近年、資産家の資産管理に「ファミリーオフィス」の利用が増えているとされています。大々的にファミリーオフィスを運営していると公にすることはまれであるため、その数は正確には把握されていませんが、資産家の間ではひそかに認知が広まっています。その認知を高めたのは、2021年3月に破綻したアルケゴス・キャピタル・マネジメントによる多くの金融機関を巻き込んだ巨額損失事件でした。今回は、ファミリーオフィスの利用が増えている理由について見ていきたいと思います。
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以前まではほぼ認知されていなかった「ファミリーオフィス」、金融機関に勤務する人でもアセットマネジメント業務に関わっていなければ知られていませんでした。
2021年の3月下旬、「アルケゴス・キャピタル」という投資ファンドとの取引により世界の金融機関が多額の損失が発生したと報じられその名が一気に広まりました。当初、アルケゴス・キャピタルはヘッジファンドであると伝えられていましたが、後にファミリーオフィスと伝えられる機会が多くなったからです。
アルケゴス・キャピタルとは、ヘッジファンドの元祖であるタイガー・マネジメントに勤め、過去にインサイダー取引でファンド運営に関わることが出来なくなった経歴を持つビル・ファン氏が設立した彼個人用の資産管理会社です。彼自身のファミリー資産を管理、運用していたことからヘッジファンドではなく、ファミリーオフィスと報じられています。
2021年4月25日の日本経済新聞にファミリーオフィスに関する記事が掲載されています。その記事によると、ファミリーオフィスとは、「中世欧州で王の財産管理を執事が手掛けたのが起源とされる。近代的な形態としては、19世紀半ばに米国でロックフェラー家など富裕財閥が一家の資産を管理するために専門家による組織を設けた。」ひとつの富裕家の資産を管理運用するシングル型のほかに、複数の富裕家の資産管理を手掛けるマルチ型がある。(日経新聞社2021.4.25より引用)とされています。
ファミリーオフィス誕生についての諸説は色々とあるようですが、いずれにしろ富裕層が抱えるような複雑な問題を専門家により解決する個人向けの資産管理を目的とした形態をファミリーオフィスと定義しているようです。
このようなことから、アルケゴス・キャピタルもその形態は同じであることからファミリーオフィスとして伝えられるようになりました。
欧州では18世紀から19世紀にかけて、富裕層たちが自分のファミリーのための資産を運用、管理をするための個人用銀行としてプライベートバンクを設立していました。その後、その運用方針や資産管理方法があまりにも優れたものであったことから、幾つかの富裕層たちが資産をそのプライベートバンクに預けることで、現在のプライベートバンクのような世界の多くの富裕層から資産を預かる形態になっていきました。
このようにプライベートバンクが多くの富裕層に活用されてる中、徐々にファミリーオフィスが広まってきている背景については、2021年4月25日の日本経済新聞の記事で以下のように掲載がされています。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのルナ・グルックスバーグ氏によると、ファミリーオフィスが注目されている背景として、「ファミリーオフィスは銀行のためでなく家族のために働くので、富裕層向けの金融サービスを提供する金融機関の担当者を使うのに比べて利点がある。そのため、ファミリーオフィスがそのインフラとしての役割が注目されている」(日経新聞社2021.4.25より引用)と指摘しています。
このようにインフラと表現されるファミフィーオフィスの運営は、決して無理な投資をおこなうことはせず、自分たちの資産をいかに継承するかにフォーカスを当てた運営を徹底的していることが一番の特徴になります。その結果、何百年と資産を継承することを実現し、少数銘柄の株価の大幅下落で破綻したアルケゴス・キャピタルのようなアグレッシブな投機的スタイルとは真逆なものといえます。このようなことからアルケゴス・キャピタルの形態はファミリーオフィス であるとしても、本来のファミリーオフィスとは似て非なるもだと言えそうです。
また、プライベートバンクの利用者もファミリーオフィス型の資産管理を行うことが増えています。それは、プライベートバンクの担当者は金融機関に勤めていることから金融商品を販売することで利益を得る立場であるため、依頼者からすれば、利益相反が起こる可能性がある言えます。このような利益相反を避け、家族のためだけに働くファミリーオフィスのスタイルが支持され、最近は利用が広がってきている理由だと言えそうです。
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