米国株投資家としてFOMC後のパウエル議長のコメントのどこに注目すべきか

米国株投資家としてFOMC後のパウエル議長のコメントのどこに注目すべきか

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

25~26日に開かれるFOMCでどういった決定がなされるか、パウエル議長がどういうコメントをするかに非常に注目が集まっています。

マーケットの下落トレンドがどうなるか判断する材料となるのは何かを、お伝えしたいと思います。

FOMC開催までに踏まえた上でマーケットに望んでいただくため、今回はこのテーマを取り上げました。ぜひ最後までご覧ください。

FOMC後のパウエル議長コメントの注目点

こちらをご覧ください。

今回のFOMCにおいてパウエル議長がどういうコメントをしてくるか、注目が集まります。

今回恐らく利上げ、QTのスタートを決定することはさすがにないと言われています。

ですが、テーパリングの早期終了は予想されています。早期終了とは、QTや利上げの前倒しです。

それ自体はマーケットにネガティブなインパクトを与える可能性があるので、そこも注目点ではあります。

ですが、それ以上に皆さんに注目してほしいのは3つのコメントです。

注目すべきコメント(1)

1つ目はQTの時期についてです。もしかしたら今回、実施時期を匂わせてくる可能性があると思っています。

パウエル議長は1月11日の公聴会において「バランスシート決定まではFOMCで2~4回の会合を開き協議する必要がある」と言っています。

最低2回ということは、今回しっかりと話し合い、3月に最終決定することも可能です。

パウエル議長はマーケットとのコミュニケーションを非常に大事にしている議長です。

3月に決まるかもしれない場合は、1月会合後の記者会見でバランスシートの縮小についてかなり細かく伝えてくる可能性があります。そのことをご認識ください。

逆に言えば、あまり話し合っていなければQTはまだまだ先だとして、マーケットが落ち着きを取り戻す可能性もあります。

注目すべきコメント(2)

2つ目のポイントはQTへの期待です。

1月5日の議事録にて、今回のバランスシートの縮小でイールドカーブのフラット化の制限を目指すと、あるメンバーが述べています。

イールドカーブのフラット化を制限したいとパウエル議長のコメントからも出てくれば、FRBメンバー全体の意向として強く反映されてきていることを示します。

もしもそのコメントがあれば、今後QTを通じて長期金利を上げる可能性があるとお考えください。

イールドカーブについて

イールドカーブのフラット化を回避したい

なぜQTにおいて長期金利を上げたいと思っているのか。こちらをご覧ください。

左のチャートをご覧ください。左のチャートの上には、FFレートと言われる政策金利の上げ下げを。下の方には、2年米国債利回り-10年米国債券利回りを出しています。赤丸は2年金利よりも10年金利が低くなっている、逆イールドになった状況です。

FFレートが上がっていくと、政策金利を引き締めて2年金利も上がります。

一方短期金利が上がれば、景気が将来減速、もしくは落ち着いてくるだろうとして、10年金利は上げ幅を収めます。2年と10年の金利が逆転する状態となったのが赤丸、逆イールドの状態です。

ただし、こういった状態になるとグレー網掛けで示したように、景気後退でGDPの成長が止まり、株価も下がります。これは過去4回繰り返されました。

今回も利上げ局面に入るので、短期金利も2年金利も恐らく上がっていくでしょう。

一方、10年金利がきっちりと上がらないと、またすぐに景気後退に入ります。それは避けようとして、しっかりと10年金利が上がっていくようにしたいと考えています。

さらに、金融機関がしっかりと収益を取れるようなイールドカーブが立った状態にすれば、世の中の経済が回ってくる、10年金利を上げたいとQTで考えているはずです。

イールドカーブのフラット化を回避したい

ですが、図中に×印で示したように、既に10年金利は下がり始めています。

右のチャートに書かれているように、2年金利はグングン上がってきていますが、10年金利は少し伸び悩んでいるところがあります。

景気減速を示す指標

それはなぜかです。こちらをご覧ください。

JPモルガンが出しているエコノミック・アクティビティ・サプライズインデックスというものがあります。これはCitiのエコノミック・サプライズと同じようなものです。経済の指標でマイナスのものばかりが出ていることを表しています。

JPモルガンも、今は少し経済状況が悪化していると示しているのです。

経済指標が悪化し、10年金利が景気減速を見越し下がってきている中、QTで押し上げることが本当にできるのか。マーケットは不安視しています。

金利上昇によるメリット・デメリット

注目すべきコメント(3)

