歴代5位の下げ幅、キオクシアHDはストップ安
2026年7月17日、東京株式市場は歴史的な波乱に見舞われました。日経平均株価は午後の取引で下げ幅を急速に拡大し、一時前日比4000円を超える暴落を記録しました。終値は前日比2694円(4.0%)安の6万4141円となり、下げ幅としては歴代5位の大きさとなりました。6月25日に付けた最高値(7万2366円)からはすでに1割強の下落となっています。背景にあるのは、世界的に沸き立っていたAI産業への過度な成長期待の後退と、それに伴う高値警戒感の台頭です。
この転換点を象徴するのが、半導体大手キオクシアホールディングスの株価崩壊です。17日、同社株は制限値幅の下限(ストップ安水準)である前日比1万円(16.1%)安の5万2110円まで売り込まれました。2024年12月の上場以来、AI需要の急拡大を背景に急騰していた同社株は、6月22日の上場来高値(11万2700円)からわずか1カ月足らずで半値以下に沈みました。一時60兆円を超え国内トップだった時価総額は、約30兆円が消失し、東京エレクトロンに抜かれて国内5位に後退しています。
暴落の背景にある複数の要因
今回の急落は、複数の要因が絡み合って生じました。第一に、海外情勢と市場心理の悪化です。前日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が4%下落したことが直接の引き金となりました。台湾積体電路製造(TSMC)やASMLホールディングスの決算は市場予想を上回ったものの、期待が高すぎたために「材料出尽くし」と受け止められ、日米台の半導体株の売りを誘発しました。台湾市場ではTSMCが7%超安となっています。メタの過剰投資懸念や、中国のメモリーメーカー上場に伴う需給悪化懸念も、投資家心理を冷え込ませました。
第二に、キオクシアHD固有の悪材料です。17日朝、同社は米テキサス州の連邦地方裁判所で、米通信企業ビアサットの特許権侵害により2億2900万ドル(約371億円)の賠償を命じる評決が下されたと公表しました。同社は控訴を含め法的措置を講じる構えですが、弱気に傾く市場では格好の売り材料となりました。米投資ファンドが保有株をすべて売却したことも、半導体市況のピークアウトを示すシグナルとして警戒感を強めました。
第三に、信用取引を中心とした需給の悪化です。急騰過程で個人投資家が信用取引で買いポジションを膨らませていたため、株価急反落により追い証回避の投げ売りが発生し、売りが売りを呼ぶ連鎖に陥りました。
内需株・ディフェンシブ株へ資金シフト
この売り連鎖は半導体関連株にとどまらず、三菱UFJなどのメガバンク株や証券株にも波及しました。半導体株の損失穴埋めのため、優良銘柄を換金売りする動きが出たとみられます。ただし市場全体が完全なリスクオフに陥っているわけではありません。東証プライム市場では約4割の銘柄が上昇し、事業拡大が好感されたセブン&アイ・ホールディングスをはじめ、小売りや鉄道などの内需株・ディフェンシブ株へは資金が流入しています。AI相場を牽引してきたモメンタム投資から、出遅れていたバリュー株への資金シフトが起きていると言えるでしょう。
今後の焦点は米テック企業の決算
今後の焦点は、来週から本格化する米巨大テック企業の4〜6月期決算です。22日のアルファベットを皮切りに、23日にインテル、29日にマイクロソフトとメタの決算が予定されており、AI投資の実際の業況が注目されます。国内でも7月下旬に東京エレクトロンやキオクシアの決算が控え、好決算が確認されれば投資家心理の改善も期待されます。また10月のTOPIX定期見直しでキオクシア株の構成比率上昇が見込まれ、需給改善の可能性も残っています。
今回の急落は、過熱した市場期待が適正水準へ調整される、痛みを伴うプロセスと言えます。市場はしばらく荒い値動きが続くとみられ、投資家は熱狂の裏のリスクを再認識し、個々の企業のファンダメンタルズを冷静に見極める局面に立たされています。
