米連邦準備制度理事会(FRB)が12月18日に開催したFOMCでは、予想通り0.25%の利下げが実施されました。この決定は、インフレ抑制を最優先とするFRBの慎重な姿勢を反映しています。この記事では、FRBの今回の利下げの背景と、金融市場への影響について解説します。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場予想通りに0.25%の利下げを決定しました。これで3会合連続の利下げとなりましたが、注目すべきはクリーブランド連銀のハマック総裁の動向です。今年就任したハマック総裁は唯一、利下げに反対票を投じました。彼は「利下げペースを減速すべき」との立場を一貫しており、先々の利下げに慎重な姿勢を示しています。
今回の反対票は、同総裁がインフレ抑制を優先視していることを反映したものであり、FRB全体のタカ派的スタンスを裏付ける結果とも言えます。ただし、彼の投票権は来年にはなくなるため、今後の政策決定に直接的な影響は限定的です。それでも、新任の総裁がタカ派的な見方を持つことは、講演やその他のイベントでの発言に注目を集める要因となるでしょう。
タカ派色の強い経済見通し
同日発表された経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)では、来年の政策金利を上限4.0%と見込みました。これは2回分の利下げを示唆しており、前回9月の見通し(4回分の利下げ)から大幅に修正された結果です。FRBはインフレ見通しを引き上げており、2025年末の予測が中央値で2.5%と、9月時点(2.1%)から大きく上昇しました。この引き上げは、市場にはサプライズとなりました。インフレ見通しの引き上げは、パウエル議長が「新たな段階」と表現した政策の慎重なスタンスと連動しています。金利を大幅に引き下げるよりも、現状の水準を維持しつつ経済の進展を見守る姿勢が明確に示された形です。
出所:FRB
金融市場への影響
FOMCの結果を受けて、米国債市場では幅広い年限で利回りが上昇しました。特に10年物国債利回りは一時4.5%に達し、約1カ月ぶりの高水準を記録。ニューヨーク外国為替市場では、ドル高が進行し、円相場は1ドル=154円台後半まで下落しました。これにより、米国債や米ドルの需要が強まりましたが、株式市場には逆風となりました。
青色:米10年金利、赤色:米ドル円
出所:Trading View
米株式市場では、利下げ期待が後退したことで売り圧力が高まり、ダウ平均は前日比1,123ドル安の4万2326ドルで取引を終了。これにより、ダウ平均は10日連続の下落を記録し、1974年以来の記録的な連続安となりました。S&P500種株価指数も3%安、ナスダック総合株価指数は3.6%安と、大幅な下落を見せています。特に、テスラ株が8%安と急落したほか、金融大手のゴールドマン・サックスも4%以上下げるなど、堅調だった銘柄の下げが目立ちました。金利の見通しに変化が出たため、株式市場のバリュエーションの調整が続く可能性が高そうです。
2025年以降への影響
今回のFOMCを通じて明らかになったのは、2025年以降の政策金利や次期議長選出に関わる不透明感です。現在のインフレ進展や労働市場の状況を踏まえると、2026年5月に予定されているパウエル議長の退任時までに物価目標の抑制を達成するのは難しい見込みです。そのため、次期議長の選出が市場にとって重要なテーマとなるでしょう。
また、政策金利の長期見通しも注目されます。今回、長期金利の想定水準は前回の2.9%から3.0%に引き上げられました。この水準は中立金利と呼ばれるもので、景気に過度な影響を与えない水準を意味します。中立金利の上昇は、米経済が高い金利にも耐えうる強さを持つことを示唆する一方で、金融緩和への期待を後退させる要因となります。
まとめ
今後の市場動向を見るうえで、FRBの政策スタンスとインフレ・労働市場の進展が引き続き重要な焦点となります。利下げが限定的となる環境では、債券の利回りが株式投資のリスクプレミアムを相対的に低下させる可能性があります。そのため、高い成長が見込まれる個別株への選別投資が一層求められる局面になるでしょう。
また、パウエル議長の「政策スタンスが現在大幅に緩和された」といった発言は、市場に対して過度な利下げ期待を控えるよう警告したものです。また、「場合によっては金利下げを停止する可能性がある」といったものであり、今後の利下げに対してより慎重な姿勢を示唆しています。
この発言を受け、2025年には次期議長の選出も絡み、政策の方向性が再び大きく注目される見通しになりました。投資家にとっては、改めて政策動向を見極めつつ柔軟な戦略を構築することが求められます。
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