ファミリーオフィスは、資産家の資産を包括的に管理し、世代を超えた繁栄をサポートする「究極の資産管理」として注目を集めています。しかし、その華やかなイメージの裏側には、運営上の見過ごされがちな課題やリスクが潜んでいます。

本記事では、ファミリーオフィスの運営に携わる専門家として、その「真実」を包み隠さずお伝えします。「ファミリーオフィスは本当に信頼できるのか？」という賢明な懐疑主義者である皆様の問いに、公平な視点からお答えし、その課題を乗り越えるための具体的な対策を解説します。

1. ファミリーオフィス運営に潜む3つの「落とし穴」

ファミリーオフィスの運営は、単に優秀な専門家を集めるだけでは成功しません。実は、以下の3つの「落とし穴」に陥るリスクがあります。

1-1. 運営責任者の「属人化」というリスク

ファミリーオフィスの運営業務は、特定の個人の能力や人脈に依存しがちです。もし、運営責任者の交代が必要になった場合、円滑に引き継ぎが行われなければ、ファミリーオフィス全体が機能不全に陥るリスクがあります。特定の個人の能力に依存しない、組織的な体制構築が不可欠です。

1-2. 「専門家の選び方」と「情報のバイアス」

ファミリーオフィスは、外部の専門家ネットワークを活用することで、幅広い課題に対応できます。しかし、その専門家をどう選ぶかが大きな課題となります。華々しい経歴を持つ専門家でも、実際の能力や実績は未知数な場合があります。また、専門家が特定の金融商品やサービスを販売する立場にある場合、提供される情報に「バイアス」がかかっている可能性も無視できません。

1-3. チーム内の「内部牽制」機能の欠如

ファミリーオフィスはチームで動くことが強みですが、そのチームが機能しないと意味がありません。特に、各専門家がそれぞれの分野で意見を主張し、全体の利益を考慮しない「部分最適」に陥るリスクがあります。チーム内に各専門家の意見を集約し、客観的に評価する「内部牽制機能」がなければ、最適な判断を下すことは困難です。

2. リスクを回避するための「信頼」構築戦略

これらの落とし穴を回避し、真に信頼できるファミリーオフィスを構築するためには、単なる「業務委託」ではなく、以下の戦略的なアプローチが必要です。

2-1. プロセスを「透明化」する

特定の個人に依存しない、「仕組み化された運営」を構築することが不可欠です。重要な意思決定はチーム全員で共有・記録し、いつでも過去の経緯を追えるようにしておくべきです。これにより、担当者が変わっても業務の引き継ぎが円滑に行われ、属人的なリスクを大幅に減らすことができます。

2-2. 「中立性」を最優先する

ファミリーオフィスを選ぶ際は、「特定の金融機関に属さず、中立的な立場からアドバイスを提供できるか」を最優先に確認してください。また、専門家ネットワークを保有している場合は、その専門家がどのような報酬体系で動いているのか、透明性を確認することも重要です。中立的な立場の専門家は、あなたの利益を最優先して行動するため、情報のバイアスを排除できます。

2-3. 「目的」を共有する

ファミリーオフィスのメンバーが、あなたの資産管理の目的を深く理解し、共有していることが重要です。そのためには、ファミリーミッション・ステートメントを策定し、ご家族の価値観やビジョンを明確に言語化しておくことを強く推奨します。これにより、チーム全体が同じ方向を向き、長期的な目標に向かって一貫した行動を取ることができます。

3. よくある質問（FAQ）

3-1. ファミリーオフィスに依頼する際、どんなことに注意すべきですか？

運営上の課題でも触れたように、担当者の能力が属人的になりがちな点に注意が必要です。特定の個人に依存するのではなく、組織としてのノウハウが蓄積されているか、そして複数の専門家が連携するチーム体制が確立されているかを確認することが重要です。

3-2. ファミリーオフィスは資産が少ないと利用できませんか？

伝統的なファミリーオフィスは莫大な資産が必要とされていましたが、現代のファミリーオフィスは多様な形態があります。資産規模よりも、資産管理の課題がどれだけ複雑かという点が重要です。複数の課題を抱える方は、少額からでもファミリーオフィス型のサービスを活用する価値があります。

まとめ：信頼は「仕組み」と「中立性」から生まれる

「ファミリーオフィスは本当に信頼できるのか？」という問いへの答えは、「仕組みと中立性があれば、限りなく信頼できる」です。単に「安心」を売るサービスではなく、属人的なリスクを排除する透明なプロセス、そして常にあなたの利益を最優先する中立的な立場で機能するファミリーオフィスこそ、真に信頼できるパートナーと言えます。ご自身の資産と家族の未来を守るために、ぜひ一度、中立的な専門家に相談し、これらのポイントを確認してみてください。

本記事でご紹介したファミリーオフィスの機能、そして運用上の課題や担当者の役割について、より包括的に理解を深めたい方は、こちらの完全ガイドをご覧ください。

【関連記事：【2025年最新版】ファミリーオフィスの機能とは？運用上の課題や担当者の役割も専門家が徹底解説】

監修・執筆：渋谷 豊

ファミリーオフィスドットコム株式会社　代表取締役 大学卒業後、邦銀にてキャリアをスタート。大学院を修了後、Citibank N.A.、仏銀ソシエテ・ジェネラル信託銀行、Societe Generale Bank & Trust Singapore において、プライベートバンキングおよびアセットマネジメント業務に従事。海外勤務7年間を含め、グローバルな資産管理の実務経験を有する。 帰国後は、上場企業グループ傘下の投資顧問会社の代表取締役として、富裕層および上場企業オーナー向けの資産運用助言・ファミリーオフィス業務を統括。資産運用・管理領域における実務歴は25年以上に及ぶ。 2019年設立のファミリーオフィスドットコム株式会社において、中立的立場から資産管理・運用に関する総合的支援を提供。また、2019年より、厚生労働省年金局資金運用課（GPIF 所管）の資産運用研修にて講師を務めている。慶應義塾大学大学院修了。

関連記事

【専門家が解説】ファミリーオフィスの担当者に求められる役割とは？成功を導く「ゲートキーパー」の資質

【2025年最新版】ファミリーオフィスの機能とは？運用上の課題や担当者の役割も専門家が徹底解説

無料講座（オンデマンド）