資産を築くことは、一つのゴールです。しかし、真の富裕層のライフプランニングは、その先にある「築いた資産をいかに守り、活用し、そして次世代へと引き継ぐか」にあります。単なる早期リタイア（FIRE）から、家族の幸福を未来永劫にわたって確保する「多世代にわたる幸福設計」へと、ライフプランの考え方は進化しています。

本記事では、富裕層が直面する現代の課題を踏まえ、早期リタイアから多世代にわたる資産承継までを網羅する、包括的なライフプランニングの全貌を専門家の視点から解説します。

1. 早期リタイア（FIRE）は「資産形成」から「資産管理」の時代へ

「FIRE」は、多くの人々にとって憧れのライフスタイルです。しかし、早期リタイアを成功させるには、単に多額の資産を築くことだけでは不十分です。安定した収入源がなくなるFIRE後の人生では、「資産形成」から「資産管理」へと思考をシフトすることが、成功の鍵となります。

1-1. 40代FIRE資産家の実例から学ぶ「資産管理」の重要性

不動産投資と資産運用で早期リタイアを達成し、子どもの海外教育継続を目的として海外移住を希望された40代の資産家の事例があります。この方は、資産形成には成功しましたが、FIRE後の無収入生活や海外移住に伴う複雑な課題（生活費、住宅購入、教育費、保険、相続など）に直面しました。

この実例が示すのは、資産形成の次の段階である「資産管理」のプランニングがいかに重要かということです。資産の運用方針を再構築し、具体的なライフプランに沿った計画を立てることで、不確実性の高い未来でもご家族の夢を確実に実現できるのです。

【関連記事：【実例】40代でFIREを達成した資産家：海外移住を成功に導いた鍵とは】

FIRE後の資産管理においては、資産を枯渇させないための「出口戦略」と、安定的な「生活キャッシュフロー」を確保するポートフォリオの構築が不可欠です。具体的な運用戦略については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事：FIRE後はどうする？生活キャッシュフローを確保するポートフォリオと出口戦略】

1-2. ライフプランの軸となる「ファミリーミッション・ステートメント」

資産管理を成功させるには、まずご家族の「軸」となる目的を定めることが不可欠です。それは、ご家族の価値観や将来のビジョンを明確にした「ファミリーミッション・ステートメント（FMS）」として言語化されます。

FMSがあることで、資産運用は単なる数字の追求ではなく、ご家族のライフプランを実現するための手段となります。どんな専門家のアドバイスも、このFMSという「憲法」に沿って判断されるため、ブレない一貫した資産管理が可能になります。

【関連記事：ファミリーオフィスにファミリーミッション・ステートメントが欠かせない理由】

2. 不測の事態に備える「危機管理」の新潮流

近年、パンデミックや地政学的なリスクなど、不確実性が高まっています。この経験から、富裕層のライフプランは、単なる早期リタイアに留まらず、いかにして危機から資産と家族を守るかという「危機管理」の視点を取り入れるようになりました。

2-1. 富裕層が今動く3つの分野

「プランB」という考え方のもと、富裕層は以下の3つの分野に積極的に動いています。

• 不動産投資: リモートワークの普及を背景に、都心部だけでなく地方やリゾート地での「ワーケーション不動産」への投資が活発化しています。これは、緊急時のバックアップ拠点としての役割も担います。
• 教育: お子様に海外教育を受けさせることは、語学力だけでなく、グローバルな環境で生き抜く力を養うための「リスクヘッジ」となっています。
• 海外投資: 政治的・経済的に安定した国への移住や投資を検討することで、資産を分散し、特定の国に依存するリスクを回避しています。

【関連記事：富裕層が今、不動産・教育・海外投資に動く理由とは？「危機管理」の新潮流を専門家が分析】

3. 多世代にわたる幸福設計：資産承継と家族の絆

真のライフプランニングは、ご自身の生涯だけでなく、次世代、そしてその先の世代まで見据えたものです。多世代にわたる幸福設計は、以下の2つの柱で成り立っています。

3-1. 円滑な資産承継のプランニング

資産承継は、単に相続税対策を行うことではありません。家族間のトラブルを避け、円滑に資産を引き継ぐための法務・税務プランニングが不可欠です。信託、遺言、生前贈与など、様々な手法を組み合わせることで、ご自身の意思を尊重した資産承継を実現できます。

3-2. 家族の絆と価値観の継承

資産を次世代に引き継ぐ上で最も重要なのは、「家族の絆」と「価値観の継承」です。ファミリーオフィスは、資産管理だけでなく、家族ガバナンスの構築や次世代の教育にも関与します。これにより、お金だけではない、家族の精神的な豊かさを守り、継承していくことができるのです。

まとめ｜ライフプランニングは「設計図」から始める

富裕層のためのライフプランニングは、早期リタイアから多世代にわたる幸福設計までを網羅する、複雑かつ長期的なプロジェクトです。

成功の鍵は、明確な「ファミリーミッション・ステートメント」という設計図を描き、それに基づいて「資産管理」「危機管理」「資産承継」という3つの柱を段階的に構築していくことにあります。

複雑なライフプランニングには、中立的な専門家のサポートが不可欠です。ご家族の未来を確実なものにするために、ぜひ一度、私たちファミリーオフィスにご相談ください。

監修・執筆：渋谷 豊

ファミリーオフィスドットコム株式会社　代表取締役 大学卒業後、邦銀にてキャリアをスタート。大学院を修了後、Citibank N.A.、仏銀ソシエテ・ジェネラル信託銀行、Societe Generale Bank & Trust Singapore において、プライベートバンキングおよびアセットマネジメント業務に従事。海外勤務7年間を含め、グローバルな資産管理の実務経験を有する。 帰国後は、上場企業グループ傘下の投資顧問会社の代表取締役として、富裕層および上場企業オーナー向けの資産運用助言・ファミリーオフィス業務を統括。資産運用・管理領域における実務歴は25年以上に及ぶ。 2019年設立のファミリーオフィスドットコム株式会社において、中立的立場から資産管理・運用に関する総合的支援を提供。また、2019年より、厚生労働省年金局資金運用課（GPIF 所管）の資産運用研修にて講師を務めている。慶應義塾大学大学院修了。

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