金と原油の価格動向~米金融政策と地政学リスクがもたらす影響とは

金と原油の価格動向~米金融政策と地政学リスクがもたらす影響とは

ドル建て金は最高値を更新

8月の金相場は、世界的な経済情勢や地政学リスクの影響を受けつつも堅調に推移しており、今後も上昇トレンドが続くと考えています。8月16日のニューヨーク金先物相場は続伸し、12月物は前日比45.4ドル高の2537.8ドルで取引を終了。一時は2541.8ドルまで上昇し、最高値を更新しました。これは、米国の利下げ見通し、地政学リスクの高まり、そして中央銀行の積極的な金購入といった複数の要因が、金価格を押し上げているためです。

まず、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利下げを予定していることが、金価格に大きな影響を与えています。歴史的に、金価格は米国の実質金利と逆相関の関係にあるからです。つまり、実質金利が低下すると金の魅力が高まり、価格が上昇しやすくなるのです。また、地政学リスクが高まる中、投資家は安全資産である金を求める傾向が強くなり、これも金相場を押し上げる要因となります。特に、ウクライナや中東の情勢が依然として不透明であり、加えて米大統領選後の政治的不安定さが金への需要をさらに増大させるでしょう。

さらに、中央銀行による金購入も金価格の上昇を支える重要な要素です。国際調査機関ワールドゴールドカウンシルの報告によれば、中央銀行の金購入量は今年上半期483トンと過去最大を記録しており、今後もその勢いが続くと予想されています。これに加えて、中国の個人投資家による現物需要も堅調で、特に金価格が一時的に下落した際には押し目買いが期待される状況です。

国内の金先物市場においても、NY金先物の上昇は大きな追い風となるでしょう。ただし、日銀の利上げとFRBの利下げに伴う円高ドル安の影響が懸念される部分もあります。円高が進行すると、金価格が上昇しても円建てでの価格が抑えられる可能性があるからです。しかし、日本国内の貿易赤字やデジタル赤字、対外投資の影響による円売りが続くことから、円高の進行は限定的にとどまるとの見方もあります。市場ではこれらの要因がすでにある程度織り込まれているため、急激な円高ドル安が金価格に与える影響は限定的でしょう。

原油市場は地政学リスクと11月の米大統領選に注目

原油市場においては中東情勢や11月の米大統領選に注目です。特に、トランプ前大統領が再選されるシナリオでは、原油価格が上振れするリスクが高まると考えられます。トランプ氏の強硬な外交姿勢がイランとの対立を激化させたり、中東地域の不安定化を招いたりする可能性があるからです。さらに、中東周辺の原油供給能力が停滞することやホルムズ海峡の封鎖懸念が高まれば、中期的には100ドルを超える原油価格の上昇が続く可能性もあります。

総じて、金と原油の価格は、米国の金融政策や地政学リスク、さらには各国の政策動向など、さまざまな要因によって大きく影響を受けています。これからの数か月間、これらの市場動向を注視することが、投資家にとって重要だといえそうです。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

インド株の調整と今後の展望:大型IPO、地政学リスク、トランプ氏再選でどうなる?

インド株の調整と今後の展望:大型IPO、地政学リスク、トランプ氏再選でどうなる?

今日はインド株市場の最新動向について解説します。インド株は最近、大きな調整局面に入っていますが、その背景にはど …

米国トランプ政権発足と新たな関税政策 〜製造業への影響と企業の対応策〜

米国トランプ政権発足と新たな関税政策 〜製造業への影響と企業の対応策〜

2024年11月5日に行われた米国大統領選挙で、トランプ前大統領が再び米国の第47代大統領に選出されました。同 …

【日本株・ドル円 週間見通し】 12月7日号(12月9日〜12月13日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 12月7日号(12月9日〜12月13日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

今週も米新政権の発言次第という不安定な相場が続きそう【日本株・ドル円 週間見通し】 11月30日号(12月2日〜12月6日)

今週も米新政権の発言次第という不安定な相場が続きそう【日本株・ドル円 週間見通し】 11月30日号(12月2日〜12月6日)

日本株先週の振り返り 先週(11月25日〜29日)の日経平均株価は、前週末比75.82円安の3万8,208.0 …

クリスマス商戦が本格化【日本株・ドル円 週間見通し】 11月23日号(11月25日〜11月29日)

クリスマス商戦が本格化【日本株・ドル円 週間見通し】 11月23日号(11月25日〜11月29日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

新興国株からの資金流出が止まらない理由とは?

新興国株からの資金流出が止まらない理由とは?

新興国株式市場からの資金流出が続いています。米国経済の底堅さや新興国経済の減速がその背景にあり、投資家たちは慎 …

東証REIT指数の低迷はいつ終わる?最新の見通しを解説

東証REIT指数の低迷はいつ終わる?最新の見通しを解説

東証REIT指数は今年1月に年初来高値の1844ポイントに到達しましたが、その後は上値が重く低迷が続いています …

米トリプルレッドの影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月16日号(11月18日〜11月22日)

米トリプルレッドの影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月16日号(11月18日〜11月22日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週は、 …

エヌビディアがNYダウに採用された意義と今後の展望

エヌビディアがNYダウに採用された意義と今後の展望

米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが11月1日にダウ工業株30種平均(NYダウ)の構成銘柄にエヌビ …

トランプラリーはこれからも続くのか?今後の不安材料と死角について【11/11 マーケット見通し】

トランプラリーはこれからも続くのか?今後の不安材料と死角について【11/11 マーケット見通し】

米大統領選挙にて、次期大統領にトランプ氏が選ばれました。それを受けて先週は株価が大きく上昇しています。例えば小 …

MOVE指数が示す金利リスクと投資戦略

MOVE指数が示す金利リスクと投資戦略

MOVE指数は、米国債市場の金利変動リスクを測定する重要な指標です。金利のボラティリティを示し、その上昇は市場 …

米国ビッグ・イベント通過後の影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月10日号(11月11日〜11月15日)

米国ビッグ・イベント通過後の影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月10日号(11月11日〜11月15日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

〜米大統領選挙が鍵〜【日本株・ドル円 週間見通し】 10月27日号(11月4日〜11月8日)

〜米大統領選挙が鍵〜【日本株・ドル円 週間見通し】 10月27日号(11月4日〜11月8日)

[ 目次 ]1 先週の日本株の振り返り2 今週の日本株の見通し3 来週のドル円相場の注目点 先週の日本株の振り …

トランプ氏再選でスタグフレーションの恐れが高まる?原因と対策を簡潔に解説

トランプ氏再選でスタグフレーションの恐れが高まる?原因と対策を簡潔に解説

景気が停滞する中で物価が上昇する、いわゆるスタグフレーションのリスクが高まっています。その原因と私たちにできる …

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

アメリカの長期金利が上昇を続けています。一時期は3.6%まで低下していた金利が、10月25日段階では4.27% …

おすすめ記事