今回のテーマは「米国株の次の分岐点 AI好決算でも株は売られる? 焦点は「ガイダンス」と「信用不安」」です。
テック決算が相場を左右する理由
まず、テック企業の決算が相場を左右する理由を確認します。

左の図表は、2026年第3四半期の前年比利益で、どこが貢献しているかを示したものです。
マイクロンとNVIDIAの2社だけで、前年同期比の利益上昇額の約3分の1を占めています。さらに、この2社を含む上位10社の利益貢献は、全体の3分の2、60%以上を占める状況になっています。つまり、残り490社の寄与度は約30%に留まっていることになります。
今回の決算では、マイクロンとNVIDIAをはじめとするテック企業が、S&P500全体の利益成長を大きくけん引していることが分かります。
続いて、右の図表をご覧ください。
こちらはS&P500ではなく、世界株を示したものです。特に2027年に注目していただきたいと思います。
世界株の増益寄与は全体14ポイントの上昇に対して、IT関連企業が11ポイントとなっています。企業業績の好調が見込まれるなか、来年も引き続きテック企業が中心を占めるような業績見通しになっているということです。
今回の決算では、今期の業績が良いかどうかだけでなく、2027年の企業業績への貢献が本当に実現できるのかを見極める試金石となることから、今回は特に重要になると考えています。
AI相場の焦点は、信用不安が落ち着くか
ここ最近はテック株の不調が目立ってきています。特に、大規模な設備投資を行うハイパースケーラーと呼ばれる企業では、株価のボラティリティが高まっている印象を受けます。
まず、左の図表をご覧ください。

こちらは、投資家の警戒感を読み取れることから取り上げました。
左は機関投資家におけるオプション取引で、どれだけ警戒感が持たれているかを示しています。紫色で示したハイパースケーラーや、青色で示した半導体企業のチャートを見ると、ここ最近、チャートが下方向に動き、強気姿勢がややピークアウトしているように見えます。
実際のオプション取引額までは分かりませんが、こうした動きから、機関投資家がハイパースケーラーに対して慎重な姿勢を強めていることがうかがえます。
続いて、右の図表をご覧ください。
こちらはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の推移を示したものです。
最近話題になっているコアウィーブのCDSが大きく拡大しています。また、メタを示す青いチャートも上昇しています。すべての企業でCDSが上昇しているわけではありませんが、緩やかな上昇傾向が見られ、企業に対する信用不安が少しずつ高まっています。
今回の決算では、決算の内容だけでなく、こうした信用不安を落ち着かせることができるのかも非常に重要なポイントになると考えています。
AI信用不安を見極める、3つの確認点
それでは、今回の決算発表で、何を見極めていくべきなのでしょうか。重要となる3つのポイントをお伝えしたいと思います。

