本日は、Jリートに投資するフィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンドを分析します。ここ最近は、Jリートに関して色々なレポートが出ています。日銀が金利を上げることでリートに逆風であるというレポートがある一方で、インフレにより長期的には不動産価格や賃料収入の上昇が見込めるため有望な投資先というレポートもあります。
このように注目を集めているJリートですが、その中でアクティブファンドとして厳選した銘柄選定を行うフィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンドを分析します。
コツコツと安定リターンを積み上げる良質ファンドと評価されている当ファンドですが、詳細を分析していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事は情報提供を目的として作成されており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。また、投資信託を選ぶ際にはランダムに抽出しています。運用会社や販売会社と当社の間には業務提携は一切ございません。中立の立場でお伝えします。
投資信託概要
概要
フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンドは、フィデリティが運用しています。NISA成長枠での投資が可能です。信託報酬は1.04%、純資産総額は352億円です。
ファンドの特徴です。フィデリティ日本国内のリートに投資を行うアクティブファンドです。投資方針は、市場平均と比べて割安な銘柄を組み入れていきます。一方で、割安感が低下したと判断される場合は、投資銘柄の比率を引き下げます。割高であれば売り、割安であれば買うというごくシンプルな投資戦略です。
Jリートの規模自体が海外のリート市場と比べて小さく、株式と比べても小さく、そのため、銘柄を頻繁に入れ替えることは容易ではありません。そのため、株価動向に応じて銘柄の投資割合をリバランスすることが運用のメイン手法になります。
組み入れ銘柄数は30を下回っています。東証リート全体では58~60銘柄ですから、半分程度を抽出しているファンドです。
チェックポイントです。Jリートのアクティブファンドといえば、パッシブファンドの方がいいのではないかという声もあります。期待値が低いと言えるかもしれません。低い期待値の中で、期待値を超えるパフォーマンスを実現できるかどうかを見ていきたいと思います。また、長期投資が前提ですから、長期で安定したパフォーマンスを実現できるかも注視したいと思います。
簡易パフォーマンスです。10年、5年、3年、1年のデータを見ると、概ねカテゴリーをやや上回る結果を示していますが、1年では少しアンダーパフォームしています。標準偏差は全ての期間でマイナスとなっており、リスクのコントロールができている印象です。アクティブファンドとして、どれだけ上積みできるかが注目材料となるでしょう。
投資戦略
販売用資料を見ると、非常に真っ当な戦略が書かれています。まずはボトムアップリサーチをもとに銘柄を選別しています。具体的には、60銘柄の中でインタビューなどを行い調査を進めています。さらに個別物件の賃料収入がどうなるか、負債状況がどうなっているか、LTVはどうなっているかなどを確認しています。また、経営陣との議論、外部の成長要因やファイナンスの状況も分析します。このようなボトムアップリサーチから、銘柄を選んでいます。
トップダウンのアプローチも取り入れています。マクロ環境に基づいて、どのセクターが有望かを確認し戦略を立案しています。例えば、オフィス、商業、住宅、物流ホテルがいい、賃貸がいい、オフィスがいといったセクターごとのファンダメンタルズ分析を行っています。
そこに加えて、キャッシュフローや利益の見通し、財務状況を見てバリエーションを作成し、バリエーションが低いものを買い、バリエーションが高くなったものについては比率を下げるという、非常にオーソドックスな運用です。
戦略的には、リサーチ力、バリエーションの調整能力が高ければファンドのパフォーマンスが上がるという、分かりやすい構造です。
銘柄戦略
組み入れの多い分野は総合型リート、工業用リート、オフィスリートです。総合型リートとは、商業やオフィスなど複数のセクターに投資するリートです。オフィスリートは最近改善傾向にあるものの、空室率が依然として高くなっています。そのため、オフィスリートへの投資はやや逆張り的で、割安な銘柄を選んでいる印象です。
具体的には、野村不動産マスターファンド、日本プロロジスリート、日本ビルファンド、イオンリートが上位に位置しており、他のファンドとは異なります。
銘柄数は現在34で、一番上に野村不動産マスターファンドが位置しており、インデックスとは異なることが確認できます。では、この選択が実際のパフォーマンスにどう影響しているのでしょうか。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
国内リート全体が低迷しているため、パフォーマンス自体は上がっていません。過去3年間のトータルリターンは年率1%、過去5年間では年率5%程度と、ほとんど上昇していません。
リスクは10%以上です。金利や不動産市況の影響を受けているとはいえ、近年は特に苦労していることが分かります。リスクが10%でリターンが年率1%しかないということは、運用が非常に厳しい状況といえます。
ただ、Jリートの市場環境が非常に厳しいことを考えると、同カテゴリー平均と比較する必要があります。リターンが同カテゴリー平均を上回っているので、ファンドのパフォーマンスとしては良好だと言えます。アクティブファンドは、ベンチマークを上回ることが目標となりますので、その点では評価できます。
東証リート指数とパフォーマンスを比較すると、騰落率のベースで過去3年では約4%、過去5年では約9%程度と指数を上回っています。長期で見た場合にはベンチマークを上回っていることはプラス材料になります。
基本的に、日本のリートはどの銘柄も似たような動きをする傾向があります。60銘柄近くしかないため、突出して有望な銘柄を見つけ出すのは難しく運用成果を上げにくいと言われている中で、これだけ安定したパフォーマンスを続けているということは、銘柄選定力が高いと言えるでしょう。
ファンド自体は設定来で+204%に対し、東証リート指数は+165%です。約40%累積で上回っているということは、立派なパフォーマンスです。
背景には、銘柄数を半分に絞っていることがあります。非常に運用が難しい中で、投資銘柄を半分に絞り、割安のときに買い、割高になれば比率調整を行う、コツコツ積み上げる利益がファンドの生命線だといえます。過去の実績を見ると、短期的には大きな差は出ていませんが、長期的には差がついてくる典型的な例です。
数年で数%ずつの差ですが、過去10年で30%、設定以来で40%の差がついています。長期的に指数を上回る成果を出し続けるファンドだと言えます。
Jリート全体が低迷している影響で近年のパフォーマンスは低迷していますが、リート市場の中では着実にパフォーマンスを残せています。アセットクラスとしてJリートに注目されている方にとっては、検討の余地があるファンドだと感じます。
資金流出入
今年に入ってから資金の流出が続いています。NISAが拡大したことに加え、低迷するJリートよりも他の投資信託などに投資資金が向かった可能性があります。ただし、日銀の政策決定会合で金利の方向性が定まれば、いずれREIT価格は落ち着く可能性があります。
評価
評価は4です。3.5~4.0という水準ではありますが、今回は4としました。60銘柄と限られたJリートの中でパフォーマンスの差を出すことは簡単ではありません。その中で、アクティブファンドとしてベンチマークを上回っています。地道に利益を積み上げることができるファンドだと言えます。長期投資向いたファンドであり、評価は4とさせていただきました。
本日は、フィデリティが運用するJリートに投資するアクティブファンドを見てきました。単年度だけを見ると、インデックスやベンチマークとほとんど変わらないように見えるかもしれませんが、長期的にはコツコツと利益を積み上げているファンドであることが分かりました。
銘柄が少ない中で、銘柄選定や細かいリバランスを行うことで積み上げが実現できています。Jリートのアクティブファンドに投資を検討している方にとっては、他のファンドと比較してもいいファンドだと思います。