本日のテーマは、「原油高が続いた場合、S&P500は2026年末にどこまで下がりうるのか?」です。
当初、市場では中東情勢は比較的早く落ち着くのではないかと見られていました。ところが、想定以上に長期化していることもあり、原油価格は100ドルを超える水準まで上昇しています。原油高の影響を考えるうえでは、単に価格水準だけでなく、高値がどれくらいの期間続くのかが非常に重要なポイントになります。

原油高が続けば株価にマイナスになりやすいことは、多くの方が感覚的に理解されていると思います。ただ実際には、どの価格帯で、どの程度の期間続くと、企業業績や株価にどれほど影響するのかを、具体的に見ておくことが大切です。
そこで本日は、原油価格の水準と継続期間によって、2026年末時点のS&P500の利益見通しに、どの程度の影響が出るのかを算出していきます。
なお、ここでお見せするのは、あくまで原油高が続いた場合にEPSへどのような影響が生じうるかの事例です。将来の株価を予想するものではありませんので、あくまで参考としてご覧いただければと思います。
[ 目次 ]
原油高による米国S&P500のEPSへの影響予測
原油高でEPSはどれくらい下がるのか?
まず、原油高の影響がない前提でのEPS予想を確認します。ファクトセットの予想では、S&P500の予想EPSは2025年が271ドル、2026年が316ドル、2027年が367ドルとなっています。

2025年から2026年、そして2026年から2027年にかけて、いずれも16%前後の利益成長を織り込んでいる形です。こうした予想だけを見れば、株価は買い判断となることでしょう。
ただ、先週JPモルガンが出したレポートは、ファクトセットの市場予想は原油高の長期化を十分に織り込んでいない可能性があると指摘しています。
JPモルガンの資料では、原油価格の水準と継続期間ごとに、S&P500の26年予想EPSがどの程度のマイナス影響を受けるかが整理されています。期間は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、原油価格は90ドルから140ドル程度までのレンジで示されており、それぞれのケースでEPSがどれだけ下押しされるかを見ることができます。
原油価格が90ドルで1か月続いた場合、EPSへの影響は-6.4%です。一方で、140ドルという非常に高い水準が9ヶ月続いた場合には、-22.8%というかなり大きな影響になります。
原油高次第ではEPSは最大20%近く下がる可能性も
ここからは、2026年末のS&P500をどう見るかを考えていきます。

上のマトリックスはJPモルガンの資料、下の棒グラフはファクトセットの予想EPSです。ファクトセット予想の2026年EPSは316ドルですが、JPモルガンのマトリックスで示されたマイナス影響を反映させた、右上の図表をご覧ください。
原油価格が90ドルで1ヶ月続いた場合、2026年予想EPSは316ドルから295ドル程度まで低下します。140ドル以上の高値が9ヶ月続くようなケースでは、2026年予想EPSは244ドルまで下がる計算となり、当初予想から22.8%の減少となります。
こちらはあくまで2026年のEPSであり、今日のテーマは2026年末時点のS&P500がどうなるかです。株価は12ヶ月間の予想EPS×PERですから、2027年の利益見通しが重要となります。
そこで、原油高の影響を反映させた2026年EPSを起点にしつつ、企業利益が当初想定どおり2026年から2027年にかけて16%成長すると仮定して、2027年EPSを試算した図表を右下に記載しました。
たとえば原油価格が90ドルで1ヶ月高止まりして終わった場合、2027年EPSは343ドル程度となり、当初予想の366ドルには届かないものの、比較的高い水準を維持できます。一方で、140ドル以上が9ヶ月続いた場合には、2027年EPSは283ドル程度まで下がります。当初予想の367ドルを大きく下回るだけでなく、もともとの2026年予想である316ドルすら下回る水準です。
このように原油価格の水準と継続期間は、EPSに大きな影響を与えます。
では、そのEPSにPERを掛け合わせたとき、2026年末のS&P500はどうなるのか、4つのシナリオに分けて整理します。
2026年末、原油高が長引いた場合の4つのシナリオ
シナリオ(1)26年末(9ヶ月)まで原油高が継続した場合
1つ目は、最も厳しいシナリオです。原油高が今後9ヶ月、つまり年末近くまで続くケースです。この場合、原油価格が高止まりするほど2027年EPSは大きく低下します。原油価格が100ドルで9ヶ月続いた場合、足元のS&P500のPER20倍近辺が維持されたとしても、株価は6,500ポイント前後、今とほぼ同水準となります。6ヶ月程度長引き、原油価格が100ドルを超えた状態が続きそうだとなると、今の株価を超えるのはかなり厳しくなるのです。

