トランプラリーはこれからも続くのか?今後の不安材料と死角について【11/11 マーケット見通し】

トランプラリーはこれからも続くのか?今後の不安材料と死角について【11/11 マーケット見通し】

米大統領選挙にて、次期大統領にトランプ氏が選ばれました。それを受けて先週は株価が大きく上昇しています。例えば小型株のラッセルは+8.6%、ナスダックは+5.7%、S&P500、NYダウは+4.6%と、週間でみても非常に大きな上昇となりました。

こうしたトランプラリーが今後も続くかは、市場でも関心が集まっています。そこで本日は、今後考えられる不安材料について分析します。ぜひ最後までご覧ください。

歴史的な上昇のトランプラリー

強烈なトランプラリー

まずは今回のトランプラリーの強烈さをご覧ください。1928年以降、1日で最も大きな上昇を示しました。1週間でもラッセル2000が8.6%上昇するなど、マーケットの期待の高まりがうかがえます。

今後の注目すべきポイント

トリプルレッドの可能性で政策金利見通しに影響

次に今後注目すべきイベントです。下院において共和党がほぼ優勢で間違いないと言われています(記事作成時点)。仮に共和党が下院を占めた場合は、上下院が共和党のトリプルレッドとなります。

トリプルレッドの場合、どのような影響が出てくるのでしょうか。政策金利の先行き見通しを見ると、利下げ速度が緩むと予測されています。大統領選挙以前はグレーのように利下げが続くと思われていました。2025年末には3%近くまで下がる予測でしたが、現時点では3.5%以上となっています。

これはトランプ次期大統領の公約である関税、減税、移民政策などの政策により、インフレ圧力が高まることが影響しています。そのため利下げサイクルの早期終了観測が高まっているのです。即時にマイナスの影響を与えるとは言えませんが、今後、金利上昇につながる可能性もあるため要注意です。

長期金利が低下しているものの

長期金利が低下し、市場は安心感を持っていますが、まだまだ注意が必要です。

こちらのチャート、債券のボラティリティを表したMOVE指数が青、米10年金利が赤です。今回の大統領選においてMOVE指数は大きく下落しています。トランプ大統領が就任すれば、財政出動を行い金利が上昇すると言われています。

しかし、実行可能な政策は限られているとの意見もあり、市場が想定していたほど早期導入されないのではとマーケット関係者は考えています。そのためトランプ氏の就任直後、MOVE指数は大きく下落し、連動して米10年金利も大きく低下しました。これは株価にとってプラスですから、トランプラリーを支える要因となりました。

ただし、政策次第では再び急騰する可能性があることには注意が必要です。

現在の市場環境は前回就任時とは大きく異なる

前回とは異なる金融環境

トランプ氏が大統領に就任した2017年同様、株価が大きく上昇すると考える方は多いです。しかし、今回と前回では大きく環境が異なっています。

1つ目は金融環境です。赤のチャートはS&P500、青のチャートはFFレートです。2017年のFFレートは0.75%。対してトランプ氏が就任する2025年1月は、12月に利下げが行われても4.75%~4.25%の見通しです。

さらに2017年は4~5年にわたる低金利の恩恵を受けていました。利上げが可能な好景気にあり、株価が大きく上昇したのです。一方、今回はインフレ対策で金利が大きく上昇し、ようやく利下げに転じた状況です。

前回と今回を比較すると、金利水準に加え、緩和姿勢、引き締め姿勢かも大きく異なっています。このことがどう影響するかには注意が必要です。

株価のバリュエーション

2つ目の違いはPERです。前回就任した2017年当時、S&P500の予想PERは約17倍でした。その後、積極的な政策で18倍近くまで上昇したわけですが、今回は現時点で22.5倍と高い水準にあります。とはいえ、高い水準にあるからといって株価が割高と断言するのは少し乱暴です。予想EPSがしっかり成長すれば問題ありませんから、今後も予想EPSの上昇が続くかをしっかり確認する必要があります。

現在では堅調なEPS

次にYardeniの予想EPSをご覧ください。青いチャートは各年のEPS(予想EPS)、赤いチャートは12ヶ月後の予想EPSです。12ヶ月後の予想EPSは順調に上昇しており、約270ドルまで上がっています。S&P500を270ドルで割ると、約22倍近いPERとなるわけですが、2025年、2026年の予想EPSは下落傾向となっています。現在、高い成長を続けるEPSが今後下がってくるようであれば、現在の高いPERが正当化できなくなる可能性があるため注意が必要です。

