ファミリーオフィスの運営には、ファミリーミッション・ステートメントというものがあり、個人の価値観(ビジョン)をまとめた資産管理における憲法(憲章)のようなものです。
このファミリーミッション・ステートメントは、適切な資産管理を行うためには欠かせないものですが、実際に策定をしている方はとても少ないのが現状です。今回は、なぜ、ファミリーミッション・ステートメントは欠かせないのかという理由も含めて、実際の策定までの流れを、説明していきます。
前回は、ファミリーオフィスが資産運用や資産管理で注目を集める理由をお伝えしました。合わせてご一読ください。
[ 目次 ]
歴史ある、300年を超えるようなプライベートバンクや、長い歴史を持つファミリーオフィスにおいても、ファミリーミッション・ステートメントは、必ず策定されています。
そのように聞くと、ファミリーミッション・ステートメントが、敷居が高く感じる方も多いかと思いますが、実際には、そこまで堅苦しいものではありません。個人の価値観(ビジョン)をまとめたもメモのようなものになります。将来にわたって「家族、ご自身、財産をどのようにしたいか」をご自身で考えて作成することですから、決して難しくはありません。
ただ、ファミリーオフィスを運営するにあたっては、ファミリーミッション・ステートメントは、憲法のような役割を果たすため不可欠なものです。各国々にも憲法が存在し、その下に法律があり、国家がが運営されています。同じように、ファミリーオフィスも運営を行う主体であるため、ファミリーミッション・ステートメントのような憲法が不可欠なのです。
ただし、作成に当たっては、まずご自身で考えていただくことが欠かせません。自分で考えたものでなければ、遵守するという気持ちが高まりません。資産管理の中心になる憲章ですので、やはり面倒でもご自身で作ってもらうことがポイントです。
さらに、もう1つのポイントがあります。ファミリーミッション・ステートメントの実現性を高めるために入れておくべき項目があります。
・理想としている生活水準について
・理想とする相続について
・家業の事業継承について
・子供の教育や国内外の移住などについて
理想としている生活水準とは、現状を維持したいのか、それともより豊かな生活を送りたいのかなどのみなさん独自の価値観があるでしょう。また、理想とする相続とは、何も相続対策などは行わないという方もいるでしょうし、できる限りの相続対策をして資産を子供達の残したいという方もいるでしょうし、相続財産は残さないで使い切るなど、これも様々な価値観があります。これは事業承継も同じことです。また、最近、相談が多い海外移住や海外留学など居住地を変えたいという希望がある方は、明確にこのことをファミリーミッションステートメントに反映させておかなければなりません。この4つの要素が入っていると、よりいいステートメントになります。必ず、この4要素を入れて作成してください。
まずは、先日ご相談を受けた方のご自身で最初に書き出された事例をご紹介しましょう。
現在、保有している資産を活用しながら今の生活水準を維持していく。70歳からは徐々に子供達に資産の移管を始めて円滑な相続準備を進めていく。ただし、この相続対策を行なっても、今の生活水準をできる限り維持しながら対策を実行していく。
このように、ファミリーミッション・ステートメントを作成しておくことで、自分の価値観に沿った資産管理のための指針となり、つい魔が差すような局面でも思いとどまることができ、トラブルの回避する効果も期待できます。
最後に、ファミリーミッションステートメントは、資産管理に一貫性を持たせるものです。そのため、いつでも確認できるように手元に保管しいつでも見れるようにしておくことが重要です。
ファミリーオフィスのような保守的で堅守な資産管理を行いたい方は、是非、ファミリーミッション・ステートメントを作成してください。
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