13日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落しました。終値は前週末比1253円40銭(1.82%)安の6万7777円52銭で、取引時間中には下げ幅が一時1900円を超える場面もありました。前日の米国市場での半導体株安に加え、人工知能(AI)インフラ投資の資金調達コストへの懸念、中東情勢の緊迫化といった複数の悪材料が重なり、市場には不安が広がっています。
AI・半導体関連が集中的に売られ、指数を押し下げ
午前の終値時点でも日経平均は1738円53銭安の6万7292円39銭と大きく下落していました。これまで相場を牽引してきたAI・半導体関連銘柄に売りが集中し、アドバンテストやソフトバンクグループなど、主要銘柄が指数を大きく引き下げました。相場の主役だった銘柄群がそろって売られたことで、投資家心理の悪化が鮮明になった一日だったといえます。
一方、TOPIXは前週末比5.86ポイント(0.14%)高の4110.67で取引を終えました。日経平均の大幅安とは異なり、日本株全体が一様に売られたわけではありませんでした。
浮上した「資金調達」とROIという新たな制約
市場心理を冷え込ませた要因の一つが、米半導体大手の経営トップの発言をきっかけに意識された「AI投資の資金調達リスク」です。インテルの最高経営責任者(CEO)はシンガポールのイベントで、今後の重要課題として資金とその調達コスト、そして投資収益率(ROI)を挙げました。ブロードコムのCEOも、最大の制約要因は資本かもしれないと述べ、生産能力や部材供給以上のボトルネックとして資金面の問題を指摘しています。
ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)などは、データセンターの建設や半導体の調達に向けて、社債発行などを通じた巨額の資金調達を進めています。しかし、米長期金利が高止まりするなかでの大量の債券発行は、社債の需給を通じて調達金利に上昇圧力をかけ、関連企業の財務や収益性を悪化させるリスクを抱えています。需要自体は依然として強いものの、投資を続けるなかで、資金調達コストに見合うリターンが得られるのか、回収時期が後ずれするのではないかという懸念が強まっています。加えて、マイクロソフトが自社開発のAI向けカスタム半導体を発表したことで、既存の半導体メーカーへの依存度が低下するとの見方が広がったことも、半導体株の売りを誘いました。AI投資は需要の強さだけでなく、資金面での持続性も問われる局面に入りつつあります。
中国メモリー大手の進展で、アジアの半導体株に売り波及
半導体業界での競合激化への警戒感も、売り圧力に拍車をかけました。中国のメモリー大手、長鑫存儲技術(CXMT)がDRAMの開発で重要な進展を遂げ、記憶容量を高めた新製品の開発を進めていると報じられました。供給過剰や価格競争の激化が意識され、12日の米市場ではマイクロン・テクノロジーが3.88%安となりました。
この警戒感はアジア市場にもすぐに波及しました。13日の韓国市場では総合株価指数(KOSPI)が一時4.7%安まで下落し、サムスン電子が7%超、SKハイニックスが10%超売り込まれました。東京市場でも、長期保存を担うNAND型フラッシュメモリーを主力とするキオクシアホールディングスが13.28%安と急落し、9月末の株式分割後の安値を更新しました。同社1銘柄で日経平均を160円余り押し下げた計算です。キオクシアは信用買い残が約8850億円、信用倍率が約24倍と買いに大きく偏っていたため、悪材料の浮上とともに信用買いの解消が急落を増幅した可能性も指摘されています。
ただし、CXMTが開発を進めるDRAMと、キオクシアが主力とするNANDは異なる製品です。今回の売りの波及と、同社の製品市場で実際に競争が激化するかどうかは、分けて考える必要があります。
中東情勢の緊迫化と原油高への警戒
地政学リスクの高まりも下落要因となりました。イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビアの首都リヤドの国際空港を攻撃したと報じられ、中東からの原油供給の停滞に対する警戒感が急浮上しました。これを受けて、WTI原油先物価格は一時1バレル94ドル台まで上昇しました。原油価格の上昇や物流の滞りは日本経済や企業業績を直接圧迫しかねず、株式市場全体への悪影響が懸念されています。
個別の好材料と今後の注目点
一方で、下値を支える要素や個別企業の明るいニュースも見られます。サーボモーターや産業用ロボットを手がける安川電機は、2027年2月期の連結純利益が前期比35%増の475億円になるとの見通しを発表し、株価は一時4.91%高まで買われました。製造装置や部材に強みを持つ日本企業にとって、AI需要そのものの拡大は本来、強力な追い風といえます。ただし、同社は通期の営業利益予想を下方修正しており、純利益の増加だけで業績全体を判断しないことも必要です。
米国では大手金融機関の決算発表が始まり、7〜9月期の企業業績への関心も高まっています。今後は14日のASMLホールディングや15日のTSMCなど、世界の主要半導体関連企業の決算発表が相次ぎます。好業績に加え、今後の需要や受注の強さが確認されれば、市場の冷え込みも次第に和らぎ、地合いの改善に向かうことが期待されています。目先は、こうした主要企業の決算内容が相場の方向性を左右する焦点となりそうです。
まとめ
今回、注目すべきは、日経平均が大幅に下落する一方で、TOPIXは崩れていないことです。13日は日経平均が1.82%下落しましたが、TOPIXは0.14%上昇しました。また、日経平均の構成225銘柄でも、156銘柄が上昇し、下落は68銘柄でした。日本株全体が売られたというより、日経平均への影響が大きいAI・半導体関連銘柄に売りが集中したことを裏付けています。
この違いを踏まえると、現時点では日本株全体の上昇基調が崩れたと判断するより、これまで相場を牽引してきた銘柄の評価が見直されていると捉えるのが自然です。今後もTOPIXが底堅さを維持するのか、それとも他の業種にも売りが広がるのか。ここが、主力銘柄の調整と市場全体の悪化を見分ける重要な確認点になります。
AI投資については、需要が伸びることと、投資に見合う利益が得られることを分けて見る必要があります。マイクロソフトは、自社開発のMaiaを2027年から大規模に展開し、自社製品・サービスの主要なAI推論基盤にする方針を示しました。ここから考えられるのは、AI需要の拡大が続いても、半導体の選択やコスト構造が変わり、企業ごとの利益の取り分に差が生じる可能性です。一方、自社半導体の活用がコスト削減につながれば、AI投資を継続しやすくする面もあります。
今後の決算では、ASMLの新規受注と顧客の設備投資計画、TSMCの先端半導体の需要見通しと利益率が確認点になります。AIサービスを提供する企業では、設備投資後にどれだけ現金が残るか、借入依存度や利払い負担がどう変化するかも重要です。需要と受注が維持され、投資回収の見通しも改善するのであれば、今回の下落には期待や需給の調整という面があると考えられます。一方、顧客の投資延期や受注の減少が広がるのであれば、将来の利益見通しを見直す必要があります。
原油高が続けば、企業のコスト負担に加え、インフレと金利を通じてAI投資にも影響が及ぶ可能性があります。こうした局面では、「AI関連」というテーマや株価の下落幅だけで判断せず、需要の強さ、利益へのつながり、資金調達の余力を企業ごとに確認することが大切です。指数の動きと市場全体の広がり、そして企業の実態を重ねて見ることで、今回の下落の意味がより明確になると考えています。
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