日本株の浮沈のカギを握る決算発表シーズンが始まりました。歴史的な賃上げと円安というコストアップ要因が企業にどのような影響を与えるか、注目のセクターはどこかについて解説します。
過去1年間で日本株は大きく上昇し、東証株価指数(TOPIX)は30%近くも上昇しました(2024年5月2日時点)。この上昇は、米国やドイツなどの主要国を上回るパフォーマンスです。好調の背景には、日本経済のインフレ局面への移行とコーポレートガバナンス改革の進展に対する期待があります。さらに、円安が進行したことで、輸出企業の業績向上にも寄与しています。
しかし、日本株の上値を抑える懸念材料もあります。半導体関連銘柄の下落は日本株全体の上昇を阻む要因となっています。加えて、円安による原材料やエネルギーなどの輸入コストの上昇は、企業収益を圧迫するリスクがあります。日本企業の価格転嫁力の強化や生産性の向上、そして為替変動の影響を緩和する取り組みが求められます。同時に、日本経済の成長力を高めるための構造改革の加速も不可欠でしょう。
日本企業の3月期決算発表シーズンが本格化するなか、投資家の関心は内需セクターの業績動向に集まっています。日本株が一段高となるには、自動車など一部の輸出セクターだけでなく、内需セクターを含む幅広い業種の明るい業績見通しが必要不可欠だからです。
下のチャートは、青色は⽇経平均内需株50指数、緑色はTOPIXです。24年3月までの高値は、内需関連が牽引役となりました。今後、再び高値更新を狙うには、やはり内需関連の再上昇が欠かせない要素です。
特に、過去1年間でTOPIXをアンダーパフォームしてきたサービスや陸運、空運、小売り、食料品といった内需セクターの動向が注目されます。
内需セクターは、歴史的な賃上げの恩恵を受けて個人消費が持ち直すことで、業績の改善が期待されています。ただし、物価上昇に賃上げが追いついていないことから、消費の本格回復にはまだ時間がかかりそうです。企業が値上げによってコスト増をカバーできるのか、中間決算で業績見通しの上方修正に踏み切れるのかどうかがポイントとなります。
内需関連銘柄のなかでも、小売大手の業績に注目です。堅調な消費動向が確認されれば、内需セクター全般に物色が広がる可能性があるからです。以下のチャートは小売ETF(1630:赤色)とTPOIX(緑色)のパフォーマンス比較です。24年3月の高値圏から、小売銘柄は大幅にTOPIXをアンダーパフォームしています。小売大手の業績動向、株価動向が回復し、小売ETFがTOPIXをアウトパフォームできるようであれば全体物色が強まりそうです。注目しましょう。
以下は、小売ETF(1630)の構成銘柄です。小売大手が多くを占めています。
決算内容と経営陣の先行きの見通し、そして実質賃金の改善度合いを見極めることが、日本株投資の指針になりそうです。内需セクターの業績回復が日本株全体の浮沈を左右する可能性は高いと言えるでしょう。
今年の春闘において、平均賃上げ率が30年以上ぶりの高水準となる5.20%となりました。この賃上げは、企業の販管費増加要因となる一方で、家計を潤し内需セクターの収益増加につながる可能性があります。
しかし、現状では賃上げが物価上昇に追いついておらず、消費者の財布のひもは緩んでいません。厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報」によると、実質賃金は23カ月連続で年割れし、2023年10~12月期の実質GDPも2四半期連続でマイナスを記録しています。
日本株の決算シーズンでは、歴史的な賃上げと円安によるコストアップ要因が企業業績にどう影響するかが焦点です。特に内需セクターの業績回復が日本株全体の浮沈を左右しそうです。しかし、現在の物価上昇に賃上げが追いついておらず、消費の本格的な回復にはまだ時間がかかる見込みです。企業が中間決算で業績見通しを上方修正できれば、内需以外の銘柄にも買いが波及すると予想されます。企業の決算内容と経営層の発言、そして実質賃金の動向を丹念にウォッチしていくことが、日本株投資の指針になるでしょう。
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