先日、事業承継についてご相談をいただきました。その方は、ご自身で創業した会社を経営されている72歳男性です。最近、経営者仲間から、事業承継を早めに考えた方が良いと事あるごとに言われているそうです。
その方は、
・自社株を100%自分の名義で保有
・後継者候補は2名(長男・次男)
・二人共、現在は外部の企業に努めていますが、いずれ会社を継いでもらうつもり
・会社の売上と利益は毎年安定しており、今後も当面は問題ない
ご自身では、あまり事業承継をご心配されていないとのことですが、この時点でなにかを考えるべきか、また、今から準備しておくべきことなどあれば教えて欲しいといったご要望でした。
第三者への事業承継
今回ご質問頂いた内容を踏まえ、親族内承継、親族外承継ではなく、事業承継を「第三者への事業承継=M&Aによる会社(事業)売却」という観点から考えてみたいと思います。
まずは、日本の企業の約7割が何らかの後継者問題を抱えているとの統計があるなか、ご子息が二人いらっしゃり、会社の業績も安定しているとのことで、後継者不在で悩んでいる経営者の方々から見れば羨ましい限りだと思います。
ところで、外部の企業にお勤めの二人のご子息には、跡取りとして会社を引き継いで経営していく意思があるのかどうかを既に確認されているのでしょうか?
私はM&Aのアドバイザーをしていて、跡取りとして期待されていたご子息が会社を引き継ぐことを拒絶されたので、M&Aで第三者に会社を売却した事例をたくさん見ています。
親子とはいえ、事業承継についての話合いをすることは心情的になかなか難しいようで、先延ばししているうちにお父様は高齢になってしまい、事業承継が現実的な課題になってしまっているようです。
また、実はご子息も、自分が跡継ぎになることを期待されていることで、長年悩んでいたということも少なくありません。先ずは、親子で話し合い、お互いの意思を確認することが大切だと思います。
その結果、ご子息が経営を引き継いでくれるということであれば、お父様の年齢がご高齢でもありますし、できるだけ早く会社に入社してもらい、経営者としての帝王学を学んでもらうのが良いのではないでしょうか。
このようにアドバイスをさせていただいたところ以下のようなご返答をいただきました。
相談者方の追加の質問
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まさに、ご指摘の通り、息子2人に引き継いでもらうかどうかは、まだ確認できていません。なかなか膝を付け合わせて話す機会もなく、近いうちに機会を設けたいと思います。
実は、長男は現在海外赴任中の2年目(通常の赴任期間は5〜7年だそうです)です。子供も家族もとても海外の生活を気に入っているようで、もし帰国しても今後も海外赴任の可能性がある今の会社にとても満足していると妻から聞いています。
また、次男は現在東京で勤務しており、今後も転勤の可能性も少ない会社です。子供も私立中学への入学にむけて塾に通っているようで、東京を離れる可能性は今のところ低そうです。(私の会社は北関東にあります)
今回、アドバイスを受けて改めて妻とも話をしましたが、2人とも今の環境に満足していることがわかりました。もしかしたら(あまりそう思いたくありませんが)ですが、2人とも後継者にならない可能性が時間の経過とともに高まっている、また、数年前までとは状況が変わっていること今回認識できました。
正直なところ、現状に目を背けていたことを反省しています。
さて、前置きが長くなりましたが、再度、質問をさせてください。
今後息子たちと事業を継いでくれる意志があるかについてはきちんと相談していきますが、もし第三者へ会社を売却する(M&A)の場合についての質問です。
1)いつの段階でM&Aについて相談を始めればいいのでしょうか?
2)M&Aについて相談をはじめると一気に話が進んでしまうことはないのでしょうか?
3)会社の後継者がいないということや売却を希望していることなどが、業界や取引先に知れ渡ることはないのでしょうか?
正直、世間体や相談したばかりに話が進んでいってしまうことへの心配がありまして、ご相談させていただきました。
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できるだけ早いタイミングで専門家に相談する必要性
このような丁寧なご回答をいただきましたので、更に以下のようにアドバイスをさせていただきました。
まずは、今後、ご子息方とはきちんと相談されるとのことですが、是非そうしてください。ご一族にとって非常に大切なことですので、一方的な推測や思い込みで判断せず、ご子息方とじっくりとお話し合いしてください。事業承継については、ご子息方もきっとそれぞれに、検討をされていると思います。
さて、ご質問についてご回答は以下の通りです。
1)失礼を承知で申し上げますと、社長様のご年齢を考慮しますと、できるだけ早い内に税務や会計そしてM&Aの専門家に相談される方が良いと思います。業界や貴社の特性によっては、M&Aが難しい場合もあります。
また、経済情勢等のタイミングを検討すべき場合もあるかもしれません。
そして、財務的な面からM&Aし易いように会社の体質を改善できる場合もあり、その場合には時間が必要です。そして、交渉相手となる買手候補を探すのに時間がかかることもあり得ます。
ちなみに、交渉相手が定まってから交渉成立まで、順調に行っても通常は半年から1年はかかると思ってください。
以上の理由で、交渉が始まる前に準備を整え、少しでも有利な交渉ができるように作戦を立てるためには、早い内から相談・検討を始める方が良いと思います。
2)社長様のご意向に反して、M&Aの工程が勝手に進捗することはあり得ません。
中堅・中小企業の経営者で、M&Aで会社を売却した経験を持つ方はめったにいらっしゃいません。
M&Aに際して疑問や不安を持ち、また判断に迷って、進んだり戻ったりするのは当然です。
我々M&Aのアドバイザー・仲介者は、お客様の判断を仰ぎながら、M&A交渉の工程を進めて行きます。話合いの成行きや条件に納得いかない場合には、交渉を一旦ストップしたり、場合によってはお断りすることも可能です。
ただし、M&Aには相手が存在し、交渉にも流れがありますし、秘密保持の観点からも余計な時間をかけない方が良いという定石があるのも事実です。
弊社も、お客様(経営者)との話し合いを欠かさず、疑問・不安を解消しつつ、お客様に寄り添いながら、M&A成立のゴールまでお供できるよう努めております。
3)M&Aの検討を始めるにあたり、貴社とM&Aアドバイザー・仲介者との間、及び交渉相手との間で「守秘義務契約書(秘密保持契約書)」を締結することが一般的です。
守秘義務契約の締結によって、M&A交渉に関与する人間は全て、守秘義務を負うことになり、違反した場合には損害賠償義務を負います。
しかし残念ながら、なんとなく噂になったりすることが皆無とは断言できません。
これは、交渉相手の選択や、相手側のトップに打診できているか、あるいは交渉のスピード感等、アドバイザー・仲介者の手腕に拠る場合もあります。
このような回答を申し上げたところ、前向きに検討されるとのお話になりました。
まとめ
事業承継を検討される際は、まずはご家族での話し合いを行うことからはじめてください。また、その時期は、できるだけ早いほうが様々な対策で可能になります。
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