米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが11月1日にダウ工業株30種平均(NYダウ)の構成銘柄にエヌビディアを加え、長年のメンバーだったインテルを除外する決定をしました。生成AI市場で急成長を続けるエヌビディアの影響力が米株式市場でさらに強まることになります。AI需要の拡大に対応しつつも、苦戦が続くインテルとの対比が、半導体業界の変化を象徴しています。本記事では、NYダウの構成見直しがもたらす影響と今後の展望について解説します。
エヌビディアの採用とインテルの除外—半導体業界における変化の象徴
2024年11月1日、米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはNYダウの構成銘柄にエヌビディアを新たに追加し、長年NYダウの構成銘柄であったインテルを除外することを発表しました。この入れ替えは、AI(人工知能)技術の急速な進展と、データセンター向けの半導体需要が増大している現状を反映しています。エヌビディアは昨年末から株価が約3倍に成長しており、6月には米マイクロソフトを一時的に上回る時価総額を記録したことも話題となりました。
一方、インテルはAI向け半導体開発の遅れによって苦戦しており、株価も年初から約5割下落しています。1999年のドットコムバブル期にダウ構成銘柄に採用されて以来、約25年間その地位を維持してきたインテルですが、時代の流れとともに成長力が停滞しているのが実情です。今回のエヌビディアの採用は、半導体業界における「ファブレス」モデルの優位性を示し、業界全体が分業型にシフトしていることも表しています。
NYダウとS&P500で増す超大型企業の影響力
現在、S&P500種株価指数の時価総額の約3割が、アップルやマイクロソフト、エヌビディアを含む「マグニフィセント・セブン(Magnificent Seven)」と呼ばれる超大型企業によって占められています。今回エヌビディアがNYダウに加わることで、米国株式市場では特定の巨大企業が相場の方向性に大きく影響を与える傾向がさらに強まると予想されます。
また、NYダウは時価総額ベースではなく、構成銘柄の株価を合計し除数で割る独特の方式で算出されるため、株価の高い企業ほど指数に与える影響が大きくなります。エヌビディアは6月に1株を10株に分割しており、この分割後の株価でNYダウに参加しますが、それでもなお大きな影響力を持つと考えられます。
時代の変遷を映し出すNYダウ
NYダウは米国経済の象徴として知られ、時代の変化に応じて構成銘柄を見直してきました。たとえば、2015年にはAT&Tからアップルへの入れ替えが行われ、産業構造の変化を反映しています。同指数は、1896年にウォール・ストリート・ジャーナルを創設したチャールズ・ダウ氏によって発表され、1928年には現在の30銘柄に拡大されました。エヌビディアの採用も、AI技術と生成AI市場の急成長を背景にした「次世代産業」の反映といえるでしょう。
変わりゆく半導体業界とインテルの課題
インテルは、工場を持つ垂直統合型のビジネスモデル(IDM)を採用し、自社で半導体を生産してきましたが、現在では台湾のTSMCをはじめとするファウンドリー企業に遅れをとっています。エヌビディアは工場を持たないファブレス企業として、変化する需要に機敏に対応するビジネスモデルを築き、生成AI市場で約8割のシェアを占めていることが高い利益率の要因です。
インテルはPC市場の低迷と生成AI需要の増大という二つの課題に直面しており、巻き返しを図るべくファウンドリー事業にも乗り出しましたが、現時点ではTSMCとの差は依然大きいままです。今回のエヌビディアの採用をきっかけに、インテルはどのように巻き返してくるのでしょうか。
10月31日の決算発表では、事業を再び拡大に向けて手元資金を増やしており、パット・ゲルシンガーCEOによれば、企業史上「最も大胆な再建プラン」を計画しているようです。実際に7-9月期には人員カットを発表。人員削減は計1万6500人に上回り、支出削減、株主への配当支払いを停止しています。大きく遅れをとっているインテルが、採用銘柄から取り下げられたことをきっかけにどこまで奮起できるか注目です。