本日は、ブラックロック世界好配当株式オープン(愛称:世界の息吹)、世界の高配当株に投資を行う世界株ファンドを分析します。
最近、特に高配当株が非常に人気です。世界株に投資するのとどちらが優秀かも含めて分析いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまでも情報提供を目的として作成されています。投資の勧誘や売買の推進を目的としたものではありません。また、投資信託につきましてはランダムに抽出を行っています。運用会社、販売会社と当社の間における業務提携は一切ありません。中立の立場で分析をお伝えします。
投資信託概要
概要
ブラックロック世界好配当株式オープン(愛称:世界の息吹)は、ブラックロック・ジャパンが運用しており、信託報酬は1.3%、純資産総額は673億円です。
特徴です。世界各国の配当利回りの高い銘柄を対象に投資を行っているアクティブファンドです。ポートフォリオは米国が6割、欧州が4割といった組み合わせになっています。業種別で見ると情報技術が2割で最も高いですが、資本財、サービス、ヘルスケア、金融、生活必需品なども1割を超える配分となっており、業種の分散がしっかりと図られています。
ファンドの運用方針としては、高利回りの銘柄に投資することで中長期的にインカムゲイン、キャピタルゲインを狙っています。基本的には長期で保有していただきたいファンドとなっています。
チェックポイントです。最近注目を集める高配当銘柄のパフォーマンスがどうかを見ていきたいと思います。
パフォーマンスです。各期間において同カテゴリーのファンドを少し上回る程度で、大きくは上回っていません。一方で、標準偏差は同カテゴリーを下回る結果となっており、リスクのコントロールができていることがわかります。
投資戦略
まずは成長性が高い銘柄の中から、配当利回りをしっかりと出せ、今後も配当を増やしそうな銘柄を選定するためにファンダメンタルズ分析をしっかりと行っています。
成長市場での成長性や市場での優位性、資本コストを上回る投資力があるか、本質的に価値を下回る値段で取引されているか、安定的な利回りを持つ銘柄かなどを検討し、非常にわかりやすく銘柄を選んでいきます。
約3,000銘柄の中から独自の企業リサーチ、マクロ経済リサーチ、ブラックロック・グループ内の情報を基に絞り込みます。次にファンダメンタル分析を約300銘柄にかけ、持続可能性、財務体質、積極的な配当施策を確認した上でポートフォリオを組んでいます。
また、グローバルな株式に投資を行っており、上限20%の新興国にはBRICSなどが対象となっています。
銘柄戦略
ポートフォリオの平均利回りは2.4%と、高配当利回り銘柄のポートフォリオにはなっていません。個別銘柄を見ても、組み入れ上位にはマイクロソフト、TSMC、ノボ・ノルディクス、Appleなど、配当金を出しているものの決して高配当とは言えない銘柄が並んでいます。
一方で、鉄道会社のユニオン・パシフィック、スイスのネスレなどといった高配当かつディフェンシブな銘柄にも投資を行っています。簡易パフォーマンスでリスクが低くなっていたのは、こうしたディフェンシブ銘柄の存在によるものでしょう。
組み入れ銘柄は世界から選ばれていますが、50銘柄と、それほど分散していないように見えます。しかし、20~30銘柄までは集中していないため、適度な分散だと言えるでしょう。
組み入れ上位銘柄については基本的に長期保有で、売買はあまり行っていません。一方で、それ以外の組み入れ比率の低い銘柄は頻繁に入れ替えを行っています。コア銘柄はバイ・アンド・ホールドをとりつつ、サテライトで保有する銘柄は頻繁に売買を行っていることがわかりました。
例えば、情報セクターではメディアテックを全売却する一方で、メタを積み増しています。また、生活必需品セクターではロレアルなどを新規に組み入れています。
組み入れ銘柄を見ても、ほとんどの銘柄が馴染みあるものですが、高配当で成長性を維持でき、割安な銘柄を選んでいることがわかりました。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
短期のパフォーマンスは苦戦しています。ポートフォリオ全体としては決して高配当銘柄の組み合わせにはなっていません。ファンド名、投資テーマとは少し離れた印象を受けました。
ファンドのパフォーマンスは世界株平均と比較して大きく差をつけられています。過去5年間では世界株平均に対して50%、過去3年間では20%も下回っています。短期的な動きはファンド特有のものではなく、上下の方向性は世界平均とおおよそ類似しています。世界株の動きとほぼ同じ動きをしていますが、少しずつリターンが下回っていることから、時間の経過とともに差が広がっています。
ただ、このファンドはディフェンシブ銘柄に一部投資していることもあり、ファンドの値動き自体は少し低くなっています。リスクは13~15%と、平均的なリスク15~17%という数字と比べると少し低い印象を受けるのではないでしょうか。
リターンは低いもののリスクも相当抑えているためシャープレシオは1を超えており、決して悪い数字ではないと言えます。指数を超える大きなリターンは期待できないものの、分配金が定期的に欲しい投資家、比較的リスクを抑えたい投資家には投資対象と言えるかもしれません。
ここ3~5年はグロース株が大きく伸びた期間でした。高配当でディフェンシブな銘柄を組み入れたものはどうしてもパフォーマンスが劣りがちです。そこで、もう少し長期のチャートを分析してみましょう。
設定来2005年以降のパフォーマンス
2005年以来で世界の息吹の分配金を再投資したものと、MSCI(円建て)を比較してみました。非常にグロースが伸びた2020年のコロナ以降は、MSCIがオーバーパフォームしています。
一方で、2000年以前には、世界の息吹がMSCIを上回っている時期もあります。これはグロースが評価されていなかった時期で、きっちりと配当を出していた分だけファンドが少し上回っています。ただ、このプラス分をグロースが伸びた時期に使い果たしており、世界株と比べてどちらが良いかと言えば、現状はほぼ同じパフォーマンスだと言えます。
また、このファンドがディフェンシブであるかという点で見ても、2018~2020年、2022~2023年の時期も大きく異なる状況ではありません。このことからディフェンス能力もそこまで高くないと言えます。そのため、パフォーマンスとしてはあまり変わらない結果となっています。
資金流出入
流入は続いています。
評価
評価は2.5です。設定来の期間を見ると世界株とほぼ同等の結果ですが、3~5年の期間では世界株に比べてパフォーマンスが劣っています。プラスアルファは期待できませんが、ディフェンス力に期待する方にとってはある程度評価ができるでしょう。とはいえ、アクティブファンドにはアルファが求められます。それであればインデックスファンドでいいではないかと判断できますので評価は中間の2.5とさせていただきました。
本日は、世界株の中から高配当で成長性があり、割安感のあるものをブラックロック社が分析を行い投資するファンドを分析しました。しかし、中身を見るとほとんどインデックスファンドと変わらないパフォーマンスとなっています。保守的なファンドを探していて、アクティブファンドらしいアルファのあるファンドをお探しの方は、他のファンドとも比較して分析していただければと思います。