経営者の年齢は、事業承継の結果に大きな影響を及ぼします。一般的に、経営者の年齢は若ければ若いほど、事業承継を成功させられる可能性が高いです。そこで今回は、経営者の年齢が事業承継に及ぼす影響について解説します。
「経営者の年齢が若い頃から事業承継の準備を進めたケース」と「経営者が高齢になっても事業承継の準備を進めなかったケース」を比較しながら、年齢の若い頃から事業承継の準備を進める重要性を理解しておきましょう。
[ 目次 ]
経営者の年齢と事業承継の関係性
近年の日本では、経営者の平均年齢が上昇を続けています。帝国データバンクが発表した「全国社長年齢分析(2020年)」によると、経営者の平均年齢は29年前の1990年と比べて5.9歳上昇しているのです。
年度 | 経営者の平均年齢 |
---|---|
1990年 | 54.0歳 |
2019年 | 59.9歳 |
上記のデータは、経営者が事業承継を行うときの年齢も上昇傾向にあることを示しています。こうした傾向を受けて、中小企業庁は警鐘を鳴らしているのです。
中小企業庁が発表した「2013年版中小企業白書」によると、小規模事業者・中規模企業ともに、経営者の年齢が上昇するにつれて会社の経常利益が減少傾向に転じやすくなります。

また、経営者は、年齢が上昇するにつれて「現状を維持したい」「縮小・廃業したい」という方針を示す割合が高まることも分かっているのです。

これらのデータを踏まえると、経営者の高齢化は会社の成長を妨げる要因になり得るといえます。会社の未来を考えると、経営者は高齢になる前に、若い後継者に事業を承継するのが理想です。
参照URL:株式会社帝国データバンク「特別企画:全国社長年齢分析(2020 年)」
事業承継は後継者の年齢にも注意して進める
それでは、経営者はどのタイミングで事業承継を実施すべきなのでしょうか。これを判断するための材料のひとつに、「後継者の年齢」があります。
中小企業庁によると、「(事業承継は)ちょうど良い時期だった」と回答する後継者の割合が最も高い年齢層は40~49歳です。

つまり、後継者が40〜49歳となるタイミングに合わせて準備を進めておけば、最適な時期に事業承継を実施できます。その一方で、年齢が高齢になればなるほど、「(事業承継は)もっと早い時期の方が良かった」と回答する後継者の割合が上昇します。
特に後継者の年齢を事前に把握しやすい親族内承継・親族外承継では、上記の年齢を目安に、なるべく早いタイミングで事業承継を実施できるよう準備を進めましょう。
経営者の年齢が若い頃から事業承継の準備を進めたA社のケース
はじめに、経営者の年齢が若い頃から準備を進めて事業承継に成功したA社のケースを紹介します。経営者は40歳の頃にA社を創業し、15年あまり会社を経営してきました。
しかし、近年は体力・集中力の低下などで、若い頃のように精力的に仕事に打ち込めなくなってきたことに悩みを抱えていました。実際に直近の経常利益は減少傾向にあり、5年前と比較すると10%程度の減少が見られたのです。
そこで自分がこのまま経営を続ければA社は行き詰まってしまうと感じ、経営者は55歳の頃から事業承継の準備を進めます。中でも後継者である息子の教育には10年という歳月を費やして、経営ノウハウを念入りに伝えました。
事業承継の準備を始めてから12年後、A社の経営者は67歳で事業承継を実施します。このとき後継者である息子は42歳でした。
事業承継を終えて、新たな経営者は創業当時の前経営者のようにエネルギーに溢れており、万全の態勢で経営の舵取りを始めます。ここに念入りな後継者教育の成果も表れて、事業承継後の5年間で経常利益を承継時の120%まで増加させました。
このように、事業承継により会社を回復路線に乗せることができたのは、A社の前経営者の危機意識や会社を成長させたいという想いによるものが大きいといえます。
経営者が高齢になっても事業承継の準備を進めなかったB社のケース
次に、経営者が高齢になっても事業承継の準備を進めなかったB社のケースを紹介します。経営者は40歳の頃にB社を創業し、15年あまり会社を経営してきました。
ここで、55歳となったB社の経営者も体力・集中力の低下などで仕事に打ち込むことが困難となり、経常利益も5年前と比較して15%ほど減少してしまいます。
ところが、B社の経営者はプライドが高く自社に強い愛着を持っていたこともあり、子供への事業承継を検討せずに、自分の力で経常利益を回復させる方針を取りました。経営の舵取りを継続したところ、20年かけて経常利益の回復に成功しています。
ここで75歳となったB社の経営者はようやく事業承継を検討しますが、長年の経営者生活の苦労もたたり、事業承継の準備を始める前に心筋梗塞で急逝してしまったのです。
急逝を受けて、準備が万全でない状態で子供への事業承継が行われました。このとき後継者は55歳で、承継時にはすでに体力・集中力の衰えを感じ始めていました。
若い後継者として勢いを発揮できなかった点・後継者教育がほとんど行われなかった点を理由に、B社は前経営者が回復した経常利益を再び減少させてしまいました。その後も立て直しを図れずに、廃業しています。
このように、万全の準備でない状態で事業承継が行われ、結果的に廃業に追い込まれるほど業績を落としてしまった要因は、B社の前経営者が早いタイミングで会社の存続・成長を若い後継者に託さなかった点にあります。
まとめ
2つの事例の比較からも分かるとおり、事業承継を成功させるうえで経営者の年齢は非常に重要なポイントです。合わせて、後継者の年齢にも注意を払う必要があります。
会社の存続・成長を願うのであれば、経営者としてはなるべく年齢の若い頃から事業承継の準備を進めましょう。
とはいえ、事業承継の準備を進める際は、以下にも注意が必要です。
- 独断では⾏わない
- 複数の専⾨家から意⾒を集約し判断する
- 時間をしっかり掛けて対応する
上記を守って正しく進めていきましょう。
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