米労働省が7日に発表した2月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は15万1000人増加し、市場予想の16万〜17万人を下回りました。さらに、1月の数値は14万3000人から12万5000人へと下方修正されました。失業率は4.1%に上昇し、予想の4.0%を上回ったものの、依然として歴史的に低水準を維持しています。
米国 非農業部門雇用者数

出典:investing.com
平均時給は前月比0.3%増、前年同月比では4.0%上昇と、こちらも市場予想をやや下回る結果となりました。トランプ政権の関税引き上げなどの政策が景気に影響を及ぼす中、雇用や所得の堅調さが個人消費の下支え要因となる可能性があります。
一方、連邦政府職員の削減が進み、2月には約1万人が減少しました。民間企業でも人員削減が進んでおり、官民の削減計画は17万人に達し、4年7カ月ぶりの高水準となっています。移民政策の強化によって労働供給が抑制されているため、失業率の急激な上昇は限定的になると見られています。FRBのウォラー理事は、3月のFOMCでの利下げを否定し、今後の物価と雇用の動向を慎重に見極める姿勢を示しました。
NYダウは反発、しかし週間では大幅安
7日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均が反発し、前日比222ドル64セント高の4万2801ドル72セントで取引を終えました。2月の米雇用統計が市場予想を下回る結果となり、序盤は売りが優勢でしたが、週末を前に主力株の一部に買い戻しが入りました。ただし、米政権の関税政策に対する警戒感は根強く、週間では1039ドルの下落となりました。
2月の雇用統計の発表後、非農業部門の雇用者数が前月比15万1000人増と市場予想(17万人増)を下回ったことや、失業率の上昇を受け、ダウ平均は一時400ドル超下げました。しかし、短期的な売られすぎとの見方から買い戻しが強まりました。
今週のダウ平均は1200ドル以上下落し、S&P500は取引時間中に5600台まで下落し、200日移動平均を割り込む場面もありました。FRBのパウエル議長は7日の講演で、関税や移民政策、財政政策などの影響を慎重に見極めると発言。金融政策については「急ぐ必要はない」との認識を示し、市場では講演内容が予想の範囲内だったことが買い戻しを後押しした可能性があります。
為替市場の反応:ドルは大幅安、ユーロが上昇
終盤のニューヨーク外為市場では、ドルがユーロや円に対して数カ月ぶりの安値を付け、大半の通貨に対しても下落しました。米労働省が発表した2月の雇用統計が市場予想を下回ったことを受け、FRBが年内に合計78ベーシスポイント(bp)の利下げを行い、6月のFOMCで最初の利下げが実施されるとの見方が強まりました。
パウエルFRB議長は演説で、政策の影響がより明確になるまで利下げを急がない考えを示しました。これにより、ドル指数は0.4%安の103.81となり、週間では3.5%下落。これは2022年11月以来の最大の下げ幅となる見込みです。ユーロは対ドルで0.6%上昇し、一時1.0888ドルと4カ月ぶりの高値を記録しました。
今後の市場見通し
今回の雇用統計は市場予想を下回ったものの労働は安定しているとの見方もあります。しかし、投資家の多くは経済減速の懸念を払拭できておらず、今週以降の経済データに対する感応度が非常に高くなることが想定されます。労働市場の急激な悪化は見られませんが、FRBの利下げ観測が強まったことで、ドル安が進行し、株式市場も方向感を模索する展開が続きそうです。今後の焦点は、3月18日・19日開催のFOMCでのFRBの政策スタンスに移るでしょう。今回の雇用統計が市場に安心感を与える材料とはなりませんでした。
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