本日分析するワールド・バリューアロケーションBコースは、ファースト・イーグルという有名な運用会社が、運用を担当するファンドです。不安定な相場でも強く守り、勝ち抜くという戦略のパフォーマンスを確認しつつ、どういう方に適しているかを含めて分析します。
お願い
最初にお願いです。当記事は情報提供を目的に作成しています。投資の勧誘、売買の推奨は目的としていません。取り上げる投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社と当社の間に業務提携等は一切ありません。中立的な立場で分析します。
投資信託概要
概要
ワールド・バリューアロケーションBコースは、世界のバリュー株を購入しています。運用会社はアムンディです。世界株が投資対象で、NISA成長枠の対象です。信託報酬は1.86%と、一般的なアクティブファンドよりは少し高い印象です。純資産総額が630億円です。
今回取り上げた理由です。世界各国の株式を投資対象とするアクティブファンドということで、今後経済が堅調に推移した場合、世界の株式全般が成長する可能性があります。その世界株を幅広く分析して投資するファンドは投資の可能性があると考え、選出しました。
投資対象は新興国も含んでいますが、実質はアメリカ、欧州、日本の銘柄を中心に、大型割安株が主となっています。
投資先のマザーファンドは、ファースト・イーグル・アムンディ・インターナショナルファンドで、ファースト・イーグルが運用しています。同ファンドの投資スタイルは徹底したバリュースタイルです。ファースト・イーグルはバリュー投資で非常に有名な会社ですから、バリュー投資の目利きがあるかどうかが焦点になるでしょう。
また、このファンドはキャッシュだけでなく、金によるリスクコントロールも重要視しています。これらがパフォーマンスにどう影響するのかも確認したいと思います。
本日のチェックポイントです。グローバルバリューで不安定な相場で勝つ投資戦略を謳っていますから、本当にそれができているのかどうか。また、強く守って勝ち抜く戦略を謳っていますが、長期投資に適しているかどうかをチェックしたいと思います。
簡易パフォーマンスです。トータルリターンでは同カテゴリーと比較すると、ややマイナスです。パフォーマンスが非常に良いという印象ではありません。
一方で、標準偏差はカテゴリーを大きく下回っています。リスクコントロールができている印象です。
投資戦略
投資戦略は5つの特徴があります。主に割安と判断される世界の株式に投資しています。得意とする割安銘柄に投資しつつ、米ドルベースではありますが、相場環境に関わらずプラスのリターンを追求しています。また、短期的なパフォーマンスよりも中長期的に安定したパフォーマンスを目指しています。
そのための3つの戦略として、割安であることをしっかりと分析し、バリュー投資を行っています。
次に、金の保有です。一定量の金を保有し、金融市場が困難に陥った際のヘッジ手段として利用しています。
最後にキャッシュです。金とは異なり、突然訪れる好機を逃さないことが目的です。急激に下落した局面では、現金をフルに活用してバリューのあるものを購入する戦略です。非常にオーソドックスですが、金とキャッシュの割合が高い点が特徴です。
銘柄戦略
グローバルな大型株に投資しており、現在は125銘柄を保有しています。やや分散が多い印象です。基本的には、割安感がなくならない限りバイアンドホールド、買った後は保有し続けるスタンスです。
最大の特徴は、金と現金の比率が高いことです。現金が約9.1%、金が15.1%ですから、約25%が振り分けられています。予期せぬリスクへのヘッジ手段としての金と、大きく下落したときに買い入れるためのキャッシュポジションを高めることで、中長期的な資産の実質的な上昇を目指しています。過去を見ると、現金比率は相場環境によって変動していますが、おおむね10%程度は保有し、好機をうかがっています。
銘柄自体を見ると、上位には金が多く含まれていますが、オラクル、メタプラットフォーム、エクソンモービルなどが並んでいることを見ると、バリューを見極めて運用していることが分かります。全てがテクノロジー株でもバリュー株でもありません。彼らの基準に基づいた独自の割安戦略は、パフォーマンスに繋がっているのでしょうか。
ファンドパフォーマンス
パフォーマンス
このファンドは強く守って勝ち抜く戦略を掲げています。市況によって割安感が薄まり、投資先が限られる場面、つまり株価が堅調に推移して割安な銘柄が減る、投資先があまりない場合には、無理に投資を行いません。
ただ、投資機会はいつ訪れるか分からないため、大きく下落した局面ではすぐに買いに行けるように現金比率を高くしています。基本的には守りを意識した運用であり、それがパフォーマンスに現れています。
金と現金の比率が高いことから、相場が大きく上昇する局面では世界株平均に遅れをとる傾向がありますが、長期的な動きを見ると比較的安定していることが、このファンドの特徴です。
青で示した世界株平均と比較したリターンは、過去3年では-10%、過去5年では-30%。世界株平均の円建てをアンダーパフォームしています。
直近は株式相場が上昇基調にあったため、こういったファンドが投資する割安株よりも成長株の上昇幅が大きくなったことが、ビハインドの理由だと考えられます。
リスクは小さいと言えます。パフォーマンスに少し劣る部分がある一方で、非常に小さなリスクで運用しています。
年間リスクは10%~13%程度と、世界の平均が15%を超える中、他のファンドと比較しても明らかにリスクが低くなっています。リスクが低いのは、分散をある程度効かせ、割安なものを買っていることも影響しているでしょう。
シャープレシオが1を超える期間も多く、比較的高いシャープレシオを維持しています。ややばらつきはありますが、株価の上昇期には十分に効率的な運用ができています。
このファンドが本領を発揮する局面は、株式が大きく動く状況、全体的な相場が非常に不安定になった場面です。こうした局面では、成長株よりも割安株が優位になる傾向があるためです。
また、15%近く保有している金はリスク回避の資産です。その金がリスクヘッジとして利用されることも、このファンドの強みです。
大きく下がったときには、現金ポジションを株式の購入に充てることで、中長期的には改めて割安なものが購入できます。時間の経過とともにポートフォリオが強固になっていきます。
株式相場が順調なときには、他のファンドや指数と比較してリターンが劣る傾向があります。ただ、長期的には守りを重視した運用が効果を発揮することは間違いありません。守り重視のポートフォリオを好む方にとっては、長期的に保有できるアクティブファンドの1つだという印象を持ちました。
資金流出入
2020年以降、資金の流出が続いています。過去3年~5年間のパフォーマンスが世界株に比べて少し劣っているため、より成長性の高いファンドにお金を移す方が多いのでしょう。しかし、ファンドが本領を発揮する局面は、より株価の動きが大きな時期、金融マーケットが非常に不安定になったときです。そういった局面になれば、資金の流入は増えるでしょう。
評価
評価は3です。非常に安定的で長期に預けるにはいいファンドだと思いますが、現時点のパフォーマンスはどうしても世界株に劣っていますが、実質的な力としては星4つ程度のファンドです。現金と金の比率を高めに保持する戦略は、長期的なパフォーマンスに繋がります。下落の耐久度が高いファンドと言えますから、長期で運用したい方にとっては、星以上の価値があるでしょう。
本日は、バリュー株への投資に力を入れ、世界的にも知られているファンドが運用する投資信託を分析しました。バリュー株を買う際、高値時は追いかけて買わず、金のポジションを15%近く、現金のポジションを10%保有することで、下落局面では金をヘッジに活用し、下落したときにはいい銘柄を選別して買うための現金を保持しています。マーケットが動く局面では中長期的に強みを発揮するファンドです。
表向きのパフォーマンスとしては、過去3年~5年では劣っているため、資金流出に繋がっています。こうした点をどう考えるか、皆さんでも分析をしていただければと思います。