予想EPSは関税の引き上げなどの悪材料を織り込んでいない

なぜこれが言えるのでしょうか。トランプ大統領が中国製品に最大60%、その他の輸入品に20%、特定企業に最大200%の関税を公約通りに課した場合、米国の株式セクターは大きく影響を受ける可能性があります。

現時点でアナリストは、最終的な関税引き上げはそれほど厳しくできないと想定しています。ただ、もし公約通りに関税を引き上げると今後6~12ヶ月で各セクターがどのように反応するかについては、グラフのように厳しい見通しがなされています。

一般消費財の-12%を筆頭に、産業、テクノロジーがマイナスの影響を受けています。一方、ヘルスケアなどはプラス要因とはなりますが、景気敏感銘柄にマイナスの影響となっているうえ、これらをマーケットが織り込んでいないことがEPS予想からは確認できます。もし公約通りに関税が導入されれば、株価がショックを受けることには注意が必要です。

期待が先行する小型株

ラッセル2000は先週+8.6%と大きく上昇しました。1年間の推移を見ても、青のラッセル2000が、赤のS&P500をオーバーパフォームしています。7~8月のトランプ大統領優勢が報道された際に大きく上昇し、トランプ氏の大統領の大統領就任でも大きく上昇しています。

積極的な財政出動による米経済の回復で、最も恩恵を受けるのは米小型株としてラッセル2000は上昇しています。ただし、この勢いが今後も続くかどうかは確認が必要です。

実際に小型株の業績は回復するのか

小型株に資金が流入していることが、左のチャートから確認できます。ただ、右のチャート、ラッセル2000の赤字企業は45%以上と、95年以降でもコロナショックの次に高い水準となっています。実績が伴っていないにもかかわらず、余剰資金が入っているわけですが、期待に応えられない場合は大きな売り圧力に変わるため注意が必要です。

前回のトランプ大統領期間中の株価

最後にトランプ大統領就任中のS&P500の動きをご確認ください。トランプ大統領就任1年目のラリーでは34%上昇しました。中国制裁から軟調に推移し、金融緩和を行った2019年1月以降は上昇に転じました。不可抗力に近いものの、コロナで大きく下落した後、積極的な金融緩和で株価が大きく上昇する中で退任しました。

今回のまとめです。前回との相違点として、前回は就任1年目のトランプラリー前に株価は警戒して調整しましたが、今回は大幅に上昇しています。

前回のトランプ大統領就任は、アメリカが混乱すると考えられて株価が調整し、その後、積極的な財政出動を行ったことで株価は上昇しました。今回は期待が織り込まれた状態から始まっていることが大きな相違点と言えるでしょう。

また前回は利下げの恩恵を受けていましたが、今回は高金利政策のもとでスタートしています。予想PERも前回17倍、今回は22倍と大きく異なることもポイントです。

注意点です。中国をはじめとした対外的な関税政策はそこまで厳しく行わないと、マーケットは予想しています。ただ、前回は、トランプ大統領による対中制裁、ペンス氏による強烈な中国批判時には株価が軟調に推移しています。もし公約通りに関税強硬策を導入すればマイナスの影響を受ける点には注意が必要です。

またトランプ氏による金融緩和は、株価や景気が十分に悪化した場合に大義名分が立ちます。2019年1月、パウエル議長が緊急での利下げを示唆し、株価は大きく上昇しました。ただ、これはペンス氏による中国批判で株価が大きく下落していたことが背景にあります。利下げは株価の減速傾向、大幅な下落といった要因があって初めて可能です。パウエル議長にプレッシャーをかけて株価上昇を促すとの説もありますが、こちらはよほど状況が揃わない限り難しいと言えます。

このように現状では織り込まれていないことが多くあります。トランプ政権下では経済に対してフレンドリーな政策を採ると想定されますから、基本的には株価が強くなる傾向があります。一方で1月20日の就任からハネムーンの100日を超え、色々な政策導入が決まった際には、本日ご紹介したような要素が懸念材料になる可能性を念頭においてマーケットに臨んでいただければと思います。

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