FRBは19日のFOMCで政策金利を据え置き、年内2回の利下げ見通しを維持しました。同時に米国債の圧縮額を月250億ドルから50億ドルに減額する決定を行いましたが、一部の理事からは反対意見が出されました。経済見通しでは、2025年10〜12月期の成長率予測を前回の2.1%から1.7%へ下方修正。一方でPCE物価指数の上昇率は2.7%に引き上げられ、インフレ懸念が強まっています。

出所:FRB
トランプ政権の高関税政策が物価上昇を招き、景気減速とインフレが同時進行する「スタグフレーション」リスクが指摘されています。パウエル議長は「急ぐ必要はなく、経済の明確さを待つ」と発言し、利下げに慎重な姿勢を示しました。議長は「現在の金融政策は引き締め的」との見解を示しつつも、「必要に応じて適切な対応が可能」と述べ、市場の期待を高めました。
株式市場は上昇、円高が進行
19日の米株式市場ではダウ平均が一時597ドル上昇し、最終的に前日比383ドル高の4万1964ドルで取引を終えました。FOMCで年内2回の利下げ見通しが維持され、FRBの金融緩和期待が強まったことが要因です。FRBが公表した政策・経済見通し(SEP)では、19人中9人が年内2回の利下げを予測。

出所:FRB
金利先物市場では年内3回以上の利下げを見込む割合が前日の44%から50%超に上昇しました。また、4月からQTを減速させる方針も投資家心理の改善につながりました。10年物国債利回りは一時4.24%まで低下し、日米金利差の縮小観測から円買いが進行。ニューヨーク市場ではドル円が一時148円60銭台まで円高に振れました。
トランプ政権の関税政策と対象国の報復関税が世界経済の不確実性を高める中、FOMCは2会合連続で政策金利の維持を決定。年内2回の利下げ見通しは前回会合と変わりませんでしたが、投票結果からは利下げに慎重なメンバーが増えており、一枚岩ではないことが明らかになりました。背景には関税政策によるインフレ懸念があり、物価上昇を警戒するメンバーが利下げに慎重な姿勢を強めています。実質GDPの見通し引き下げと失業率上昇の予測にもかかわらず利下げ支持が広がらないのは、金融政策が経済支援よりもインフレ抑制を優先しているためと考えられます。
パウエル議長は「関税がインフレ期待を押し上げている」としつつも、「関税によるインフレは一時的」との見方を示し、市場の過度な懸念を抑える姿勢も見せました。6月のFOMCでは関税の影響がより明確になると予想され、市場が期待する6月の利下げ実現が注目されますが、ただ、FRBも利下げを急ぐ必要はないというスタンスを今回も維持していることから、金利先物市場では年内3回以上の利下げを見込む割合が増えたのはやや過剰な反応ではないかと思われます。その利下げ期待が後退した場合の反動に注意が必要です。
FOMC開催日程
- 第3回 5月6日・7日
- 第4回 6月17日・18日
- 第5回 7月29日・30日
- 第6回 9月16日・17日
- 第7回 10月28日・29日
- 第8回 12月9日・10日
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