ファミリーオフィスを設立する、と聞くと「莫大な資産を持つ一族が、専用の会社やオフィスを構えること」をイメージするかもしれません。しかし、日本の資産家の間で広まりつつあるファミリーオフィスは、その設立形態が多岐にわたります。
本記事では、ファミリーオフィス設立の代表的な3つの形態について、それぞれのメリットとデメリットを専門家が解説します。特に、多くの富裕層が検討する「資産管理会社の設立」に焦点を当て、その具体的な利点と注意点について詳しく掘り下げます。
[ 目次 ]
1. ファミリーオフィス設立の代表的な3つの形態
ファミリーオフィスの設立形態は、主に以下の3つに分類できます。
1-1. 資産管理会社を設立する形態
この形態は、ご自身の資産を管理・運用するためだけに新しく法人を設立するものです。この法人を「資産管理会社」と呼び、この会社がファミリーオフィスとしての機能を果たします。
- メリット:
- 節税対策: 所得税率が高い富裕層の場合、所得を法人に移転することで、より低い法人税率を活用し、効果的な節税が期待できます。
- リスク分散: 資産を個人名義から法人名義に切り替えることで、事業上のリスクなどから個人の資産を分離し、財産保全を図ることができます。
- 損益通算: 資産運用で発生した損失を、他の所得と相殺(損益通算)できる場合があります。
- デメリット:
- 設立・維持コスト: 法人設立には登記費用などの初期コストがかかります。また、毎年、法人住民税の均等割などの維持費用が発生します。
- 事務手続きの増加: 会社として会計処理や税務申告を行う必要があるため、事務手続きが煩雑になります。
1-2. 事業会社にファミリーオフィス機能を持たせる形態
すでに事業を経営している場合、既存の事業会社内に資産管理部門を設け、ファミリーオフィスとしての機能を持たせる形態です。
- メリット:
- コスト効率: 新しい法人を設立する必要がないため、初期費用や維持コストを抑えられます。
- 内部リソースの活用: 既存の経理部門や法務部門などのリソースを活用できるため、効率的に資産管理を行えます。
- デメリット:
- 事業リスクとの混同: 事業会社の資産とファミリー資産が混在するため、事業が予期せぬリスクに直面した場合、資産も影響を受ける可能性があります。
- 意思決定の複雑化: 事業とファミリー資産の管理が混在することで、意思決定の際に利益相反が起こる可能性があります。
1-3. 個人名義のまま運営する形態
資産管理会社を設立せず、個人名義のまま、外部の専門家ネットワークを活用して資産管理を行う形態です。
- メリット:
- 柔軟性: 法人設立や運営にかかる手間とコストが一切かからないため、最も手軽に始められます。
- プライバシー: 資産管理の情報を特定の法人に集約しないため、プライバシーを保ちやすくなります。
- デメリット:
- 節税効果の限定: 法人特有の節税メリットを享受できません。
- 体系化の難しさ: 専門家とのやり取りが個人に集中するため、体系的な資産管理が難しくなる場合があります。

2. 資産管理会社設立の判断基準と注意点
ファミリーオフィスを設立する際、多くの富裕層が「資産管理会社」の設立を検討します。しかし、安易な設立はかえって負担を増やすリスクがあります。
2-1. 資産管理会社を設立すべき人とは
資産管理会社を設立すべきかどうかは、ご自身の目的や資産規模によって異なります。一般的には、以下の2つの条件を満たす場合に、設立のメリットが大きいと考えられます。
- 不動産所得や金融所得が多い人: 所得税率が40%を超えるような高額所得者にとって、法人税率のほうが低くなるケースが多いため、節税効果が期待できます。
- 長期的な資産承継を考えている人: 資産を法人化することで、次世代への引き継ぎをより円滑に行えるようになります。
2-2. 資産管理会社設立で注意すべきこと
資産管理会社を設立する際には、以下の点に注意が必要です。
- 目的の明確化: 会社の設立自体が目的にならないよう、設立前に「何のために会社を設立するのか」という目的を明確にしておくことが不可欠です。
- 専門家との連携: 会社設立後の会計・税務処理は専門的知識が必要になります。信頼できる税理士などの専門家と連携しましょう。
【関連記事:【専門家が解説】ファミリーオフィスを設立するには?成功法則と3つの注意点】
3. まとめ:最適な設立形態はあなたの目的が決定する
ファミリーオフィス設立の最適な形態は、ご自身の資産構成、目的、そしてライフプランによって異なります。
- 節税やリスク分散を重視するなら資産管理会社の設立を。
- コストを抑えたいなら事業会社への機能付加を。
- 手軽さや柔軟性を求めるなら個人名義での運用を。
重要なのは、それぞれのメリットとデメリットを理解し、ご自身の「ファミリーミッション」に沿った最適な選択をすることです。
信頼できる管理運営者や専門家を探すこと、そしてチーム内で「最適な案を選ぶ仕組み」を構築することが、ファミリーオフィス成功の鍵となります。
【関連記事:ファミリーオフィス成功の鍵:信頼できる管理運営者と専門家の見つけ方】
ご自身の資産と未来を守るために、一度、中立的な専門家に相談し、最適な設立形態を検討してみてはいかがでしょうか。
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