米国の9月消費者物価指数(CPI)が5カ月ぶりの大幅な上昇となり、世界の金融市場に動揺が広がっています。インフレ圧力はエネルギーにとどまらず、コア物価や輸送・医療サービス、コンピューター関連製品にも見られました。これを受けて米連邦準備理事会(FRB)による10月の追加利上げ観測が再浮上し、米金利の上昇や中東の地政学リスクの高まりとともに、株式・商品・先物市場を揺さぶっています。
米9月CPIは予想上回る上昇、インフレ圧力が広範に波及
米労働省が発表した9月の総合CPIは前月比0.6%上昇、前年同月比3.7%上昇となり、市場予想の3.6%を上回りました。主因となったガソリン価格は前月比9.1%上昇、前年同月比では34%増と急騰しています。ガソリンは総合CPIの前月比上昇の半分以上を占めました。
食品・エネルギーを除くコアCPIも前月比0.3%上昇、前年同月比2.6%上昇と、予想の2.5%を超えました。航空運賃は前年同月比約22%、配送費は同約16%上昇したほか、コンピューター用ソフトウエア・関連用品が同28.4%増、コンピューター・周辺機器・スマートホーム機器が同9.7%増と、いずれも過去最大の上昇率を記録しました。帰属家賃や医療サービスも上昇しています。
実質平均時給は6カ月連続のマイナスとなり、米国の家計を圧迫しています。米国家経済会議(NEC)の委員長も「期待外れの数字」と言及しました。
10月連続利上げ観測が再浮上、米長期金利上昇と円安進行
金融政策の見通しは急速に修正されました。FRBは9月に3年2カ月ぶりの利上げを実施したばかりですが、CPI発表後、米金利先物市場では10月27〜28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での連続利上げ予想が一時5割を超え、それまで約8割を占めていた据え置き予想を一時逆転しました。
米長期金利は一時5.32%まで上昇し、外国為替市場では1ドル=158円90銭台まで円安が進みました。FRBは10月17日から金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間に入るため、その直前となる16日に予定されているFRB議長の対談での発言に、市場の注目が集まっています。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は、CPIについて「私が望んでいたよりも高かった」と述べる一方、10月FOMCの結果を予測することは避けました。また、翌日発表される生産者物価指数(PPI)が、自身のインフレ見通しを形成する助けになるとしています。これを受け、15日発表のPPIも、追加利上げの可能性を見極める材料として注目されます。
中東情勢悪化で原油高、金は3日続落
商品市場では、イエメンの武装組織フーシによるサウジアラビアへの攻撃激化や、13日に発生したアラムコ本社での火災を受け、NY原油先物(WTI11月物)が1バレル=95.09ドルと5日続伸し、一時96.06ドルを記録しました。国際エネルギー機関(IEA)は2026年の需要見通しを下方修正する一方、年末までの供給不足を予想しています。
一方、NY金先物(12月物)は1トロイオンス=4107.9ドルと3日続落しました。米CPIの上振れによって高金利環境が長期化するとの懸念が、金相場の重荷となっています。
半導体株の時価総額1兆ドル超が消失
高金利観測とAI投資の資金調達に対する懸念から、主要半導体銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は6営業日続落し、この間の下落率は10%を超えました。半導体株の時価総額は6営業日で計1兆ドル(約159兆円)余りが消失しています。アームが約20%、インテルが11%下落したほか、ブロードコムのCEOが投資家に対し「ギャンブラー」と警鐘を鳴らしたことも注目されています。
14日のダウ平均は5万1621.78ドルと続落し、ナスダックも511.512ポイント下落しました。エヌビディアなどが売られる一方、ディフェンシブ株など相対的に値持ちのよい銘柄もあり、企業ごとの業績や投資負担を見極める動きが重要になっています。
日経平均株価は6日続落か、先物主導で下落圧力強まる
日本市場にも影響が波及しています。米CPI発表前に取引を終えた14日の日経平均株価は、前日比33円23銭安の6万7744円29銭と、5日続落しました。朝方は買われたものの、半導体関連株の一角が売られ、下げに転じました。
TOPIXも下落し、プライム市場では約6割の銘柄が値下がりしました。総合スーパー事業が苦戦したイオンが一時8.2%急落するなど、内需株の一角の弱さが目立ちました。さらに日経平均先物は夜間取引で一時6万6540円(前日比1620円安)まで急落する場面があり、消費への懸念と先物売りの圧力が上値を重くしています。
まとめ
今回のCPIで重要なのは、総合指数の上昇を大きく押し上げたガソリンと、エネルギーを除いても上昇が続くコア物価を分けて見ることです。原油価格が落ち着けば総合CPIへの圧力は和らぐ可能性がありますが、住居費やサービス価格の上昇が続く場合、FRBが追加利上げを検討する理由は残ります。
バーキン総裁の発言を踏まえると、次のPPIは、CPIで強まったインフレへの警戒を補強するかどうかを判断する材料になります。食品・エネルギーを除く部分やサービス価格まで上振れすれば、追加利上げ観測が強まる可能性があります。一方、上昇がエネルギーに偏り、その他の価格が落ち着いていれば、物価上昇の広がりに対する警戒が和らぐ余地もあります。総合指数だけでなく、FRBが重視するPCE物価指数の算出に使われる項目にも目を向ける必要があります。
その先の株式市場では、企業がコスト上昇を吸収できるかが焦点です。販売価格を引き上げても需要が維持され、利益見通しが崩れなければ、株価下落は評価倍率の調整にとどまる可能性があります。一方、消費の減速やAI投資の採算悪化によって利益見通しまで下方修正されるなら、調整が長引くシナリオを考える必要があります。
日本株も、円安だけで支えられるとは限りません。輸出企業への恩恵がある一方、原油高と円安は輸入コストを押し上げ、内需企業や家計には負担となります。日経平均の続落日数だけで判断せず、TOPIXの動き、値下がり銘柄の広がり、企業決算での利益率や通期見通しを確認することが大切です。
まずはPPIの内訳と、発表後の米金利・利上げ確率の反応を確認し、その後のFRB議長の発言と企業決算を照らし合わせる。物価への警戒が強まっても企業収益が保たれる場合と、業績悪化を伴う場合では、運用上の対応は変わってきます。
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