東アジア株を牽引するAI・半導体ブーム
2026年4〜6月期の世界市場は、AI(人工知能)関連への巨額投資を背景とした株式市場の高揚感と、日米の金融政策の方向性の違いに伴う歴史的な円安・ドル高という、2つの大きな潮流によって特徴づけられました。
株式市場で主役の座に返り咲いたのは、AI・半導体関連銘柄です。世界の主要株価指数の上昇率トップ3を、韓国総合株価指数(KOSPI、66%高)、台湾加権指数(42%高)、日経平均株価(36%高)と東アジアの市場が独占しました。この原動力となったのは、米テック大手によるAI向けデータセンターへの巨額投資の恩恵を受けるという強い期待です。
個別銘柄の上昇率(4〜6月)を見ると、AIサーバーに不可欠な積層セラミックコンデンサー(MLCC)を手がける韓国のサムスン電機が4.9倍で首位となり、日本のキオクシアホールディングスが4.8倍、台湾の国巨(ヤゲオ)が4.2倍と続きました。
投資家を引き付けている最大の理由は、劇的な利益成長に対する株価の極端な割安感です。韓国のSKハイニックスは12カ月先予想ベースのEPS(1株当たり利益)が1年間で9倍の38万ウォン程度に、サムスン電子も同10倍に急増しています。それにもかかわらず、両社のPER(株価収益率)は6倍台にとどまっています。韓国のイールドスプレッドのマイナス幅は主要国で突出して大きく、急激な利益の伸びに対して株価の上昇が鈍いことが示されています。この割安感から海外投資家の引き合いも強まっており、米インタラクティブ・ブローカーズが韓国株の取り扱いを開始したほか、SKハイニックスは7月に米ナスダックへのADR上場を予定しています。
ウォール街を沸かせる歴史的な資金調達ラッシュ
AIインフラ整備に向けた莫大な資金需要は、米国の資本市場にも構造的な転換をもたらしています。2026年上半期の米国におけるIPO(新規株式公開)と株式売却による調達額は2510億ドル(約40兆6500億円)に達し、2021年の新株発行ラッシュ時を上回る過去最高を記録しました。
中でも米スペースXによる862億ドルのIPOは史上最大となり、市場の高揚感を力強く牽引しています。特別買収目的会社(SPAC)を除く米国の新規上場企業の加重平均リターンは約16%に達しており、S&P500種株価指数の約2倍に相当します。AIスタートアップのアンソロピックが10月にも大型IPOを実施する可能性が浮上しており、インフラ整備資金を手当てするためのハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)による資金調達は今後も続くとみられていす。市場関係者は、11月の米中間選挙によるボラティリティーを避けるため、年後半の案件が第3四半期に前倒しで実施されると分析しています。
39年半ぶりの円安水準と為替介入への疑心暗鬼
活況を呈する株式市場の一方で、為替市場では歴史的な円安が進行しています。6月29日の外国為替市場では、円相場が一時1ドル=161円97銭近辺まで下落し、プラザ合意翌年の1986年12月以来、実に39年半ぶりの円安・ドル高水準を記録しました。2022年から始まった円安の大きな流れの中で、円は対ドルで3割近く下落しています。2025年秋以降には高市早苗首相の経済政策への見方から円売りが強まり、2026年春にはイラン情勢を背景とした有事のドル買いが進みました。
この強烈な円安圧力の最大の背景にあるのは、堅調な米景気とそれに伴うFRB(米連邦準備理事会)の利上げ観測です。中東情勢を背景にした物価上昇も影響し、市場では年内1〜2回程度の米利上げが予想されており、ドルは他の主要通貨に対しても上昇基調にあります。日本銀行は6月に政策金利を31年ぶりに1%に引き上げましたが、実質金利で見ると日本は依然として低水準にとどまっており、利上げが物価上昇に追いついていないとの見方が市場で広がっています。さらに、新NISAを通じた個人投資家による海外株投資や、エネルギー価格上昇に伴う輸入企業のドル買いも円売りの構造的圧力となっています。日米の2年物国債の利回り差は約2.8%にまで拡大しており、これが根強い円売りを誘っています。
今後の市場展望と課題
歴史的な円安水準を受け、為替市場では政府・日銀による円買い介入への警戒感が強まっています。片山さつき財務相とベッセント米財務長官はオンライン協議を行い、日米間で「必要とあらば断固とした措置をとる」ことで合意していると強調しました。しかし市場では、米国の利下げ観測が広がっていた2年前の為替介入時とは異なり、現在はFRBの利上げ観測が根強いため、「根本のドル高が変わらない限り、押し戻される可能性がある」と再介入の効果を疑問視する声が目立ちます。アナリストの間では2026年末までに1ドル=164円まで下落するとの予測も出ています。
過度な円安は輸出企業の競争力を高める一方で、輸入インフレを通じて国内の個人消費を押し下げるリスクを孕んでいます。また株式市場においても、AIによるデータセンターへの集中投資が消費財メーカーへ悪影響を与え始めているとの指摘や、メモリー価格高騰による巨額投資がハイパースケーラーの財務を悪化させるとの懸念も浮上しています。中東情勢の収束が見通せない中、日米欧の金融引き締めが株高の余地にどう影響するのか、下半期も複雑に絡み合うテーマを注視していく必要があります。
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