本日のテーマは「米国株 現在見ておくべき炭鉱のカナリアとは?」です。
先週は、アメリカではいくつかの重要な経済指標の発表がありました。14日に発表された米国の小売売上高は、市場予想を大きく下回る結果となりました。また、トランプ前大統領が提案する相互関税により、想定以上に高い関税が導入される可能性が浮上し、市場の不安材料となりました。さらに、米国10年債利回りは1週間で4.46%から4.66%へと0.2ポイント変動し、方向感がなかなか定まらない展開が続いています。
しかし、このような不安材料がある中でも企業業績が比較的安定していることから、株価が下落することなく安定した推移を見せています。
そこで本日は、米企業の業績が好調であることで株価の底堅さが続いていますが、今後もし転換する機会があるとすれば、現時点で見ておくべき炭鉱のカナリア(転換を示すシグナル)は何があるのか、をお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
[ 目次 ]
現在の米企業の業績は好調
今の米国株価は業績で支えられている
一言で言えば、現在の米国株式市場は企業業績の堅調さによって支えられています。

先週末時点でS&P500構成企業の75%以上が決算発表を終え、そのうち77%が事前予想を上回りました。右の図は、過去平均の事前予想を超えた企業割合を示していますが(白点線)、それを上回る結果になっています。また、赤い棒グラフは予想を下回る企業数を表していますが、これも前期より減少しています。このように総じて企業業績が安定的に推移していると言えるでしょう。
企業業績は安定していれば、株価が底堅く推移するのは当然なのですが、さらに左の図をご覧ください。ここにヒントがあります。こちらはゴールドマンサックスが発表した資料で、株価を決める要因、ミクロとマクロ、どちらの割合が多いかを示したものです。
ミクロ要因が優勢な状態
今は74%となっています。これは過去6ヶ月間の株価の決定要因のうち74%がミクロ要因、企業業績が影響を与えていたことを表します。残りの26%はマクロ要因、経済指標や政策などの影響で株価が動いたことを表しています。
これから分かるように現在の米株式市場は、企業業績への感応度が高い状態であり、今のように堅調な企業業績が続けば、企業業績が安定している以上、株価が大きく崩れる可能性は低いと言えます。
一方で、今後、左図においてマクロ要因への感応度が上昇するような局面になれば、関税のさらなる引き上げ懸念や、米小売売上高が予想を大きく下回ったことなどへの反応が高まるかもしれません。つまり、今後の市場にマクロ要因が大きな影響を与える可能性が出てきます。
今後、金融市場がミクロよりマクロを重視するようになれば、現在発表されている経済指標を見ていると潮目が変わる可能性があります。そのきっかけはどこにあるのでしょうか。
今後注目したい「炭鉱のカナリア」
経済政策不確実性指数
1つ目です。右図は経済政策の不確実性指数です。過去、この指数が大きく上昇した場合、株価の決定要因がミクロからマクロに移行する傾向があります。

右図表は、1995年以降のアメリカにおける経済政策の不確実性指数を表しています。関税導入などによってアメリカの政策を巡る不確実性が高まると、マーケットにとっては不安材料となります。
現在、この指数が急激に上昇しています。過去のリーマン・ショック、ITバブル、コロナショックなど、経済危機時と同様の水準まで上昇する可能性がありそうです。
過去のデータを見ると、不確実性指数が低い水準から大きく上昇に転じた後は、マクロ要因の影響が大きくなる傾向があります。そのため、今後は企業業績より経済指標などのマクロ要因への感応度が高まる流れに変わる可能性がありそうです。
つまり、今まで通り業績が良ければ大丈夫、という流れが変わる可能性があるとご認識ください。
5日平均の経済政策不確実性指数にはシグナル点灯
次にこちらをご覧ください。右の図表は5日間の平均です。2000年、2008年、2020年と、大きく株価が下落した際と同水準まで不確実性が高まっています。先ほどの資料以上に不確実性の急上昇が見てとれることから、マクロに重点が移行する可能性を考えておく必要があります。

ただ、過去のデータを見ると、不確実性指数が急激に上昇しても、必ずしも市場の転換点とはなっていません。この指数だけで転換点を見極めるのはなかなか難しいです。
そこでもう1つ、今後の定期的にご確認いただきたい指標をお伝えします。
ハイイールド債券のスプレッドに注目
右の図表は、投機的格付けBBのハイイールド債券のスプレッド、国債との利回りの差です。現在は投機的な格付け債券、経済が悪化するとデフォルトの可能性がある投機的な債券に資金が多く流れ込んでおり、その結果、国債とのスプレッドが非常に狭くなっています。企業の経営をマーケットは不安視していない状況にあるのです。

ただ、赤丸で示したようにBB格ハイイールド債とのスプレッドが急拡大したケース、企業への不満が高まった場合には、左の図で示したようにマクロ要因を重視するきっかけとなっています。
こちらをFREDで確認し、BB格のスプレッドが上昇に転じていた際には、マクロ要因が重要視されるようになるのではないかと認識していただければと思います。それが確認できた時は、企業業績だけではなく、不確実性指数、経済指標の悪化が影響して株価が調整するリスクが出てきます。今のような堅調なマーケットにおいて、急激に潮目が変わるとすれば、本日ご紹介したような内容がきっかけとなり得ます。
現時点の炭鉱のカナリアとしては、ハイイールド債のスプレッドが拡大しないかどうかを定期的にご確認いただければ、全体の流れを把握できることでしょう。
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