本日は、Jリートに投資を行う野村Jリートファンドを分析します。このファンドは細やかな投資配分の調整を行うことが特徴です。細やかな投資配分の調整により、ベンチマークの東証リート指数を安定的に上回ることができるのでしょうか。
また、日本銀行の金融政策が変更されることで、今後リートの動向に注目が集まっています。最後までご覧いただき、リート投資の参考にしていただければ幸いです。
お知らせ
この記事は情報提供を目的として作成しています。投資の勧誘や売買の推奨は目的としていません。取り上げている投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社との間に業務提携は一切なく、中立的な立場でお伝えしています。
投資信託概要
概要
野村Jリートファンドは、野村アセットマネジメントが運用しています。投資先はJリートで、NISA成長投資枠での投資も可能です。信託報酬は1.10%、純資産総額が144億円と、比較的小規模なファンドという印象です。
このファンドを取り上げた理由は、Jリートに投資を行うアクティブファンドであるからです。今年に入り、日本でも物価の上昇が続き、賃金の上昇も確認できており、いよいよ日銀によるマイナス金利からゼロ金利、そしてプラス金利への移行が予想されています。
このように金利が動く局面では、金利の影響を受けやすい不動産セクターが注目されます。金利上昇などのデメリットを伴う一方で、物価上昇は不動産にとっては最終的にはプラスの要因となります。そのため、Jリートに興味がある方は、良いアクティブファンドを探しているタイミングかと思います。
このアクティブファンドは、個別銘柄の流動性、収益性、成長性を考慮して銘柄選定を行っています。高水準の配当収入の獲得だけでなく、中長期的な値上がり益の追及も目指しています。ここは重要なポイントです。
リートの配当水準が高いことは知られていますが、その中でも価格が上昇しそうな銘柄とそうではない銘柄に分かれます。中長期的な値上がりが狙える銘柄を選び、プラスアルファを出すことを目指す、アクティブファンドらしいファンドです。
日本銀行の金融政策の変更により、今後金利が上昇することが想定されています。Jリートの中でも、パフォーマンスがいい銘柄とそうではない銘柄に分かれてくる可能性があります。今後はJリートに関しても個別で選ぶ能力が求められます。
チェックポイント
今回のチェックポイントです。Jリートの58銘柄から銘柄選定を行い、インデックスファンドを超えることができるのか。また、長期的に安定したファンドである分析したいと思います。
投資戦略
Jリートの個別銘柄の流動性、収益性、成長性を勘案して選定しています。Jリートは取引数が少なく、その中には流動性の低いものもあります。その中で高い流動性で、しかも、収益性と成長性が見込めるものを選び、分散投資を行っています。結果、高水準の配当を受けつつ、中長期的な値上がりを目指します。
個別銘柄の流動性、収益性の判断に基づき、市場のインデックスに対してウェイトを調整しながら、プラスアルファの運用を目指しています。アクティブなファンドによく見られる王道スタイル「投資対象から良い銘柄を選び、パフォーマンスが優れないであろう銘柄を保有しない」ことでプラスアルファを狙う戦略を採っています。
銘柄戦略
アクティブファンドですが、そこまで積極的な売買は行っていません。基本的には東証リート指数に沿った銘柄選定で、大胆な銘柄選定ではありません。
このファンドの上位10銘柄と、東証リートインデックスの10銘柄を同時点で比較してみました。最上位は日本ビルファンドで変わりませんが、2番目にファンドでは大和ハウスリートが来ているのに対し、東証リードインデックスではジャパンリアルエステートが入っています。
インデックスでは野村不動産マスターファンドが3番目ですが、ファンドでは6番目と、順番がやや異なり、比率も異なっています。ですが、上位10銘柄が大きく異なるわけではなく、ほぼ同じような銘柄で数銘柄が異なる程度です。リート指数に沿った運用ですが、プラスアルファが本当に実現されているかは注目です。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
パフォーマンスです。過去のパフォーマンスを見ると、短期的な値動きは指数に準じる動きですが、中長期的に見ると、若干指数を上回るパフォーマンスが確認できます。例えば、過去5年では5%、過去3年では2%程度、東証リード指数を上回っています。