ですから、QTの手法がしっかりと示されなければ、本当に金利が上がっていくのかどうかマーケットは疑念に思っています。

しかも、12月FOMC後のパウエル議長のコメントでは、前回圧縮時の手法は今回のケースに最善でない可能性があるとしました。

前回QTをスタートした後も金利が上がらなかったことを反省し、QTで金利を上げていきたいと改めてきっちり示すことが必要です。それができれば、10年金利と一緒に短期金利も上がっていく、逆イールドになるのはかなり先だから景気減速はそこまでないと、マーケットは安心感を持つことができます。

しかし、具体的な手法を示すことなくQTだけを行えば、また逆イールドになるのではと不安になるでしょう。しっかりとQTがスタートし、金利が上がると確認できる夏ぐらいまで、マーケットはかなりモヤモヤする可能性があります。

1~3月でパウエル議長がどういう手法を採るかをある程度明確に示さないと、マーケットのモヤモヤが続くかもしれません。そのため、パウエル議長のコメントが非常に注目されているとお考えください。

景気減速を示す指標

こちらに戻ります。

今の状況はバンカメが指摘するように、家計を中心とした消費不況が来ると言われています。

例えば、米国の家計への政府支払いは21年2.8兆ドルもありました。しかし、今年に関しては6,600億ドルまで下がります。

また、21年アメリカにおける貯蓄率は10%を超えた時期もありました。しかし、現在は6.9%まで下がっています。

これは2019年の水準7.7%を下回る、家計においてあまりお金がない状態になっています。

それを実際に示すものとして、21年11月、カードによる借り入れは400億ドルも前月に比べて増えています。カードでお金を消費しながら生活をしている経済状況なのです。

QTによる金利上昇で懸念される影響

その中で、実際にQTで金利を上げることを目指します。

QTが本当に実現できるのか疑問視されていますが、QTによって金利が上がってくれば、今度は違う影響が懸念されます。

10年金利が上がれば社債を発行して自社株買いを行い、株価を上げるためのコストが上昇します。そのため、米株の大きな上昇要因である自社株買いがストップするのではないかというのが1つです。

また、信用の低い企業の社債での資金調達コストが増えることで、ハイイールド債券が下がるのではないかとの懸念もあります。

さらに、最近起こった米大手金融機関が駆け込みのように20年社債を発行し、巨額のお金を集めています。これは将来金利が上がることで、資金調達が困難になる前にお金を集めようとした行動だと言われています。

QTによって金利が上がらなければ上がらなかったで、今度は逆イールドになるとリセッションを警戒する向きもあります。

金利が上がったら上がったで、今度は社債の発行や自社株買いの問題が出てきます。

非常にかじ取りが重要な中で、パウエル議長がマーケットを安心させるようなQTのシナリオを提出できるのか、それともできないのか。そこで今後の流れは全く変わってくるとお考えください。

最悪のケースは、QTの明確な指針を示せないまま進み、夏以降にQTを行い金利が上がるかどうかを確認するまでモヤモヤした状態が長く続くことです。

反面、きっちりと方向性を示してマーケットが納得すれば、株価は企業業績、経済状態に合わせた順行速度に戻る可能性もあります。

今回、FOMC後パウエル議長が特にQTについてどのぐらい明確なコメントを出してくるのか。ぜひ皆さんには注目していただければと思います。

日本時間27日朝4時半ごろには出てきます。1時間半残った状態からマーケットはどう反応するのか。27~28日のニューヨーク株式市場はどういうふうに反応するのか。大きな影響が出てきますので、それもセットで今週は見ていただければと思います。

これ以外にも、アメリカの企業決算はAppleを中心に多く発表されます。いろいろな指標もあります。他の指標にも目を向けながら、最も大きなイベントとなるFOMCに、結果だけではなくコメントにも目を移していただければと思います。

本日も最後までご覧いただきありがとうございました。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

東証グロース市場250指数(グロース250)が年初来安値を更新するなど、グロース株の下落が目立っています。4月 …

【第1回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

【第1回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

近年、世界の株式市場の牽引役は間違いなく半導体企業でした。ただ、全ての半導体企業に対して広がった成長神話は、こ …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、 …

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

先週のFOMCを受け、6月の利上げ可能性が高まってきました。その影響で、今後の長期金利低下などが期待される中で …

おすすめ記事