2026年7月16日のアジア株式市場は、半導体関連銘柄を中心に記録的な売り圧力に見舞われ、大きく揺れ動きました。前日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が下落した流れが波及し、日韓の主要株価指数は軒並み急落する事態となりました。AIブームが牽引してきたこれまでの相場展開は、大きな転換点を迎えつつあります。
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韓国市場が急落、3年半ぶりの利上げも
最も激しい値動きを見せたのは韓国市場です。16日、韓国総合株価指数(KOSPI)は一時7%を超える下落率を記録し、6800の節目を割り込む場面がありました。背景には、韓国銀行が政策金利を0.25%引き上げて2.75%とする決定を下したことがあります。これは2023年1月以来、実に3年半ぶりの利上げです。利上げ自体は市場の予想通りで株式相場への直接的な反応は限定的とされたものの、外国為替市場では韓国ウォン買い・ドル売りの動きが急速に強まり、1ドル=1480ウォン台前半をつける急変動となりました。
下落を主導したのは半導体大手SKハイニックスで、一時前日比12.53%安の182万1000ウォンまで売り込まれ、サムスン電子も一時9.66%安まで急落しました。米ナスダックに10日上場したばかりのSKハイニックスの米国預託証券(ADR)が15日に9%安で終えた流れを引き継いだ形ですが、独自の悪材料も重なりました。個別株の値動きを2倍に増幅させるレバレッジ型上場投資信託(ETF)に対する規制強化方針が伝わり、投資条件である預託金を従来の1000万ウォンから5000万ウォンへ引き上げる案が検討されていることから、流動性低下への懸念が売りに拍車をかけました。
日本市場にも波及、メモリー価格の先行き懸念
この売りは東京市場にも波及しました。16日の日経平均株価は3日ぶりに大幅反落し、前日比1915円97銭(2.79%)安の6万6835円54銭で引け、下げ幅は一時2200円を超えました。アドバンテストや東京エレクトロン、ソフトバンクグループといった値がさのAI・半導体株が指数を大きく押し下げました。
特に市場を震撼させたのが半導体メモリー関連株の総崩れです。キオクシアホールディングスは一時15%超急落し、5月下旬以来の安値をつけました。AIデータセンター向け需要で先高観が強かった半導体メモリーですが、中国大手が新規株式公開(IPO)で調達した資金で生産能力を拡大し、競争激化により価格が落ち着くとの懸念が急速に広がったためです。
ハイテク大手への資金シフトとバリュー株循環
一方、メモリー価格下落の見通しは、米国の超大型ハイテク企業群への見直し買いにつながっています。メモリー価格の下落は大規模クラウド事業者にとって設備投資負担の軽減を意味し、アップルは15日に最高値を更新しました。16日の日本市場でも、トヨタ自動車やソニーグループといった出遅れバリュー株が買われ、東証プライムの半数強の銘柄が値上がりしました。東証株価指数(TOPIX)は25日移動平均を上回って推移しており、日本株全体が悲観的な状況に陥っているわけではありません。
SKハイニックスの巨額調達とAI投資集中リスク
SKハイニックスは7月10日、海外企業による米国上場として過去最大となる約265億ドル(約4兆3000億円)を調達し、ナスダックへADRを上場させたばかりです。この資金は韓国当局が掲げるメモリー生産能力倍増の国家プロジェクトと連携し、広帯域メモリー(HBM)の増産に充てられる予定です。一部の専門家は「AI関連企業への投資が集中しつつあるリスクも見落としてはならない」と警告しており、熱狂が失速すれば資金流出がサプライチェーン全体に波及する危険性も指摘されています。
TSMCの記録的好決算が示すAIの実需
こうした暗雲の中、一筋の光明となったのが台湾積体電路製造(TSMC)の決算です。16日発表の4〜6月期決算は、売上高が前年同期比36%増の1兆2703億台湾ドル、純利益は予想を上回る77%増の7065億台湾ドルとなり、四半期として過去最高を更新しました。エヌビディアの最先端サーバー向け需要がAI向け先端半導体の業績を強力に牽引しています。
TSMCの魏哲家CEOは先月、米国での生産能力増強が進んでも米顧客中心の需要には今後数年応えきれないとの強気な見方を示しました。SKハイニックスもAI向けHBMと従来型メモリーの双方で需要拡大が続き、供給不足は2030年以降も続くと予想しています。
今回の急落は、中国企業との競争激化、韓国のレバレッジETF規制強化、AI銘柄への資金集中への警戒感など複数要因が重なった結果です。しかしTSMCの好決算が示す通り、AIインフラを支える半導体の実需は依然力強く、市場は期待先行の熱狂から実需と競争環境を冷静に見極める新たな局面に入ったといえます。

