事業承継の準備(すでに1人の後継者を確保しているケース)を解説

事業承継の準備(すでに1人の後継者を確保しているケース)を解説

すでに1人の後継者を確保している企業の場合、事業承継の準備は、後継者不足に悩んでいる企業と比べるとスムーズに進みやすいです。しかし、後継者が決定したことで油断すれば、必要な準備を済ませられずに課題を残したまま事業承継に臨むことになります。

場合によっては、引き継ぎ後の会社運営に大きな支障が出るおそれもあるため、必要な準備は着実に進めていくようにしましょう。

そこで今回は、すでに1人の後継者を確保している企業における事業承継の準備について、注意点・課題点などを中心に解説します。

中小企業における後継者の決定状況

2017年に発表された中小企業庁の「中小企業白書」によると、経営者が69歳以下の中小企業において、後継者がすでに決まっている割合は50%に達していません。

出典:2017年中小企業白書

上記のデータからは、現代の日本において、後継者を確保できている中小企業の数がいかに少ないのかが読み取れます。

なお、ここで大切なポイントは、後継者を決定するうえで、後継者本人の了承は必要不可欠だということです。つまり、後継者本人から了承を得ていない限り、後継者が決定している状態とはいえません。

したがって、経営者としては、たとえ後継者が1人いる場合でも本人からしっかりと了承を取り付けておく必要があります。これも、事業承継に必要な準備のひとつだといえるでしょう。

後継者から了承を得るまでにかかる時間

「中小企業白書」によると、後継者の選定を始めてから了承を得るまでに1年〜3年ほどの時間をかけた中小企業が多いことがわかります。

出典:2017年中小企業白書

後継者が1人と決まっている企業では、後継者を選定する必要はないため、了承までにかかる時間は比較的短いと推測できます。

ただし、たとえ後継者を1人確保できている状態であっても、正式な了承が得られるまでに時間がかかるケースは珍しくないうえに、必ず承継を了承してもらえるとは限らない点に注意が必要です。

承継を拒否される事態も想定したうえで、時間的ゆとりを持ちながら準備を進めていくことが、成功の秘訣といえます。

後継者が1人と決定している企業における事業承継準備の課題

ここまで後継者決定前の注意点を説明しましたが、ここからは後継者決定後の事業承継に関する課題について見ていきます。

「中小企業白書」によると、後継者がすでに決定している中小企業は、特に「後継者を補佐する人材の確保」「後継者に社内で実績を積ませる」「後継者への事業内容や技術・ノウハウの引き継ぎ」などを事業承継の準備に関する課題と捉えています。

もしも上記の準備について、不足を感じていたり課題と捉えたりしている場合には、重点的に対策を行うようにしましょう。

なお、後継者を教育するには、一般的に5年〜10年ほどの期間が必要です。すでに後継者が決まっているからといって油断せず、ゆとりがある分じっくりと時間をかけて1人前の経営者に育てていくようにしましょう。

参考URL:中小企業庁「2017年中小企業白書」

後継者が1人の企業における事業承継の準備を進める流れ

最後に、後継者が1人の企業において、事業承継の準備を進めていく流れを紹介します。とはいえ、後継者が複数いる企業や後継者が未定の企業と比べても、大きな相違点はありません。

事業承継の準備は、一般的に以下のチャートに沿って進めていきます。

出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」

すでに後継者が1人決まっている企業の大半は、M&Aによる事業承継ではなく、親族内・従業員承継を選択することが想定されます。

この記事を読んで「事業承継に向けた準備の必要性の認識」ができたら、続いて「経営状況・経営課題などの把握」「事業承継に向けた経営改善」などのプロセスを着実に進めていきましょう。

将来的に後継者が事業承継するとき(ポスト事業承継)まで事業が継続されるよう、念入りに準備を進めていくことが大切です。

まとめ

すでに後継者が1人いる企業であっても、後継者本人から了承を得ていない場合、後継者が決定している状態とはいえません。したがって、経営者としては、まず本人からしっかりと了承を取り付けておきましょう。

そして後継者が決まっている企業の多くは、特に以下を課題と捉えています。

  • 後継者を補佐する人材の確保
  • 後継者に社内で実績を積ませる
  • 後継者への事業内容や技術・ノウハウの引き継ぎ

上記の準備について、不足を感じていたり課題と捉えたりしている場合には、重点的に対策を行うようにしましょう。

さらに、事業承継の準備を進める際は、以下にも注意が必要です。

  • 独断では⾏わない
  • 複数の専⾨家から意⾒を集約し判断する
  • 時間をしっかり掛けて対応する

上記を守って正しく進めていきましょう。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

メガテック銘柄大幅安!景気減速と利下げ観測で変わる投資の潮流~セクターローテーションは今後も続く?

メガテック銘柄大幅安!景気減速と利下げ観測で変わる投資の潮流~セクターローテーションは今後も続く?

