経営者の多くは、事業承継の決断にあたって、自社の存続・成長を願うものです。しかし、自社の経営課題を正しく分析せずに不良事業を残したまま事業承継を行うと、会社の存続・成長が妨げられる要因を生み出してしまいかねません。
とはいえ、これまで経験したことのない経営者であれば、どのようにして不良事業を削減すれば良いのか悩んでしまうのも事実です。そこで今回は、まず経営課題を分析して不良事業を削減するメリット・方法などを紹介します。
その後に、成功と失敗のケースを比較しながら、中小企業において経営課題を分析し不良事業を削減する重要性を解説しますので、事業承継を検討している経営者の方はぜひご覧になってください。
[ 目次 ]
事業承継前に経営課題の分析・不良事業の削減を行うメリットは、以下のとおりです。
そもそも不良事業とは、会社の経営に悪影響を及ぼす事業のことです。多くの経営者は、不良事業を見つけると赤字転落に対する不安を抱きます。
こうした不良事業を長期間にわたり会社に残しておくと、会社の成長は妨げられて、最悪のケースでは経営破綻し廃業に追い込まれるおそれもあるのです。そのため、事業承継の検討有無に関わらず、不良事業にはなるべく速やかに対処するようにしましょう。
とはいえ、事業承継前における不良事業の削減は、特に大きな意義を持つ行為です。事業承継では、これまで長きにわたり会社を牽引してきた経営者に変わって、新たな人材が後継者として会社の経営を引き継ぎます。
ここで経営者としての経験が浅い人材を後継者にすると、不良事業を適切に処理できないケースが多く、不良事業をそのまま残してしまう可能性も高いです。
万全な状態で後継者に経営を引き継ぐためにも、事業承継前のゆとりある時期に不良事業を削減しておきましょう。
経営課題を分析する方法には、「3C分析」「SWOT分析」「5フォース分析」などがあります。3C分析とは、顧客・競合他社・自社の観点をもとに分析しつつ自社の成功要因を探る手法です。
また、SWOT分析では、強み・弱み・機会・脅威という4つの視点から、業界の内部環境を分析します。そして、5フォース分析とは、売り手・買い手・競争業者・新規参入業者・代替品という5つの競争要因をもとに、業界の外部環境を分析する手法です。
これら3つから、自社の状況に相応しい手法を採用しましょう。必要に応じて組み合わせて採用するとより効果的です。
不良事業の削減を行う方法は、大きく「再建」と「撤退」の2つに分かれます。再建が困難である場合や事業承継前などで多くの時間を確保できない場合には、撤退を選択すると良いです。
ここからは、2つのケースを比較しながら、事業承継前に経営課題の分析・不良事業の削減を行う重要性を解説します。はじめに紹介するのは、事業承継前に経営課題を正しく分析して不良事業の削減に成功したA社のケースです。
A社は従業員30名ほどと小規模ながら、堅実に売上を伸ばしてきた家電メーカーです。電気ポット・アイロン機器などの製造を手掛けていましたが、近年は低価格が魅力の海外アイロン機器の勢いに押されて、ピーク時の約50%まで売上高を落としていました。
ここで経営者は、不良事業を抱えたまま事業承継することを避けるために、経営課題の分析・不良事業の削減に着手します。不良事業を削減する重要性を理解していた経営者は、念入りに時間をかけて分析しました。
採用した手法はSWOT分析です。強みを「電気ポットの製造」、弱みを「アイロン機器の製造」、機会を「発注が海外メーカー優先の傾向にある点」、脅威を「海外メーカーの事業拡大が進行中」と分析し、弱み(不良事業)であるアイロン機器の製造から撤退すると決めました。
A社はこうした経営課題の分析・不良事業の削減により、事業承継の実施時にはピーク時を超える120%にまで売上高を上昇させています。後継者が経営を引き継いだ後も、好調を続ける電気ポットの製造に力が注がれている状況です。
次に紹介するのは、事業承継前に経営課題を正しく分析できず、不良事業の削減に失敗したB社のケースです。
B社は従業員40名を抱える家電メーカーです。主に冷蔵庫・掃除機などの製造を手掛けており、創業30年以上にわたり安定した経営を続けてきました。しかし、近年はA社と同じく海外製品の勢いに押されて、ピーク時の80%まで売上高を落としています。
そこで、B社の経営者もSWOT分析を用いて経営課題を分析しました。しかし、分析を重要視しておらず、時間をかけなかったため、実際には弱みではなかった「掃除機の製造」を弱みと誤って設定し、掃除機の製造から撤退してしまったのです。
確かに掃除機の製造にも売上高を低下させる要因があったのは事実ですが、弱みというほどではなく、撤退以外の手段(コスト削減)により強みに変えられる余地もありました。むしろ分析を怠ったために、B社の経営者は本来の弱みであった「冷蔵庫の製造」を見逃してしまったのです。
こうしてB社は強みに変えられたはずの掃除機の製造から撤退し、ピーク時の40%までさらに売上高を低下させてしまいました。そのまま後継者が経営を引き継ぎましたが、赤字の深刻化により苦しい経営を迫られています。
2つの事例の比較からも分かるとおり、会社を存続・成長させるうえで、事業承継前における経営課題の分析・不良事業の削減は非常に重要な行為です。
後継者にスムーズに事業を引き継いでさらなる会社の成長につなげられるよう、前経営者として果たすべき役割を果たし、万全の体制のもとで事業承継を迎えましょう。
なお、事業承継を進める際は、以下に注意が必要です。
上記を守って正しく進めていきましょう。
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