2025年1月15日、WTI原油価格が約5カ月ぶりに80ドル台に回復しました。この背景にはOPECの堅調な需要見通しや米国の原油在庫の減少が影響しています。本記事では、原油価格上昇が株式市場に与える影響を解説し、注目すべき業種や市場の動向について紹介します。
原油価格上昇の背景
出所:Investing .com
米国市場で1月15日、原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は前日比3.28%上昇し、1バレル80.04ドルで取引を終えました。80ドル台に乗せたのは約5カ月ぶりです。石油輸出国機構(OPEC)の需要見通しが堅調だったことや、米国の原油在庫の減少が買い材料となりました。米エネルギー情報局(EIA)が発表したデータによると、米国の原油在庫は2022年4月以来の低水準となりました。また、寒波の影響で暖房用燃料の需要が増加し、供給の引き締まりが意識される状況となっています。
原油価格と株式市場の関係
原油価格と株価の関係は状況に応じて変化し、必ずしも一定ではありません。「原油高・株高」もあれば「原油高・株安」となる場合もあります。例えば、景気が好調な際には原油需要が高まり価格が上昇、同時に企業業績が伸び株価も上がることがあります。一方で、原油価格の上昇が企業のコスト増加を引き起こし、株価が下落することもあります。
2020年、新型コロナウイルスの影響で一時的に原油と株価が急落しましたが、その後の経済再開で徐々に需要が回復し、原油高と株高の状況が続きました。しかし、2022年にはロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに原油価格が急騰しましたが、地政学的リスクやインフレ懸念が影響し、株価は低迷しました。さらに、原油価格と株価の動向には投資マネーの流れも関係しています。原油高は産油国の収入増加につながり、その資金が株式市場に投じられる場合があるからです。
最近では原油価格が落ち着きを取り戻し、株価と正の相関をする動きも見られます。今後の注目点として、脱化石燃料の進展が挙げられます。再生可能エネルギーの普及が進めば原油需要が減少し、価格にも影響を与える可能性があります。また、原油価格が業種ごとに異なる影響を及ぼす点も重要です。
また、今年の原油価格は、トランプ政権の政策次第で大きく変動する可能性があります。もし関税引き上げによる貿易戦争が発生すれば、原油価格が下落するリスクが高まります。一方で、米国とイランの関係が悪化して中東の供給不安が広がれば、価格が急上昇する恐れもあります。こうした状況において、OPECプラスがどれだけ迅速かつ柔軟に対応して価格変動を抑えられるかが課題となるでしょう。
原油価格が動くときに注目される業種
原油価格が上昇すると、日本ではINPEX<1605.T>などの鉱業株が買われやすくなります。その他、ENEOS<5020.T>や出光興産<5019.T>に加え、住友商事<8053.T>や三井物産<8031.T>といった商社株も原油高の恩恵を受ける企業として買われやすくなります。一方で、燃料費の上昇が懸念される空運・陸運株や電力株は売られる傾向があります。ただし、原油安の局面ではこれらの銘柄が選ばれることが多くなります。
まとめ
原油価格の上昇は株式市場に様々な影響を与えます。産油国やエネルギー関連企業には追い風となる一方、コスト増加が懸念される業種には逆風が吹く可能性があります。再生可能エネルギーの普及が進む中、原油価格の動向はより複雑化しています。今後もエネルギー政策や地政学的リスクを注視しながら、柔軟な投資戦略を構築するようにしてください。