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米国の対日追加関税が発表 ── それでも日経平均が下落しなかった理由とは?

米国の対日追加関税が発表 ── それでも日経平均が下落しなかった理由とは?

25%追加関税の詳細と米国市場への影響

2025年7月7日、トランプ米大統領が日本と韓国に対して25%の追加関税を課すと正式発表し、世界の金融市場が大きく反応しました。この関税は8月1日から適用される予定で、日本に対しては既存の基本税率10%に15%が上乗せされる形となります。

米国市場では、関税による国内経済への悪影響が懸念され、ダウ工業株30種平均が前営業日比422ドル(1%)安と下落しました。一時的には600ドル超の下落も記録し、特に日韓からの輸入に依存する自動車メーカーのフォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、半導体関連のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)などが軒並み2%の下落を示しました。

ニューヨークの為替市場では、関税発表を受けて円が対ドルで一時1ドル=146円台前半と、前週末から1円以上の円安・ドル高が進行しました。韓国ウォンも対ドルで売られ、一時1ドル=1374ウォン台となり、前営業日比で17ウォン以上下落しています。

日本経済への深刻な影響と企業の対応策

対米輸出は日本の輸出総額の約2割(2024年実績で21兆2947億円)を占めており、今回の関税は幅広い業界に影響を及ぼします。特に打撃を受けるのは、対米輸出比率が高い航空機部品(輸出額の76.5%が米国向け)、建設・鉱山用機械(5割超が米国向け)、工作機械(米国向けが約2割)などです。

企業側では迅速な対応が始まっています。IHIは米国の航空機エンジンメーカーへの部品供給について、関税負担の補塡要求に備えサプライチェーンの見直しを進めています。建機大手のコマツや工作機械メーカーのDMG森精機、牧野フライス製作所も、関税分をサーチャージとして顧客に価格転嫁する方針を示しています。

経済界からは強い危機感が示されており、経済同友会の新浪剛史代表幹事は「25%の上乗せ税率は吸収できるレベルではない」と述べ、経団連の筒井義信会長も「非常に甚大な影響が出る」と指摘しています。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算では、相互関税が25%に上がった場合、日本の実質GDPが0.4%下押しされると予測しています。

日経平均の「想定内」反発とその背景

こうした厳しい状況下で、8日の東京株式市場では意外な展開が見られました。日経平均株価は前日比101円13銭(0.26%)高の3万9688円81銭で取引を終了し、反発を示しました。

この反発の背景には、トランプ大統領が前週に「30%以上に引き上げる」と示唆していたことがあります。今回発表された25%の関税率は、この示唆された水準よりも低かったため、市場では「想定内」と受け止められ、米関税政策を巡る過度な懸念が和らいだとして、景気敏感株を中心に買いが優勢となりました。

ただし、日経平均の上げ幅は一時200円を超えたものの、取引終了にかけては上場投資信託(ETF)の運用会社による資金捻出のための売りが相場の重荷となり、上昇幅は限定的となりました。

今後の展望と課題

今回の追加関税は、米国市場の動揺と円安・ウォン安を招き、日本企業に戦略の根本的な見直しを迫る深刻な影響を与えています。一方で、日本株市場は「想定内」という判断から一時的な反発を見せるなど、複雑な市場心理が浮き彫りとなりました。

日本政府は引き続き米国との交渉を続ける方針を示しており、今後の通商交渉の進展と企業の中長期的な対応策が注目されます。特に、サプライチェーンの多様化や価格転嫁戦略の成否が、日本経済の今後を左右する重要な要因となるでしょう。ここは冷静に目先の反応と中期的な反応を区別して考える必要がありそうです。

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