2026年5月、日本の金融市場は「内憂外患」の様相を深め、歴史的な金利急騰に見舞われています。国内債券市場では、指標となる新発10年物国債の利回りが一時2.800%に達し、1996年10月以来およそ29年半ぶりの高水準を記録しました。金利上昇の波は幅広い年限に波及しており、新発2年債利回りは1.435%と約31年ぶりの高水準、財政リスクを反映しやすい超長期債の新発30年債利回りは4.200%と過去最高水準をつける異常事態となっています。この急激な金利上昇の背景には、中東情勢の混迷に伴う世界的なインフレという「外患」と、日本の財政悪化および金融政策への懸念という「内憂」が複雑に絡み合っています。
外患:中東情勢の緊迫化と世界的な利上げ観測の再燃
現在の世界経済を揺るがしている最大の外部要因は、米国とイランの戦闘終結が見通せないなかでの中東情勢の緊迫化です。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くなかでエネルギー価格は高止まりしており、米原油先物市場ではWTI期近6月物が一時1バレル109ドル台をつけるなど原油高が長期化しています。
この原油高は世界的なインフレ圧力を再び高め、主要各国の金利を押し上げています。米国では市場予想を大幅に上回る物価指標の発表が相次ぎ、10年物国債利回りがほぼ1年ぶりの高水準となる4.60%まで上昇しました。これまでFRBに利下げを要求してきた米政権にも、インフレを踏まえた変節の兆しが見られます。市場では次期FRB議長のもとで早ければ7月にも利上げに踏み切るとの観測が浮上しており、AIブームを追い風に上昇してきた米株式相場の重荷となっています。欧州でもドイツの長期金利が15年ぶりの高さをつけるなど、主要中銀の次の一手が利上げに傾く見方が強まっており、これが日本の金利水準を引き上げる強い外圧として働いています。
内憂:拡張的財政と日銀のビハインド・ザ・カーブ懸念
日米の金利差が大きく拡大していないにもかかわらず、日本の長期金利が急ピッチで上昇している背景には、日本固有の「内憂」が存在します。日本経済は米国よりも原油高に対して脆弱であり、政府が原油高対策として大規模な財政出動へ向かうとの見方が広がっています。
とりわけ市場を大きく揺さぶっているのが、現政権の財政政策に対する警戒感です。政府は物価高対策として補正予算の編成を指示する方針であり、その財源として新たに特例公債(赤字国債)を発行する方向で検討していると報じられました。今後の成長戦略や消費税減税の議論も控えるなか、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の改善が見通せず、将来的には中期債にとどまらない国債増発の可能性が市場で強く意識されています。
さらに、政権が日銀の利上げを牽制しているとの認識も事態を深刻化させています。投資家の間では、政府の圧力により日銀のインフレ制御力が損なわれるとの懸念が強まり、日本国債の購入に極めて慎重な姿勢が広がっています。日銀の政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」への警戒から、将来的に大幅な利上げを迫られるとの見方が金利上昇に拍車をかけており、10年物期待インフレ率(BEI)も2%台が定着しています。
為替・株式市場への波及と見えない金利の「天井」
これらの複合的な要因は、為替や株式市場にも多大な影響を及ぼしています。外国為替市場では、米金利の先高観に伴う「有事のドル買い」が進み、ドルの上昇基調が続いています。市場の関心は「弱い円」の是正に集中しているものの、米通貨当局が日本の円買い介入のレートチェックなどで協力する公算は小さく、日米協調介入の可能性はほぼ消滅しており、日本政府は為替防衛において「孤軍奮闘」を強いられるとの見方が海外投機筋に広がっています。ユーロも利下げ見通しが揺さぶられるなかで買い持ち高の圧縮が進み、ドル独歩高の様相を呈しています。
国内株式市場においても、金利急騰の副作用が顕著に表れています。東京株式市場では不動産株が軒並み下落し、東証REIT指数とともにそろって年初来安値を更新しました。多額の有利子負債を抱える不動産企業にとって、金利上昇は利払い負担の増加に直結します。加えて、ホルムズ海峡封鎖によるナフサなど建設資材の供給目詰まりで、新築マンションの引き渡し遅延リスクも浮上しており、不動産開発大手5社が最高益見通しを示していても買いが入りにくい状況に陥っています。
現在の日本市場は、中東情勢に端を発する外からの世界的インフレ圧力と、内なる財政・金融政策への強い不信感という二重の困難に直面しています。国内債券市場を巡るこの「内憂外患」のスパイラルが続く限り、金利の上昇基調を止めることは容易ではありません。金利の「天井」がどこにあるのか見極められないまま、債券市場は視界不良のなかで神経質な探り合いを続けることになりそうです。
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