事業の成功は、後継者にとって「高額な相続税」という新たなリスクを生みます。特に、一代で資産を築き上げた創業オーナーにとって、自社株の評価高騰と、家族間の公平性をどう両立させるかは、避けて通れない最大の難関です。
本記事では、自社株評価が約20億円に上る60代後半の創業オーナー様(総資産約35億円)が、持株会社の活用と事業承継税制という二つの戦略を組み合わせ、約8億円超の相続税負担を軽減し、円満な株式集中を実現した事例を解説します。
[ 目次 ]
1. 相談者の課題:自社株高騰と「税・公平性」の両立
今回のオーナー様は、業績好調な製造業を創業し、自社株が20億円に達していました。後継者である長男への株式集中を望んでいましたが、推定される相続税額は約8億円超であり、同時に非後継者である長女への公平な資産配分も大きな課題でした。
1-1. 課題の核心:経営安定と相続税のジレンマ
- 経営集中: 株式を後継者(長男)に集中させ、事業の安定性を確保したい。
- 税務リスク: 株式が高騰しているため、相続税の負担が大きすぎ、納税資金の確保が困難。
- 家族の公平性: 非後継者(長女)との公平な遺産分割を実現する必要がある。
2. ファミリーオフィスによる解決策:「分離」と「税制活用」の統合戦略
私たちは、「議決権の集中」と「資産の評価圧縮」という二つの目的を達成するため、税務専門家と連携した統合的な戦略を実行しました。
2-1. 【戦略1】持株会社による「株式評価圧縮」と「議決権整理」
- 実行: オーナー様の株式の一部を、新設した持株会社へ移管しました。
- 効果: 持株会社を利用することで、将来的な相続税評価額の圧縮を図ると同時に、経営権の分散を防ぎ、長男への議決権集中をスムーズにしました。
2-2. 【戦略2】事業承継税制と役員報酬の調整
- 実行: 国が提供する事業承継税制の適用に向けた準備を推進しました。この制度により、後継者が非上場株式を相続する際の納税が猶予・免除されます。
- 補完措置: 相続評価額を安定化させるため、一時的に役員報酬の調整を行うなど、株式の評価を意図的に安定させる税務戦略も実行しました。

2-3. 【戦略3】非後継者への「不動産・信託」を活用した代償分割
長女への公平性を担保するため、現金化しにくい事業用不動産5億円を承継資産として活用しました。
- 実行: 事業用不動産について信託設定を行った後に長女に譲渡する承継設計を導入しました。これにより、長女は安定した賃料収入という経済的利益を得ることができ、長男の経営権に影響を与えずに公平な遺産分割が実現しました。
3. まとめ:事業承継の成功は「仕組み」と「税務」の統合から始まる
この事例は、自社株の高騰という「成功の裏側」に潜む8億円超の相続税リスクに対し、持株会社、事業承継税制、信託という複雑な仕組みを統合することで、円満な承継を実現した成功例です。
事業承継の成功は、単なる感情論ではなく、税務・法務・ファイナンスを統合した「仕組みの設計図」から始まります。
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