トランプ関税の影響と2018年を踏まえた投資戦略について

トランプ関税の影響と2018年を踏まえた投資戦略について

トランプ政権は4日、中国からの全輸入品に対し10%の追加関税を適用しました。これに対し、中国も米国産石炭やLNGに最大15%、原油や農業機械などに10%の関税を課すと発表し、10日から実施されます。ただ、カナダ・メキシコに対する25%の関税は1カ月延期され、国境警備の強化が交渉の焦点となりました。

ウォール・ストリート・ジャーナルは「史上もっとも愚かな貿易戦争」と厳しく批判し、政権内でも意見が分かれています。第一政権の鉄鋼関税とは異なり、今回の全品目への追加関税は戦略性に乏しく、G7内での摩擦を引き起こす懸念があります。

トランプ政権の交渉術

トランプ大統領は2月1日に大統領令を発令し、2月3日にカナダ・メキシコと協議。その後、2月4日の発動を1カ月延期しました。この一連の動きは、ビジネス交渉のような駆け引きを思わせます。メキシコは早期から対話に応じましたが、カナダは強く反発し、報復措置も示唆。しかし、最終的に国境対策の強化といった譲歩とも取れる対応に転じました。カナダにとってアメリカは最大の貿易相手であり、関係悪化は経済に深刻な影響を及ぼしかねないため、短期間での交渉が行われたとみられます。

第一次トランプ政権時の貿易戦争からのヒント

2018年から2019年にかけての米中貿易戦争では、市場は当初大きく調整しましたが、その後の金融政策の緩和や交渉の進展によって回復しました。S&P500は一時約20%下落したものの、2019年末には年初から約29%上昇し、市場の適応力が示されました。この期間、テクノロジー株やグローバル企業の収益には悪影響が及びましたが、一方でディフェンシブ銘柄や金、米国債といったリスクオフ資産に資金が流れる動きも見られました。

2025年の新たな貿易戦争では、前回とは異なるリスク環境が想定されます。特に、米中のデカップリングが進んでいることや、米国のインフレ圧力が依然として強いことが重要な違いです。前回はFRBの金融緩和が市場を下支えしましたが、今回は利上げや金融引き締めが継続しており、株価の回復は以前よりも鈍くなる可能性があります。こうした環境では、資産保全を重視したポートフォリオ戦略がより重要となります。

市場の動向を見極めるうえでは、関税の影響が企業収益にどの程度波及するか、中国がどのような対抗措置を講じるか、FRBの政策スタンスがどう変化するかを注視する必要があります。株式市場のボラティリティが高まる中、長期的な視点でリスクを分散し、流動性や安全資産の確保を意識した資産管理が求められます。

市場への影響と今後の展望

今回の関税措置により、関係4カ国のGDPは年間90兆円規模の減少が予想されており、特に米国自身がその半分を負担する可能性があります。貿易摩擦の長期化により、世界経済の減速やインフレの懸念も広がっています。米中対立は2018~2019年の状況と比較すると、中国経済の減速が見られるため、アメリカの方が持久力を発揮できる可能性があります。しかし、中国もエネルギー関税や独占禁止調査などの対抗策を講じており、今後の交渉の行方が市場に与える影響は計り知れません。トランプ大統領は中国との協議が予定されていることを明かし、「良い話し合いになるだろう」と述べましたが、合意に至らなければさらなる関税強化を示唆。中国のパナマ運河への関与やフェンタニル問題にも言及し、対中圧力を強める姿勢を見せています。

2025年のトランプ政権の関税政策が市場を確実に揺さぶるでしょう。しかし、本質的には企業業績と経済状況がどのようになるかにより株価は変動します。株価の動きが大きくなっても株式の本質的な価値にフォーカスを当てた判断を行えば問題ありません。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

米国の関税と雇用次第の展開【日本株・ドル円 週間見通し】 2月1日号(2月3日〜2月7日)

米国の関税と雇用次第の展開【日本株・ドル円 週間見通し】 2月1日号(2月3日〜2月7日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替の注目点 日本株先週の振り返り 先週( …

