本日分析する投資信託は、「新成長株ファンド・グローイング・カバーズ」という日本の小型グロース株に投資するアクティブファンドです。
最近、日本株は堅調に推移しており、大型株が市場を牽引していますが、いずれ小型のグロース株にも資金が流入するとの期待感を持ち、日本の小型グロース株に注目する方もいると思います。そのため、今回はこのファンドを選びました。最後までご覧いただけますと幸いです。
お願い
はじめにお願いです。この記事は情報提供を目的として作成されています。投資の勧誘や売買の推進は目的としていません。投資信託の抽出はランダムに行っており、運用会社や販売会社との間には業務提携等は一切ありません。
投資信託概要
概要
概要です。新成長株ファンド・グローイング・カバーズは、明治安田アセットマネジメントが運用しています。国内の小型グロース株に投資するこのファンドは、NISAの成長投資枠での投資が可能です。信託報酬は1.87%、純資産総額は440億円です。小型グロース株への投資ですが、資産総額が大きくなっていますから、その人気の高さが垣間見えます。
ファンドの選定理由は、新成長株に投資しているためです。現在注目を集めている日本株の中で新たに成長する株は、大きくキャピタルゲインが期待できますから、そういったファンドを探している方にとっては非常に興味を持てるファンドです。
新成長銘柄の定義は、高い成長余力を有しつつも経営上の課題や困難に直面して本来の実力を発揮できなかったが、経営障壁を克服し、今後の大きな成長が見込める企業です。つまり、本来はいい企業のはずが、何らかの理由で成長が鈍化していた銘柄を発掘することが、このファンドの目的です。
数多くある株式市場の銘柄においては、常に脚光を浴びている銘柄もあります。ですが、そうでない銘柄も多く存在しています。時価総額が低く、長らく業績、株価が低迷していた銘柄が急に上昇するケースもあります。そのような銘柄を上手く発掘し、リターンを狙っています。
チェックポイント
本日のチェックポイントは3つです。
- 新成長株に投資したパフォーマンスはどうか?
- どのような銘柄を選んでいるのか?
- インデックスファンドや他のアクティブファンドとの比較
を確認します。
簡易パフォーマンスです。過去10年は同カテゴリーに対して年率換算+5%と、いい結果が出ています。しかし、3年、1年のデータではマイナスに転じています。このマイナスの要因は詳しく分析する必要があるでしょう。
同じカテゴリーと比較したリスクは大きいです。小型グロース株はボラティリティが高い傾向にあり、年間の変動が大きくなっています。そのため、それを上回るパフォーマンスを出しているファンドかどうかも確認したいと思います。
投資戦略
投資戦略です。実質的に運用しているのはエンジェルジャパン・アセットマネジメントです。この会社は一社一社を丹念に分析した銘柄調査が特徴です。基本的には経営陣との面談を行った上で投資を決定しており、実地調査を通じたボトムアップリサーチを中心に運用していることがわかります。市場では注目されていない銘柄であっても、現地調査を行い、今後の成長が期待できる企業を上手く発掘できる可能性のある運用スタイルです。
新成長銘柄とは、上場後、人材面で苦労した、新たな成長を支える次の商品ができなかったなど、何らかの課題に直面したものの、それを乗り越えた後、今後さらに大きく成長が見込める企業です。成長ステージに入った企業に投資しながら、短期間でリターンが得られる運用を目指しています。そのためのボトムアップリサーチ行いながら、なかなかその変化に気づきにくい銘柄をピックアップできることがファンドの特徴です。
銘柄戦略
実際に組み入れられている銘柄を確認すると、ニッチな銘柄選択ができています。日の目を浴びていない企業にもフォーカスを当てていることがわかりました。組入銘柄は約50と多いように感じますが、小型株でボラティリティが高いために分散投資していると思われます。
具体的な銘柄を見ると、上位には大手があまり参入しておらず、小型で高付加価値の薬品を注力するトリケミカル、企業のノベルティ、コンサートグッズ、キャラクター雑貨を販売・製造しているトランザクション、精密機器に使用される電子部品を扱う化学メーカーのメックなど、市場でもニッチな銘柄に投資しています。
株式市場でニュースになることは少ないですが、着実に成長ステージにある企業を選定している点が、このファンドの特徴です。
組入1位のトランザクションを見ると、売上成長率はやや鈍化している印象です。営業利益率やフリーキャッシュフローは高い成長を続けていますし、投資キャッシュフローが積極化していますから、恐らく面談を通じて売上再加速を想定しているのでしょう。ただ、決算報告書を見る限りでは、そこまで大きな成長は見えません。そこのギャップが銘柄選定能力なのかもしれません。
組入2位のメックも、決算見通しからは大きな成長が見られません。3ヶ月の決算を見ると安定した推移となっています。しかし、精密機器を取り扱うことから、定性分析等を通じて半導体関連などの分野で売上を伸ばせると判断され、組入上位銘柄に入っているのでしょう。決算発表だけでは捉えられない箇所まで、投資対象として分析している印象を受けました。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
パフォーマンスです。過去5年間のパフォーマンスを見ると、このファンドは日経平均とほぼ同等の結果を示しています。基準価格がピンク色、日経平均が黄色ですが、ほぼ変わらない結果となっています。
しかし、過去3年間を見ると、日経平均に対して20%近くアンダーパフォームしています。非常に渋い銘柄選定を行っていますが、結果が伴っていません。運用効率を示すシャープレシオも0.2と低く、リスクが高いもののリターンが低い状況です。
運用の特色です。過去のパフォーマンスは芳しくないですが、ニッチな銘柄は注目を浴びると急激に株価が上昇します。組入れ銘柄銘柄は50ありますが、その中で1つ、2つの銘柄が何倍になることがあれば、ファンドのパフォーマンスは一気に改善する可能性があります。そういった期待を持ってファンドを保有し続ける方にとっては、良いファンドとなる可能性があります。
個別銘柄に特化した運用を行っている投資家にはまだいいかもしれませんが、投資初心者でなるべく市場に負けない安定した運用を求める方には、このファンドはあまり適していないかもしれません。シャープレシオが0.2であり、これから成長できる、成長ステージに入った銘柄を選んでいるものの、結果が伴わずにボラティリティが高くなっています。初めて投資する方にとっては、パフォーマンス的に耐えがたい状況が続く可能性があります。
チャートをご覧ください。東証の小型株指数が緑、このファンドは青です。過去3年間を見ると、東証の小型株指数に対して負けています。日経平均だけでなく、小型株に対してもアンダーパフォームしています。
資金流出入
資金の流出入を見ると、意外と流出していない印象です。ただ、ここ最近は徐々に流出が進んでいます。
評価
評価は2つ星です。戦略自体は非常に好感が持てるものでした。現地でのボトムアップリサーチを徹底して行い、決算報告書だけでは選ばれないような企業を選定している点は高く評価できます。
ただ、現時点ではパフォーマンスには結びついていません。リスクも非常に高くなっており、シャープレシオが低いため、中長期的にはインデックスに対してアンダーパフォームが続く可能性があります。そのため、現段階では高評価をつけることは難しいです。他のファンドと比較しながら分析を進め、銘柄選定がご自身の好みに合っている場合は投資の対象になるでしょうし、そうでない場合は対象外と考えるのが適切かと思います。