1つ目は、何といってもガイダンスです。
今回の決算では、今期の利益がどうだったかだけでなく、今後の見通しが非常に重要になります。次の四半期の売上高やクラウド事業の成長見通しが市場予想に応えているか、あるいは上回っているかが注目されます。
加えて、設備投資に対する企業の考え方も重要です。
これまでは、設備投資額の増加がポジティブなニュースとして受け止められる傾向にありました。しかし、現在は少し状況が変わっています。設備投資額を増やす場合、売上高や営業キャッシュフローの見通しが改善しており、財源が説明できれば、株価の上昇につながります。
一方、設備投資額が増えているにもかかわらず、収益化の時期や必要資金の調達方法が曖昧であれば、不安視される可能性があります。
そのため、ガイダンスにおいて設備投資額が増えたという理由だけでの判断は、単純にはできないと考えられます。
また、設備投資も投資効率の改善を目的とした減額であれば、プラスに評価される可能性があります。一方、需要の弱まりや資金面の制約による減額であれば、ネガティブな評価につながります。
設備投資が増えるか減るかだけでなく、細かく確認する必要があるというのが1つ目のポイントです。
2つ目は、不安が他社に広がるかどうかです。投資の世界では非常に重要なポイントなので、詳しくお伝えしたいと思います。
企業のガイダンスを受けて、市場がどのように反応するかは大事なポイントとなります。
決算発表の翌日から数営業日の株価の動きを見る必要があります。また、確認できるのであれば、CDSが拡大しているかどうかも重要な判断材料になります。
ここで特に大切なのは、発表した企業だけでなく、同じセクターの企業にも不安が広がっているかどうかです。
例えば、ある企業が悪い決算を発表したとしても、他社の株価や信用指標が落ち着いていれば、市場はその企業固有の問題として捉えている可能性があります。この場合、市場は冷静な状態にあると考えられます。
一方、決算を発表していない他社でも株価が下落したり、スプレッドが拡大したりする場合は、業界全体に不安が波及している可能性があります。そうなると、株価の調整が長引くことも考えられます。
そのため、個別企業の決算だけでなく、セクター全体への波及をしっかりと確認する必要があります。
具体的には、NASDAQ指数に対してどの程度弱いのかを見ることで判断できるというのが2つ目のポイントです。
3つ目は、企業ごとの強弱が分かれるかどうかです。
ハイパースケーラーは、巨大なクラウド基盤を運営する企業です。同じAI投資においても、本業の収益力や手元資金、投資回収の見通しは企業によって異なります。
当然、そうした違いによって市場の評価も分かれるべきです。例えば、納得できるガイダンスを発表した企業が相対的に強く評価され、先行きが不透明な企業の株価が弱くなるなど、強弱が明確に分かれていれば、市場が冷静に評価しているということになります。AIがまだ黎明期にあるなかで取捨選択を行っているという、非常に健全な状況だと考えています。
一方で、良い決算を発表した企業が売られ、他の企業も一緒に売られるような状況になれば、注意が必要です。市場全体の警戒感がかなり高まり、純粋なマーケットではなくなっていることを示すからです。
そうした場合には、リスク管理の観点から、リスクアセットを少し減らす必要が出てくるかもしれません。そのため、企業ごとの強弱がしっかりと表れるかどうかを確認することが重要です。
ただし、この判断は決算発表直後の1日だけで行うべきではありません。複数の企業の決算を通じて、その後数日間の反応を確認する必要がありますから、冷静に見極める必要があるでしょう。
注目決算:市場を安心させる企業はどの企業か
最後に、今後注目したい企業の決算についてです。

今週はメタ、来週はマイクロソフト、アルファベット、Amazonの決算が予定されています。今週から来週にかけての決算発表が、大事なポイントとなるでしょう。
まず、メタの決算は、日本時間10月22日の早朝に発表が予定されています。メタにおいては、広告収入がしっかりと成長しているかどうかが重要です。さらに、広告収入の成長によって、設備投資の負担をどこまで支えられるかが注目されます。
先ほどの図表で見ていただいたように、メタのCDSは拡大しています。今回の決算を受けて落ち着くかどうかが、非常に重要なポイントになります。
続いて、来週予定されているマイクロソフトです。マイクロソフトでは、Azureの成長見通しとAIの収益化が大きな注目点になると考えています。設備投資に見合うキャッシュフローが確保できているかどうかも、セットで確認する必要があります。
アルファベットについては、Google Cloudの成長が続いているか、そして採算が取れているかどうかが重要になります。加えて、AI投資を支えるだけのキャッシュフローが確保できているかも、大きな判断材料になると考えています。
Amazonについても、基本的な考え方は同じです。AWSの成長が続いているかどうかに加えて、本業でしっかりと収益を上げ、設備投資をフリーキャッシュフローで賄えているかが重要になります。
今週のメタの決算で、株価がどこまで踏ん張れるか、そしてCDSにどのような影響が出るかによって、10月の相場の展開も変わってきます。
今回の企業決算では、これまで以上に、単に好決算かどうかではなく、企業のガイダンスがどうなっているのか。フリーキャッシュフローは十分なのか。そして、設備投資の回収計画は明確なのか。こうした点をしっかり確認しなければ、マーケットの動きを見誤る可能性があります。そこはしっかりと注目していただければと思います。
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