本日分析する投資信託は、新光US-REITオープン「愛称:ゼウス」という米REITに投資を行うファンドです。
REITは、金利に左右されやすいアセットですが、その中から金利の影響を受けにくい銘柄を選択し、安定したアルファ・リターンを狙うファンドです。どのようなパフォーマンスを残しているかを分析します。ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事は、あくまでも情報提供を目的として作成しています。投資の勧誘、売買の推奨を目的としたものではありません。また、投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社と当社の間に業務提携は一切ございません。あくまでも中立の立場で分析を行います。
投資信託概要
概要
新光US-REITオープン「愛称:ゼウス」は、アセットマネジメントOneが運用しています。米国REIT株に投資し、信託報酬は1.68%、純資産総額は4219億円です。NISAでの投資は不可能で、特定口座での投資となります。
特徴です。米REITに特化したアクティブファンドです。REITは長期金利、FRBの政策動向に価格が左右されやすいですが、このファンドは環境変化の影響を最小限にすべく銘柄選定を行っています。
具体的には、健全なバランスシートを保有し、優良物件を持っており、物件に対する借り入れ割合が標準より低いものを選んでいます。ここからは、金利影響の排除を目的としており、安定的に運用する目的が明確に見えます。
チェックポイントです。数多くあるUS-REITファンドの中から新光US-REITオープンを選ぶ理由があるかを確認していきます。
銘柄戦略
30銘柄ほどに集中していますが、業種は分散が利いており、リスクコントロールの意識があります。REIT市場は住宅やオフィス、商業施設が市場規模として非常に大きいですが、上位には医療施設、産業施設、データセンターなど、今後を担うREITを中心に投資しています。
一般的には長期保有のバイアンドホールドがREITの主流ですが、このファンドは長期保有を軸としつつ、状況に応じて機動的に銘柄入れ替えを行っています。中期的な相場環境、金利動向に応じて組み入れ業種、銘柄を決定するだけでなく、個別銘柄ベースでも毎月売買が頻繁に行われています。組み入れ銘柄数は限定されていますが、個別分析を基に投資判断を行っていることがわかりました。
財務状態が良く、借り入れ比率が低い銘柄を選んでいるため、REITの中では外部環境の影響を受けづらいディフェンシブ銘柄を中心にポートフォリオを組んでいます。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
残念ながらパフォーマンスは平凡な結果となっています。近年の金利動向により、REIT市場自体に逆風が吹いています。当ファンドも金利の影響をなるべく受けないようにしてはいるものの、市場の影響から逃れることはできませんでした。
REIT市場全体と流れを受けて、ここ3年、5年では株式に後れを取り、世界株、S&P500と比較して大きく下回るパフォーマンスとなっています。
REIT市場との比較では、米REITの代表的な指標であるFTSE NAREITの円ベースを少し上回っています。とはいえ過去5年で約6%ですから、平凡と言っても過言ではない程度の微妙な上昇に収まっています。
リスクは年率18%程度と、米REIT市場とほぼ変わりません。パフォーマンスもリスクも平均値に近い結果となっています。
シャープレシオは0.4前後です。直近の株式市場と比べると低く、REIT市場の平均と同程度のパフォーマンスとなっています。
とはいえインデックスは若干上回っていますから、ファンドの相場環境に応じた銘柄選択、売買によって、REITにおいては検討しているとも言えます。
今後REIT市場が上昇すれば、ファンドのパフォーマンスも上向いてくることでしょう。ただ、今後は金利低下局面に入ります。金利が低下すると金利負担が減りますから、今後は違う視点での分析が必要になります。頻繁な銘柄入れ替えが特徴ですから、利下げ局面でプラスアルファを出せるかに注目です。
ただし、US-REITファンドは数多くあります。比較して優位性があるかどうかをしっかり確認する必要があります。
10年パフォーマンス
こちらのチャート、該当ファンドが青色、ダイワUS-REITが緑色です。金利を考慮して銘柄選定を行っているものの、パフォーマンスが優れたアクティブファンドとして名の知れたダイワUS-REITには10年間で大きく差をつけられています。
下落局面においても、下落幅に差はほとんどありません。金利の影響を受けないように銘柄を選んでいますが、金利の上昇する局面で同程度アンダーパフォームしていますから、パフォーマンスが優れたものを選ぶべきと考える方もいることでしょう。
健闘はしていますが、他ファンドと比較すると、より魅力的なファンドがあると感じるパフォーマンスです。
資金流出入
資金は流出が続いています。
評価
評価は2.5です。アメリカが不景気に入る可能性がゼロではなく、労働市場が軟化していることを考えると、不動産市場でもまだまだ値動きが想定されます。その中で金利、財務健全性に着目する戦略は保守的で好ましいのですが、今後の金利低下という追い風の状況を考えると、パフォーマンスがしっかりと残せるファンドを比較検討する必要があるでしょう。
本日は、金利低下局面においてマーケットの注目度が高まるUS-REITファンドを取り上げました。昨年7月に利上げを止めてから今年9月の利下げまで、REITは大きく上昇しており、今後も大きく上昇することが期待されています。個人投資家の皆様の中にも、ポートフォリオに組み入れられるREITを探している方は多いのではないでしょうか。
そのため期待感を持って本日のファンドを取り上げましたが、数多くあるREITと比較すると、若干期待外れなパフォーマンスでした。いろいろなファンドと比較する必要があると思われます。