました。今年に入ってからも、S&P500はまだまだ堅調に推移しています。ただ、ここ最近はラッセル2000への注目が高まっています。その背景には、ターニングポイントとなりそうな利下げ、バリエーション的にラッセル2000が割安であること、EPSは今年以降、小型株が上昇することがあります。多くの投資家がポートフォリオに小型株を取り入れることを検討する可能性もあり、結果として、ラッセル2000が注目を集めているのです。

水準感だけで投資判断をすると、誤った判断になることがあります。そのため、本日はバリエーション、EPSの成長、金融環境の面から、ラッセル2000を分析しました。もちろん、小型株が今すぐに上昇するわけではありませんが、今後も注目を集めることを頭の片隅に置き、投資戦略を決める際の検討材料としていただければ、と思います。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

東証グロース市場250指数(グロース250)が年初来安値を更新するなど、グロース株の下落が目立っています。4月 …

【第1回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

【第1回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

近年、世界の株式市場の牽引役は間違いなく半導体企業でした。ただ、全ての半導体企業に対して広がった成長神話は、こ …

【第2回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

【第2回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

今回は、半導体業界を理解するために業界の概要と市場動向を見ていきます。 [ 目次 ]1 半導体業界の概要と市場 …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

先週のFOMCを受け、6月の利上げ可能性が高まってきました。その影響で、今後の長期金利低下などが期待される中で …

おすすめ記事