2026年3月18日、米金融市場は各アセットクラスで大きな価格変動に見舞われました。米連邦準備理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定したことに加え、中東情勢の緊迫化に伴う原油高を背景に、インフレ再燃と早期利下げ観測の後退が強く意識されたためです。その結果、ダウ工業株30種平均は前日比768ドル安と急落し、ナスダック総合株価指数も反落しました。一方、安全資産とされる金も大幅に下落しており、原油相場の上昇とは対照的な値動きとなっています。
中東の地政学リスクが原油を急騰させる
市場の警戒感を高めている最大の要因は、中東における地政学リスクの急拡大と、エネルギー供給の停滞懸念です。米トランプ政権の承認を得たイスラエルがイランのサウス・パルス・ガス田を攻撃したと報じられたほか、トランプ大統領自身もカーグ島への空爆を発表しました。イラン側も報復を警告しており、WTI原油先物(期近4月物)は一時1バレル99ドル台半ばまで急騰しました。米政権はジョーンズ法の60日間停止やガソリンの環境規制緩和などの価格抑制策を打ち出していますが、根本的な解決には至っていません。
インフレ再燃でFRBの利下げ観測が後退
原油価格の高騰は、米国内のインフレ圧力を再び強める要因となっています。18日発表の2月の卸売物価指数(PPI)は前月比0.7%上昇と市場予想を大きく上回りました。コア指数も予想以上の伸びを示しており、企業間取引の価格上昇が消費者物価を押し上げる圧力になると警戒されています。
こうしたインフレ再燃リスクを背景に、今回のFOMCではFF金利が3.5〜3.75%で2会合連続の据え置きとなりました。年内の追加利下げ回数の中央値は「1回」にとどまり、PCE物価指数の上昇率予想は2.4%から2.7%へと上方修正されています。ドットチャートの内訳では、少なくとも年末まで利下げをしないと回答した参加者が7人、1回予想が7人となり、2回以上の利下げを見込む参加者は前回の8人から5人へと減少しました。
パウエルFRB議長は記者会見で高インフレの常態化を「非常に懸念している」と強調し、物価安定に向けた進展が見られない場合には「利下げは行われないだろう」と明言しました。
株安・金急落の背景と先行きの不透明感
早期利下げ観測の後退を受けて米長期金利が上昇し、ドルが買われた結果、金利の付かない金は投資妙味が薄れ、ニューヨーク金先物価格は4,800ドル台と、約1カ月ぶりの安値へと急落しました。金スポット価格も6営業日続落となり、実質金利の上昇に伴うポジション調整が相場を下押ししています。
株式市場でも投資家心理は急速に冷え込んでいます。マクドナルドやナイキ、ホーム・デポといった消費関連株の下げが目立ったほか、ビザやアマゾンなども売られ、実体経済への悪影響が不安視されています。
さらに、FRBの金融政策を巡る政治的な不確実性も相場の重荷となっています。トランプ大統領は「即時利下げすべきだ」とFRBへの圧力を強める一方、5月に任期満了を迎えるパウエル議長の後任を巡る承認手続きも難航しており、先行きの不透明感を一段と高めています。早期の金融緩和への期待を前提に上昇を続けてきた株式・金市場にとって、今回のFOMCと中東発のインフレショックは大きなパラダイムシフト「その時代の規範となる思想や価値観(Paradigm)の転換(Shift)」を迫るものとなりました。
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