本日分析する投資信託は、キャピタル世界配当成長ファンド、キャピタル社が運用する、配当が成長する企業に投資を行う世界株ファンドです。最近は、キャピタルが運用するファンドに多くの方が興味を持っていると聞いています。そこで本日は、キャピタルが運用する配当成長銘柄に投資するファンドの実力を分析していきたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまでも情報提供を目的として作成しています。投資の勧誘や売買の推進を目的としたものではありません。また、投資信託に関してはランダムに抽出を行っています。運用会社や販売会社と当社の間における業務提携は一切ございません。中立の立場で分析をお届けします。
投資信託概要
概要
キャピタル世界配当成長ファンドは、キャピタル・インターナショナルが運営する世界株のファンドで、NISA成長枠での投資が可能です。信託報酬は0.62%と、アクティブファンドとしては低い水準です。純資産総額は315億円で、キャピタルが運用する他のファンドと比べると、小ぶりなファンドとなっています。
世界中の株式の中から、配当の持続性と成長性に着目した投資を行うアクティブファンドです。現時点で配当が高い銘柄は多くありますが、利益を継続して出し続けなければ、配当を持続的に出すこと、または増配はできません。そのため、しっかりとファンダメンタルズ分析を行い、配当の成長性がある銘柄を選定して投資を行なっています。
世界中の株式に投資しているとされていますが、実質的にはほぼ先進国への投資となり、新興国への投資は非常に少なくなっています。あくまで個別銘柄をベースに銘柄選定を行っており、カントリーアロケーションを先に決めているわけではありません。しかし、個別に良い銘柄を選んだ結果、ポートフォリオの半分が米国、残りがヨーロッパ、日本、台湾になっています。この配分が実際のパフォーマンスにどのように影響をしているのか注目です。
チェックポイントです。配当の成長銘柄に投資したはパフォーマンス的に優位性があるのか。また、キャピタル社という名の通ったファンド会社の銘柄選定能力が高いかどうかも検証したいと思います。
過去のパフォーマンスです。同じカテゴリーのファンドと比較すると、5年および3年では同じカテゴリーを上回っていますが、ここ1年ではマイナスとなっています。一方で、標準偏差(リスク)は同カテゴリーを全ての期間において下回っており、リスクを非常にコントロールしながらリターンを目指していることがわかります。
銘柄戦略
実際に投資を行っている業種配分は、サービス、金融、情報技術の順で多くなっています。成長株の比率よりも好配当のディフェンシブ銘柄がやや多めに組み入れられています。このファンドのリスクが小さいというのは、ディフェンシブ銘柄が多くなっているからだと言えます。
また、組み入れている銘柄は135と多く、世界中に投資していることもあるのでしょうが、かなり分散が効いています。分散が効いていると、リスクが抑えられる一方で、リターンは集中投資に比べてやや低くなる傾向があります。先ほどのパフォーマンス結果には、この分散数が関係していると思われます。
投資戦略です。運用報告書等を見ると、基本的には大型株を中心にバイアンドホールドを基本戦略としています。現在の組み入れ上位には、米国のブロードコムやフィリップ・モリス、台湾セミコンダクター、イギリスのBPなどが並んでおり、非常に安定性の高い銘柄が選ばれています。
右下には、比較対象として、同じカテゴリーに属する三井住友・グローバル好配当株式オープン、愛称、世界の豆の木を掲載しています。世界の豆の木の組み入れ上位銘柄はアメリカ、フランス、オーストラリアであるのに対し、キャピタルの当ファンドはアメリカ、イギリス、フランスとなっており、国の配分順位が異なっています。
また、キャピタルは資本財やサービスが上位ですが、世界の豆の木はエネルギーが最も多くなっています。同じ好配当銘柄を選んでいても、ファンドによって対象が異なります。これがパフォーマンスが変わ要因です。1位の銘柄は共にブロードコムが入っていますが、キャピタルは2番目にTSMCを選んでいるのに対して、世界の豆の木はエクソンモービルと、銘柄も異なっています。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
当ファンドのパフォーマンスは、世界株にやや劣る結果となっています。右の図表をご覧ください。青いチャートが世界株、赤いチャートがキャピタルの基準価格です。こちらを見ると、世界株に劣っていることがわかりました。
パフォーマンスは設定来、多くの期間で世界株平均を下回る推移となっています。過去5年間で約30%、過去3年間で約10%のアンダーパフォーマンスとなっており、世界株の普通株に比べて劣る結果になっています。
背景としては、直近の相場で成長株、グロース株の値上がりが顕著だったことが挙げられます。このファンドはディフェンシブ株が多いため、成長株に比べてパフォーマンスが劣りました。
一方で、リスクは小さくなっています。リターンは世界株には劣るものの、このファンドの特徴は値動きの小ささです。
過去3年平均のリスクは11%、過去5年間で14%と、市場全体の値動きに比べて小さくなっています。世界株を対象としたアクティブファンドの中でも、かなりリスクを抑えた運用ができています。
リターンだけを見ると指数に負けていますが、効率性はとても高いものになっています。シャープレシオは1.3あるため、リスクの小ささに対してリターンが得られていることもわかります。リターンとリスクのバランスを考えると、効率的な運用が行われていると言えるでしょう。
このファンドの保有銘柄にはディフェンシブ株が多く、長期にわたって値動きを抑えた運用ができていることを考えると、長期保有・長期投資に適したアクティブファンドの1つであると言えます。市場全体が大きく上昇する局面ではリターンが劣るものの、相場が不安定なときには下落を抑えることができるため、リスクを上手く回避できる可能性があるファンドです。
また、配当に着目し、その状況に応じて銘柄を入れ替えることで、配当のインカム収入がファンドのパフォーマンスを支える傾向にあります。その意味で、優れたファンドであると言えるでしょう。
世界株に投資する資産を保有したい方、値動きの小ささやリターンの安定性を求める投資家には、十分に投資を検討してもいいファンドでしょう。
次にこちらをご覧ください。
三井住友・グローバル好配当株式オープン、世界の豆の木が青いチャート、今回分析したキャピタル世界配当成長ファンドは緑のチャートです。両ファンドとも分配金を再投資し、信託報酬を差し引いた基準価格を比較していますが、2018年からの比較では三井住友グローバル好配当株式オープンが上回っています。
キャピタル単体で見ると優れたファンドだと言えますが、比較した三井住友グローバル好配当株式オープンは、それを上回る成績を残しています。
キャピタル世界配当成長ファンドも非常に優秀ですが、それ以上に優秀なファンドは他にも存在することがおわかりいただけると思います。銘柄の選び方によって短期的には良し悪しが出てくることもありますが、長期間で見ても世界の豆の木が上回っていることから、横比較の重要性をご理解いただければと思います。
資金流出入
ここ最近は資金の流入が見られるものの、その量はあまり多くありません。他のファンドとの横比較によって選別されていることが影響していると考えられます。
評価
評価は3.5です。他ファンドと比較するとパフォーマンスで若干劣る部分があります。ただし、キャピタルのファンドはリスクコントロール力が高く、3.5の評価にとしました。
本日は、キャピタルが運用し、世界に分散投資を行う、配当の成長性があるファンドを分析しました。ファンド自体はリスクをコントロールできていて、分散を効かせており、長期保有に適したファンドです。しかし、他のファンドと比較すると特徴やパフォーマンスに差が出てくるため、横比較をしながら最良のファンドを選んでいただければと思います。