チャートをご覧ください。オレンジが東証REIT指数、赤が基準価格で再投資後、もちろん信託報酬を差し引いた後のものですが、指数を上回っていることが確認できます。アクティブファンドとしてインデックスを上回っていることが、1つの成果として確認できるでしょう。
指数と似た構成銘柄のファンドは多くありますが、多くのファンドが運用コストで負けている中、このファンドは中長期的にしっかりと結果が出せています。パフォーマンスを見て魅力を感じる方は少ないでしょうが、似たファンドが手数料の分だけ劣後することが多い中、しっかりとプラスを出せているファンドは珍しいと言えるでしょう。
運用手法でわずかな違いが出せています。具体的な投資手法としては、基本的には指数に準じています。個別銘柄の要因や割安感などを分析した上でオーバーウェイト、アンダーウェイトを決めています。例えば、直近ではいちごホテルリート、大和ハウスリートなど、相対的に割安と判断される銘柄を買っています。時価総額比率よりも高めに保有している、オーバーウェイトしていることがわかりました。
組み入れ銘柄を大胆に変える運用ではなく、指数と比較して若干の調整を行い、基本的には指数に追随しながら、それを上回るリターンを上げているファンドだとイメージしてください。
今後の見通しです。近年の基準価格の低迷はしています。過去3年間でリターンはほぼゼロで、過去5年間でも株式と比較して大きく劣っています。このファンドのパフォーマンスがJリート全体の低迷による影響を大きく受けており、市場リスクを非常に受けています。ファンドの運用能力というよりも、市況全体の悪い影響を受けていると言えます。
さまざまな業種によって動きが大きく変わる株式とは異なり、リートは基本的に銘柄が異なっても同じような方向感を示すことが多く、不動産市況や金融などの影響を大きく受けます。そのため、市場リスクを回避することが難しくなっています。ファンドの基準価格自体は他の資産、例えば株式や世界株式と比べても鈍い動きになっていることが、過去3年間のパフォーマンスが芳しくない背景にあります。
ただ、このファンドは長期で見ることが非常に重要です。ファンドが設定されて以来、さまざまな局面でパフォーマンスが出ています。例えば、Jリートが好調だった2015年から2019年の間はリート指数も右肩上がりでしたが、それを上回るリターンを残しています。市場全体が不調な局面、例えば過去3年間でも、緑で示した東証リート指数をしっかり上回っています。
過去3年間のパフォーマンスが悪かった時期でも、対インデックスは+2%と、下落幅は指数より抑えられています。残念ながらJリートは市場の好調、不調の影響を受けます。Jリート市場が好調であれば、それよりも大きなリターンを、全体が不調なときには、悪いパフォーマンスよりも少しでもいいパフォーマンスとなっています。
金利や不動産市況の見通しによってJリートを保有するかどうかは、投資家の判断にもよりますが、Jリートは非常に利回りの高い資産であり、不動産がインフレに強いことを考えると、指数を上回る実績を残す優秀なファンドは、今後の投資戦略には欠かせないアセットクラスだと思います。
資金流出入
資金の流出が増えています。インデックスに対してプラスアルファが少し少ないという印象を持たれているのかもしれませんが。ただ、いい時と悪い時、上方と下方に強いですから、いずれ資金の流入が増えそうな印象です。
評価
評価は3.5です。ファンド自体がインデックスを上回っていることを考慮すると、4程度の評価もあり得ます。ただ、これから金利が上昇する局面でリートの変動が大きくなる可能性もあります。能力の発揮が期待できる一方で、マーケット並みのリスクを背負っているため、3.5程度の評価と考えました。
細やかな配分調整でアルファが期待できる安定感のあるファンドです。市場が良くなり、実績が積み上がると、評価が4を超える可能性のあるファンドです。
本日はJリートのアクティブファンドを取り上げました。非常に歴史のあるファンドです。パフォーマンスは少し地味に見えるかもしれませんが、Jリートが良かった時には上回るパフォーマンスを示し、Jリートの調子が良くなかった時でも水準を上回る成果を出しています。今後もインフレが続く可能性を考えると、アセットクラスに不動産の保有が欠かせないと考える方も多いでしょう。市場リスクを取りながらもプラスアルファを取れるファンドを探している方にとっては、他のファンドと比較する価値が十分にあるファンドだと思います。