7月24日のナスダック総合株価指数は前日比3.6%安となり、2022年10月以来、約1年9カ月ぶりの下落率を記 …

バイデン大統領の不出馬表明で一変する米大統領選~今後もトランプ・トレードは続くのか?

バイデン大統領の不出馬表明で一変する米大統領選~今後もトランプ・トレードは続くのか?

7月は、米大統領選の構図が大きく変わりました。民主党のバイデン大統領は11月の大統領選に出馬しないことを表明し …

ユーロ円、高値更新後の行方は? ECBの利下げ観測と米大統領選の影響

ユーロ円、高値更新後の行方は? ECBの利下げ観測と米大統領選の影響

欧州中央銀行(ECB)は18日、主要政策金利を据え置き、市場の予想通り9月までの様子見を決め込みました。市場の …

米小売売上高は予想外の堅調さ~コントロールグループが牽引

米小売売上高は予想外の堅調さ~コントロールグループが牽引

  6月結果 市場予想 前回 米小売売上高 0.00% -0.30% 0.30% 米国の6月小売売上高が7月1 …

【米国株S&P500】‌‌S&P500は今後どうなるか?警戒すべき市場経験則【7/16 マーケット見通し】

【米国株S&P500】‌‌S&P500は今後どうなるか?警戒すべき市場経験則【7/16 マーケット見通し】

米国株式のS&P500は、絶好調な状況が続いています。本日は、この状態で注目すべきS&P500 …

総合CPIは前月比でコロナ以来のマイナスに~今後のドル円に与える影響は?

総合CPIは前月比でコロナ以来のマイナスに~今後のドル円に与える影響は?

米CPI 6月結果 市場予想 総合CPI前年同月比 3.0% 3.1% 総合CPI前月比 -0.1% 0.1% …

米企業決算が本格化!注目の企業は?S&P500の予想EPSの見通しは?

米企業決算が本格化!注目の企業は?S&P500の予想EPSの見通しは?

7月10日のS&P500種株価指数は7営業日続伸となり、初めて5,600を上回りました。ハイテク株比率 …

【米国株】‌‌米国の景気減速傾向がさらに強まる中、まだ楽観論の継続で本当に大丈夫か?【7/8 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米国の景気減速傾向がさらに強まる中、まだ楽観論の継続で本当に大丈夫か?【7/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。先週1週間、ISMの製造業指数やISM非製造業指数、雇用に関する多くの経済指標が発表 …

6月の米雇用統計は失業率が4.1%に悪化~サーム・ルールのシグナルが点灯?

6月の米雇用統計は失業率が4.1%に悪化~サーム・ルールのシグナルが点灯?

 米雇用統計 6月結果 市場予想 非農業部門雇用者数 20.6万人増 19.0万人増 失業率 4.10% 4. …

米景気の先行き不安広がる〜ISM製造業・非製造業ともに50を割れ込み、週末の雇用統計に注目〜

米景気の先行き不安広がる〜ISM製造業・非製造業ともに50を割れ込み、週末の雇用統計に注目〜

ISM景気指数(製造業・非製造業)   結果 市場予想 前回 製造業 48.5 49.1 48.7 非製造業 …

【第2回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ゴールベース運用・資産を守りながら増やす資産運用戦略〜

【第2回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ゴールベース運用・資産を守りながら増やす資産運用戦略〜

富裕層にとって、資産運用は一層重要な課題です。そして、安定したリターンを確保しながらリスクを適切にコントロール …

サマーラリーと夏枯れ相場~投資家が知っておくべき夏季市場の動向と大統領選挙年の傾向

サマーラリーと夏枯れ相場~投資家が知っておくべき夏季市場の動向と大統領選挙年の傾向

サマーラリー(Summer Rally)は、株式市場におけるアノマリーの一つで、特に夏季に株価が上昇しやすい現 …

PCEデフレーターと金価格:インフレ率とFRB政策の影響を探る

PCEデフレーターと金価格:インフレ率とFRB政策の影響を探る

PCEデフレーターは、米国の個人消費支出(PCE)の価格変動を測定する重要な経済指標です。特に、食品とエネルギ …

金の輝きが世界を魅了~中央銀行の金買いと価格上昇の真相

金の輝きが世界を魅了~中央銀行の金買いと価格上昇の真相

21世紀になって、金の価格が上昇しています。2000年末から金の投資リターンは8倍強に達し、米国株や世界債券の …

【米S&P500】‌‌景気減速傾向で堅調に推移するS &P500。ただし、今週流れが変わる可能性も。【6/24 マーケット見通し】

【米S&P500】‌‌景気減速傾向で堅調に推移するS &P500。ただし、今週流れが変わる可能性も。【6/24 マーケット見通し】

先週、米経済で景気減速傾向が見られました。しかし、S&P500は堅調に推移しています。ただ、今週材料次 …

おすすめ記事