ここ最近、「ファミリーオフィス」という言葉を、新聞や雑誌記事などで見かけることも多くなってきました。そこでは、「一族の永続的な繁栄のために資産家が保有する資産を運用・保全する組織」などと解説されていることが多いようです。少し難しく感じる表現ですが、実際の「ファミリーオフィス」はどのように運営がおこなわれているか、どのようなメリットがあるのか、興味がある方も多いのではないかと思います。今回は、長年ファミリーオフィスの運営をおこなってきた経験をもとに、ファミリーオフィスが注目されている理由、メリット、どのように人にとって必要なのかなどについて解説していきます。
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ファミリーオフィスとは、一族の永続的な繁栄が目的だと定義されることが多いのですが、確かにそのような目的で運営されることもあります。ただし、実際の運営を担当してきた経験では、もう少し幅広に活用されているのが実情といえます。日本で運営されているファミリーオフィスの多くは、『富裕層の個人またはその家族が、家族の資産や個人的な事柄を専門的に管理するためのプライベートなチーム組織』です。もしくは、『家族、ご自身、資産についてどのようにしたいかという価値観をストレスなく安心して実現するための実行チーム』と説明しても良いのではないかと思います。
ちなみに、ファミリーオフィスでは、前述の家族、ご自身、資産についての価値観をまとめたものを「family mission statement(FMS)」と言います。この価値観はファミリーオフィスにおいては家族憲章に位置付けられる、とても大切なものです。このファミリーミッションステートメントを定めることで、資産運用、税務、法務、不動産などのエキスパート(専門家)により構成されたチームは、忠実にそれに従いながら資産形成、家族の利益のために富を保全するための戦略や計画の立案、海外移住やお子様の教育サポートなどを実行していくことが可能になります。
このことから分かるように、ファミリーオフィスでは「ファミリーミッションステートメント」を最も重視します。ちなみに、このファミリーミッションステートメントの下に組織され、価値観を実現するチームをファミリーオフィスと言います。
先ほど、「一族の永続的な繁栄」だけが目的ではないとお伝えしました。確かに大富豪一族であれば、これが一番の目的であると言えます。しかし、多くのファミリーを担当してきたからこそ言えることなのですが、家族の価値観は、「十家十色(本来の言葉、十人十色からの造語です。)」です。お子様の教育が全てに最優先するという価値観があるかと思えば、家業の承継が最重要だという価値観もあります。また、総資産が減らいようにしつつ、高い生活水準で生涯生活したいなど本当に様々です。最近では、家族にはある一定の資産以上は残さないということも聞く機会が多くなりました。ファミリーオフィスのメンバーには、このような多様な価値観に対応していくことが求められています。
ファミリーオフィスが必要かどうかは、家族の価値観を実現するための複雑さ、課題の多さなどによって決まります。価値観を実現するために、投資管理、ライフプランニング、税務、法務、不動産などについて多くの対策が必要な場合には、やはりファミリーオフィスを活用した方が効率的だといえます。一方で、多くの資産を保有されていても、あまり対策を講じる必要がなく、ファミリーオフィスが必要でない方もいます。
冒頭でもお伝えしましたが、最近は資産管理にファミリーオフィスを活用するという認識が徐々に広がりつつありますが、その背景には、資産運用、相続対策、事業継承などを行う際に「資産を守りながら、増やしていきたい」という方々からの支持が広がったということがあります。では、なぜ資産を守るためにはファミリーオフィスが適しているのでしょうか。繰り返しになりますが、ファミリーオフィスは、資産を管理することを目的に設立された組織です。そのため、資産を守り、増やす専門家がチームメンバーに加わりますが、そのメンバーは、運用アドバイザー、税務専門家、法務専門家、不動産専門家などで構成されます。
ここで重要なのが、依頼者とメンバーは同じ方向を向く関係でなければいけないということです。イメージをしていただきたいのですが、金融機関、不動産、保険会社などから提案を受けるミーティングに依頼者とファミリーオフィスのチームメンバーが同席したとします。その時、チームメンバーは、依頼者の横に着席し、提案者とは向かい合って座ります。それは、提案内容を依頼者と共に精査(デューデリジェンス)する立場にあるからです。そのため、現役の金融機関関係者やIFAはチームメンバーにはなれません。金融商品を販売する立場の人間がメンバーに加わると、バイアスのかかった判断や利益相反が生じる可能性があるからです。
これから分かるようにファミリーオフィスのメンバーに求められる最も重要な役割は、依頼者の経済的利益を実現することです。自分たちは販売する側ではなくゲートキーパー(番頭役)として様々な提案の中から最適解を選ぶことに徹することで、経済的メリットを依頼者に提供することが役割になります。このような「中立な役割」の必要性に対して理解が広がったことも、ファミリーオフィスを検討している人が増加している背景です。
ファミリーオフィスを設立すれば、他では投資が出来ないような素晴らしい金融商品や不動産投資に関する情報が多く手に入るわけではありません。ただし、依頼者に対して不利益が生じるリスクを徹底して回避することはできます。また、税務対策や事業承継、海外移住などについても、最も効果的で低いコストの対策を厳選して導入することができます。このように依頼者の不利益を排除するためにゲートキーパー(番頭)役を担うのがファミリーオフィスです。金融機関などからの提案を精査し、監視することで牽制を効かせます。これを続けていくことで不利益な提案を受けることも少なくなり、また、取引によるトラブルを回避することができるようになります。取引のトラブルを回避できるだけでも資産を失うリスクは大きく低下します。あとは、安定成長を実現する適切な資産配分(アセットアロケーション)を決めて運用を行えば、自ずと資産は増えていくことになります。
包括的な資産管理計画に基づいてアドバイスやサービスを提供することは、1人の専門家の能力をはるかに超えています。そのことは、ファミリーオフィスに長く関わったことがある専門家であれば熟知しています。依頼の内容に応じて、投資、税務、法務、不動産、保険、信託、移住、教育などの専門家チームによる、多面的な取り組みが必要になります。専門性がない分野を得意分野のように振る舞い仕事を請け負うことが、依頼者の不利益になることを理解しています。だからこそ、様々な分野の専門家をどれだけ招集できるか、総合力でどれだけ解決提案ができるか、それがファミリーオフィスを運営する側の責任といえます。
具体的にファミリーオフィスの設立というとどのような形があるのでしょうか。すでに事業をお持ちの方は、その事業会社にファミリーオフィス機能を付ける、つまり資産を管理するメンバーと業務委託契約などを結び運営する方法があります。また、事業と切り離す目的で資産管理会社を別に設立しファミリーオフィス機能を加えることも可能です。さらには、資産管理会社を作らず、個人名義のままファミリーオフィス型の管理を行うことも可能です。つまり、チームで管理するという体制は、個人にも法人にも適用できるということです。ただし、最終的には家族に資産を多く残したい方は、税務的な問題を勘案すると資産管理会社を設立するケースが多いのも事実です。その方の価値観次第で設立の必要性は異なってくると言えます。
ご家族の価値観を実現するために資産運用や相続対策に関して対策を立てたり、対策を実行したりするのは、ご家族自身になります。しかし、多様化する価値観を実現する対策などは専門性が必要であることから、なかなか一歩を踏み出すことが難しいのも現実です。しかし、これからの時代は、インフレ、増税、世界情勢の不安定さ、国内を取り巻く経済環境などを考えると「何も対策しないリスク」は日に日に増えています。資産を守りながら増やしていきたい方、ファミリーオフィスの活用についてご相談がある方は、是非、お気軽にご相談ください。
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