さらに原油高が6ヶ月も続いているということは、中東情勢が長く不安定なままである可能性が高いです。原油高を受けるとPERは低下する傾向がありますから、PERが19倍、18倍と下がる可能性もでてきます。そうなれば原油価格が100ドルで推移したとしても、株価は現行水準を下回る計算になります。
したがって9ヶ月以上、100ドル超の原油高が続くようなケースは、株価にとってかなり重いシナリオだと考えておく必要があります。
また、状況が悪化して原油価格が一段と上がるようであれば、PER17倍台などの厳しい状況もワーストシナリオとして考えておく必要があるでしょう。
シナリオ(2)26年9月(6ヶ月)まで原油高が継続した場合
2つ目は、原油高が6ヶ月続くシナリオです。現行水準のPER20倍で見た場合、原油価格が100ドルを超えて6ヶ月間続かない限り、株価は今の水準を超える計算となります。たとえば6ヶ月間で100ドル程度であれば、今の6,500ポイントを上回り、そこまで大きな影響はありません。

ただ6ヶ月続くとなると、PER低下を視野に入れる必要が出てきます。PERが19倍程度であれば、原油価格が90ドルでも株価はほぼ現行水準に留まることになります。90ドル超の状態が半年近く続く場合は、上値がかなり重い展開になると言えるでしょう。
シナリオ(3)26年6月(3ヶ月)まで原油高が継続した場合
3つ目のシナリオは、原油高が今後3ヶ月程度で収まるシナリオです。PERが20倍程度であれば、130ドルを超えた状態が3ヶ月続いても、S&P500は6,500ポイント前後を維持できる計算になります。今の100ドル近辺から見ると、130ドルまで上がることはなく、原油高も3ヶ月で終わるとなると、マーケットの見通しとしては100ドル近辺でPER20倍~21倍、S&P500が6,700~7,100で比較的楽観できる余地があります。

3ヶ月程度で収束し、原油価格も100~110ドルを大きく超えないという見通しが立てば、今の株価水準にはやや割安感が出てきます。原油価格がどこで高止まるのか、3ヶ月で収まるのかは、投資判断において非常に重要となるでしょう。
シナリオ(4)26年4月(1ヶ月)まで原油高が継続した場合
最期に、トランプ大統領が述べていたような比較的早期で収束するケースです。2027年EPSへの影響はかなり限定的になります。たとえばPERが20倍のままで、原油価格が一時的に140ドルまで上昇しても、それが1ヶ月程度で終わるのであればS&P500は6,600ポイントとなり、大きなダメージにはつながりません。

「これ以上は長引かない」と判断され、原油価格が90~100ドル前後で落ち着くようであれば、6,700〜6,800ポイント程度と、今よりも200~300ポイント上回ることになります。好感してPERが21倍~23倍程度まで回復すれば、7,000ポイント台も見えてきます。今、多くの金融機関が「年末に7,000ポイントの可能性がある」と見ている背景には、原油高が100ドル程度で収まり、短期間で収束すれば、バリエーションも大きく崩れないという前提があると考えられます。
原油価格が100ドル前後まで上がっても、それが1ヶ月程度で収まるのであれば、マーケットが反転を伺う余地があります。一方で、100ドル近辺の状態が長引くようであれば、今の株価水準でも上値が重くなりますから、PERにも下押し圧力がかかりやすくなります。
足元の相場は、かなり大きな部分を中東情勢と原油価格に左右されているということです。経済指標が出てもマーケットが素直に反応しにくいのは、こうした不確実性によるものと考えられます。
今後を予測することは簡単ではありません。ただ、冷静に見ておきたいのは、原油価格が130~140ドルまで上がり、6ヶ月~9ヶ月と続かない限り、大きな影響は今のところ見えていないということです。
「原油が高いから危ない」「戦争が長引きそうだからまずい」と感覚だけで捉えるのではなく、本日ご紹介したようなマトリックスを使いながら、冷静に判断いただく材料としていただければと考え、本日はお伝えしました。ぜひ参考にしていただければと思います。
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