6月FOMCで年内1回の利下げ示唆。今後の見通しへの影響は? 〜CPI減速で楽観ムードもその後のFOMCをどのように捉えるべきか〜

6月FOMCで年内1回の利下げ示唆。今後の見通しへの影響は? 〜CPI減速で楽観ムードもその後のFOMCをどのように捉えるべきか〜

12日は米CPIとFOMCの発表があり、ナスダック総合株価指数とS&P500種株価指数が過去最高値を更新しました。この記事では、米CPIとFOMCの詳しい内容について解説します。

5月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回り、インフレの減速を示す

12日に発表された2024年5月の米消費者物価指数(CPI)は、インフレ圧力の緩和を示すものでした。CPIとコアCPI(食品およびエネルギーを除く)が市場予想を下回り、特にコアCPIの前年比の伸び率減少が顕著で、年初に存在したインフレ再燃への懸念は後退しました。

また、住居費・エネルギーを除くサービス価格のスーパーコアは、前月比0.04%の低下になりました。スーパーコアの低下は2021年9月以来となり、前年比は4.83%の上昇となりました。このスーパーコアの低下はインフレ減速を強く認識させるものでしたが、但し、中身をみると航空料金の低下など一時要因が強く、今後も低下傾向が続くかは不透明です。

米消費者物価指数CPI(5月)結果予想前回
CPI(前年同月比)3.30%3.40%3.40%
CPI(前月比)0.00%0.10%0.30%
コアCPI(前年同月比)3.40%3.50%3.60%
コアCPI(前月比)0.20%0.30%0.30%

今回のCPIは総じてインフレ抑制に向けた前向きな一歩を示し、金利敏感な資産や投資家に安心感を与えました。市場は、インフレ減速の兆候を歓迎し、今後の経済安定化への期待が高まっています。これを受け10年金利は一時低下、株価も大きく上昇するなど市場は結果を好感しました。

FOMCは政策金利据え置き、年内利下げは「1回」予想に

このCPIと同日、遅れること約6時間で米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が開催されました。2024年6月12日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を現行の5.25~5.5%に据え置くことを決定しました。この金利水準は2023年7月の利上げ以降維持されており、2001年以来の高金利が1年間続いています。

出典:ロイタ

そして、FOMCの経済見通しでは、年内の利下げ予想が3月から1回に減少し、24年末の政策金利見通しが4.6%から5.1%に上方修正。また、25年の利下げは1%と24年3月の見通しと利下げ幅は変わりませんが、24年の利下げ回数が減っている分だけ、25年末の水準は切り上げとなり3.9%から4.1%となりました。この背景には、パウエルFRB議長は、直前に発表されたCPIデータがインフレの顕著な減速を示していることを認めましたが、「インフレはまだ高すぎる」と指摘し、物価の安定に向けたさらなる進展を注意深く見極める必要があると強調しました。FOMC参加メンバーも同じような意見であり、今回、年内の利上げ見通しにプロット(予想)したメンバーはいないものの、総じて利下げに慎重であることがわかりました。

また、ロンガーラン(Longer run)が前回の2.6%から2.8%に上方修正されています。ロンガーランとは、米連邦準備理事会(FRB)が目指す政策金利の長期的な到達地点であり、2018年以来の水準まで予想を修正してきました。この影響は徐々に出てくる可能性があります。このようなことから総評価としてはタカ派的な内容であったかと思われます。

2024年6月 Summary of Economic Projections(SEP)

出所:FRB

FOMC participants’ assessments of appropriate monetary policy

出所:FRB

さて、FRBは物価や雇用の動向を注意深く見極めながら、利下げの時期と規模を慎重に判断する姿勢を示しています。政策金利の据え置きは7会合連続であり、FRBは物価安定と最大雇用という二つの目標に向けてバランスを取るため、経済データを綿密に監視し、金融政策の調整を慎重に行っています。

今後のFOMC日程[耕山1] 
7月30日~7月31日
9月17日~9月18日
11月6日~11月7日
12月17日~12月18日

年内の利下げ予想が1回ということは、まずは、今回のパウエル議長の文言から7月はインフレ指標で確信を持つには時間的に猶予がないため見送り、米国大統領選挙(9月18日)前にFRBが利下げを見送る可能性が高い(米国的な政治的配慮による)ため9月も見送りと考えられます。今後のFOMCの日程を考慮すると、年末は避け、利下げがあるとすれば11月に実施される可能性が最も高いでしょう。

FOMCの結果を受けて、米連邦準備理事会(FRB)が利下げ開始を慎重に判断するとの見方が広がり、NYダウは下げに転じましたが、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数とS&P500種株価指数は過去最高値を更新しました。エヌビディアを中心とする半導体株指数も高く、今後も株高が継続するかどうかに注目です。

FOMCの結果が市場に与える影響については、発表後にその情報が世界市場を一巡した後(つまり24時間)まで咀嚼するまで時間がかかるとされています。タカ派的な内容をどのように捉えるか注目していきましょう。


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