不動産を多く相続した2代目経営者が直面するのは、「現金化しにくい資産構成」と、「兄弟間での公平な遺産分割」という、納税と家族の絆に関わる二重の課題です。
本記事では、賃貸不動産18億円を中心とした資産を持つ70代の2代目オーナー様(総資産約26億円)が、推定相続税6億円の危機に対し、不動産の共有リスクを回避し、円滑な分割を実現した資産承継戦略の全貌を解説します。
[ 目次 ]
1. 相談者の課題:不動産偏重による「納税資金」と「分割」の危機
今回のオーナー様は70代で、賃貸不動産18億円、現預金3億円、有価証券5億円を保有されていました。長男(家業を承継)、次男(士業)という兄弟構成の中で、推定相続税は約6億円と試算されました。
1-1. 課題の核心:「納税資金の確保」と「共有リスク」
- 納税の危機: 現預金が3億円しかなく、相続税6億円の納税資金が大幅に不足するリスク。
- 分割の危機: 不動産が分割の難しい形で残ってしまうと、兄弟間での共有という形になり、将来的な売却や管理で意見対立が生じる「共有リスク」が発生する懸念。
2. ファミリーオフィスによる解決策:法人化と遺言・信託の活用
私たちは、「流動性の確保」と「不動産の共有リスク回避」という二つの目的を達成するプランを構築しました。
2-1. 【戦略1】賃貸不動産の一部法人化と売却計画
- 実行: 賃貸不動産の一部を資産管理法人へ移管し、将来の共有リスクを回避するための土台作りを行いました。
- 納税資金の確保: 現預金だけでは不足する納税資金を確保するため、保険活用による準備と、相続後の不動産売却計画(優良物件を選定して売却し、現金化する計画)を立案しました。
2-2. 【戦略2】公正証書遺言と信託契約による分割ルールの明確化
最も重要で難しい「兄弟間での公平な分割」については、法的な仕組みと家族の合意形成を統合しました。
- 実行: 専門家チームが公正証書遺言と信託契約を組み合わせ、誰にどの資産を、どのルールで承継させるかを明確に規定しました。
- 目的: 遺言・信託を通じて分割ルールを明確化することで、相続時に兄弟間での紛争が生じる余地を極限まで減らしました。

2-3. 【戦略3】資産圧縮とキャッシュフローの最適化
- 資産の組み替え: 収益性が低い不動産を整理し、有価証券5億円の運用効率を高めるためのポートフォリオ戦略を再構築しました。
- 成果: 納税資金の確保と、不動産の管理負担軽減、そして兄弟間での公平な資産配分の「設計図」を完成させました。
3. まとめ:複雑な資産ほど「仕組み」と「合意」が必要となる
この事例は、不動産偏重という一見安定している資産構成でも、納税と遺産分割という二つの危機が潜んでいることを示しています。
- 成功の鍵: 不動産の共有リスクを回避するための法人化、そして公正証書遺言と家族信託を組み合わせた法的仕組みを通じて、複雑な国内外資産を整理し、家族間の合意を固めたことにあります。円満な承継は、「仕組み」と「中立的な専門家」の協力によって初めて実現します。
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