【米国株 】米著投資家ハワード・マークスが指摘。今、米国株の要注意点。【1/27 マーケット見通し】

【米国株 】米著投資家ハワード・マークスが指摘。今、米国株の要注意点。【1/27 マーケット見通し】

本日のテーマは、 米著名投資家ハワードマークスが指摘する米国株の要注意点をお伝えしたいと思います。 先週は1月 …

FOMCで政策金利据え置き、市場はタカ派的な声明に反応

FOMCで政策金利据え置き、市場はタカ派的な声明に反応

米連邦準備理事会(FRB)は29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を4.25〜4.5%に据え置き …

米国ハイテク株の決算発表とDeepSeek(ディープシーク)によるAI競争の行方

米国ハイテク株の決算発表とDeepSeek(ディープシーク)によるAI競争の行方

今週は、2024年10~12月期の米国ハイテク企業の決算発表に注目です。特に、投資家は過去の実績以上に、202 …

パウエル議長の記者会見に注目!【日本株・ドル円 週間見通し】 1月25日号(1月27日〜1月31日)

パウエル議長の記者会見に注目!【日本株・ドル円 週間見通し】 1月25日号(1月27日〜1月31日)

先週の日経平均株価は堅調に推移し、週末の24日には一時4万279.79円を記録しました。そして、最終的には前週 …

ついに政策金利が17年ぶりの水準へ!日銀が利上げを決断した背景と今後の市場シナリオを読み解く

ついに政策金利が17年ぶりの水準へ!日銀が利上げを決断した背景と今後の市場シナリオを読み解く

日本銀行は2025年1月24日の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げる決定を行いまし …

【米国株 】トランプ大統領就任後、株価を左右する2つの要因【1/20 マーケット見通し】

【米国株 】トランプ大統領就任後、株価を左右する2つの要因【1/20 マーケット見通し】

本日のテーマは『米国株 トランプ大統領就任後 株価を左右する2つの要因』です。トランプ大統領の就任後、株価を左 …

株主優待が再び増加~その理由と最新トレンド

株主優待が再び増加~その理由と最新トレンド

株主優待制度が再び注目されています。2024年には新たに131社がこの制度を導入し、前年より50社も増加しまし …

日銀利上げで不安材料で出尽くしか?【日本株・ドル円 週間見通し】 1月18日号(1月20日〜1月24日)

日銀利上げで不安材料で出尽くしか?【日本株・ドル円 週間見通し】 1月18日号(1月20日〜1月24日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週(1 …

原油価格上昇が株式市場に与える影響~WTI原油価格80ドル台復帰と今後の注目点

原油価格上昇が株式市場に与える影響~WTI原油価格80ドル台復帰と今後の注目点

2025年1月15日、WTI原油価格が約5カ月ぶりに80ドル台に回復しました。この背景にはOPECの堅調な需要 …

【米国株 】米長期金利が株価の重石。米長期金利の上限目処は?【1/14 マーケット見通し】

【米国株 】米長期金利が株価の重石。米長期金利の上限目処は?【1/14 マーケット見通し】

本日のテーマは『長期金利が株価の重石。金利の上限目処について』です。 2024年は非常に強かったS&P …

第2次トランプ政権の政策と日米関係への影響

第2次トランプ政権の政策と日米関係への影響

2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任します。再任後、減税や規制緩和、さらに …

米国金利の影響を受ける中で取るべき戦略は?【日本株・ドル円 週間見通し】 1月11日号(1月14日〜1月17日)

米国金利の影響を受ける中で取るべき戦略は?【日本株・ドル円 週間見通し】 1月11日号(1月14日〜1月17日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

金利上昇局面で注目される債券投資~具体的な選択肢とその魅力

金利上昇局面で注目される債券投資~具体的な選択肢とその魅力

国内外で金利が上昇する中、個人向け国債や社債が再び注目を集めています。「変動10年型」個人向け国債は、金利上昇 …

【米国株 S&P500】市場関係者がほぼ強気の中で想定外のリスクとは?【1/6 マーケット見通し】

【米国株 S&P500】市場関係者がほぼ強気の中で想定外のリスクとは?【1/6 マーケット見通し】

2025年の米国株式市場について、金融機関の多くの予想が強気です。本日は、その強気のメインシナリオに想定外のこ …

おすすめ記事