【第4回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程②後工程:日本企業はリードを保ち成長できるのか?今後の展望〜

【第4回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程②後工程:日本企業はリードを保ち成長できるのか?今後の展望〜

半導体製造の工程は、ウェーハ上に電子回路を形成する「前工程」と、完成したウェーハを個々のチップに分割し、外部と接続するための電極や配線を備えた基板上に固定し、外部からの衝撃やホコリから保護するために樹脂などで封止して実際にプリント基板などに取り付けられるICパッケージの形にし、テストを行う「後工程」に大別されます。前回は前工程における日本企業の活躍について述べましたが、今回は後工程に焦点を当て、その各段階で日本企業が発揮する技術力と世界への貢献について探っていきます。

 後工程の流れ

出典:一般社団法人 日本半導体製造装置協会

 

出典:Semiconductor Equipment and Materials International

1. ウェーハ検査

前工程が完了したウェーハは、後工程に移される前に検査が行われます。この工程では、オランダの ASML や日立ハイテクなどが高度な検査装置を提供しています。日立ハイテクは、ウェーハ表面の欠陥や異物を高速で検出する装置を開発し、品質管理に大きく貢献しています。

2. ダイシング

検査を通過したウェーハは、次にダイシング工程へと進みます。ここでは、ウェーハを個々のチップに切り分ける作業が行われます。この工程で活躍するのが、ディスコ東京精密です。両社は高精度のダイシング装置を製造し、世界市場で高いシェアを誇ります。特にディスコは、薄型ウェーハの切断技術に強みを持ち、業界をリードしています。

 3. パッケージング

切り出されたチップは、パッケージと呼ばれる保護材で覆われ、外部との電気的な接続が可能な状態になります。イビデン、新光電気工業などの日本企業が、高度なパッケージング技術を提供しています。イビデンは、高密度実装を可能にする基板で世界トップクラスのシェアを誇り、5G 時代の高速通信を支えています。新光電気工業は、最先端のフリップチップ・パッケージで業界をリードしています。

 4. 検査

パッケージングされたチップは最終検査を経て、製品として出荷されます。この検査工程では、米国のテラダインと日本のアドバンテストが二大勢力として君臨しています。アドバンテストは、メモリやSoC(System on Chip)の検査装置で世界トップクラスのシェアを誇り、高度化する半導体の品質保証に不可欠な役割を果たしています。

後工程における日本企業の強みと課題

後工程において、日本企業は検査装置やダイシング装置、パッケージング材料などで世界をリードしています。これらの分野では、日本が得意とする精密加工技術や材料技術が存分に活かされており、高品質な製品を安定的に供給することで、世界の半導体産業を支えているのです。

また、半導体製造において新たな差別化できる領域として後工程のパッケージング技術が注目されています。半導体アナリストに中には、これからは、パッケージング技術がこれから半導体製造の中心になっていくというコメントも聞かれます。日本はこの分野を得意としリードしてますが、日本はこの戦いを勝ち抜くことができるのでしょうか。

後工程は労働集約的な性格が強く、人件費の安い東南アジア諸国に生産拠点が移転する傾向にあります。日本企業は、自動化技術の高度化などを通じて競争力を維持する必要に迫られています。また、先端パッケージの開発競争も激化しており、日本勢は米国や台湾、韓国のライバルとのさらなる技術開発競争を強いられています。

今後の展望

IoT、AI、5G など、デジタル技術の進展に伴い、半導体への需要は今後ますます高まるでしょう。後工程を担う日本企業は、この需要に応えるべく、技術革新と生産性向上に努めていく必要があります。

特に、先端パッケージ技術は重要な競争領域となっています。2.5D や 3D といった立体的な実装技術、チップレット化など、日本企業のイノベーションが期待されるところです。また、検査技術の高度化も欠かせません。アドバンテストなどは、AI 技術を活用した新たな検査手法の開発を進めており、その動向が注目されます。

加えて、日本企業は材料分野での強みを活かし、パッケージ基板や封止材などの開発にも注力していくべきでしょう。素材の革新が新たなパッケージング技術を生み出す鍵となるからです。

半導体産業はグローバルなサプライチェーンの中で成り立っており、日本企業は海外企業との連携を一層深めていく必要もあります。特に、台湾や韓国、中国の企業とは、競争と協調のバランスを取りながら、Win-Winの関係を築いていくことが求められます。

まとめ

半導体製造の後工程は、日本企業が世界に誇る「高品質・高精度」の技術力が存分に発揮される舞台です。検査装置やダイシング装置、パッケージング材料などで、日本勢は確固たる地位を築いてきました。

しかし、技術革新のスピードが加速し、競争環境も激化する中、日本企業は新たな競争優位の確立を迫られています。イノベーションを起こし続ける力、グローバルな連携を深める力が、今まさに問われているのです。

日本の半導体産業は、前工程と後工程の両面で世界に大きく貢献してきました。その実力は今も健在です。変化の時代にあって、日本企業がその力をさらに進化させ、世界の半導体産業をリードし続けていくことが大いに期待されます。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

第2次トランプ政権の政策と日米関係への影響

第2次トランプ政権の政策と日米関係への影響

2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任します。再任後、減税や規制緩和、さらに …

米国金利の影響を受ける中で取るべき戦略は?【日本株・ドル円 週間見通し】 1月11日号(1月14日〜1月17日)

米国金利の影響を受ける中で取るべき戦略は?【日本株・ドル円 週間見通し】 1月11日号(1月14日〜1月17日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

金利上昇局面で注目される債券投資~具体的な選択肢とその魅力

金利上昇局面で注目される債券投資~具体的な選択肢とその魅力

国内外で金利が上昇する中、個人向け国債や社債が再び注目を集めています。「変動10年型」個人向け国債は、金利上昇 …

【米国株 S&P500】市場関係者がほぼ強気の中で想定外のリスクとは?【1/6 マーケット見通し】

【米国株 S&P500】市場関係者がほぼ強気の中で想定外のリスクとは?【1/6 マーケット見通し】

2025年の米国株式市場について、金融機関の多くの予想が強気です。本日は、その強気のメインシナリオに想定外のこ …

為替も株価も引き続き日銀次第【日本株・ドル円 週間見通し】 12月21日号(12月23日〜12月27日)

為替も株価も引き続き日銀次第【日本株・ドル円 週間見通し】 12月21日号(12月23日〜12月27日)

日本株先週の振り返り 先週の日経平均株価は前週末比849.32円安(2.15%安)の3万8,701.90円で取 …

2024年12月の日銀金融政策決定会合 ~ 利上げ見送り、その次の一手は?

2024年12月の日銀金融政策決定会合 ~ 利上げ見送り、その次の一手は?

2024年も終わりを迎える中、注目された日銀の金融政策決定会合が12月18日から19日にかけて行われました。本 …

【FOMC】注目のFOMC開催。その後、米ドル、米国債券、金価格はどう動く?【12/16 マーケット見通し】

【FOMC】注目のFOMC開催。その後、米ドル、米国債券、金価格はどう動く?【12/16 マーケット見通し】

*当記事は、2024年12月16日に公開されたYoutube動画をベースに作成しています。 [ 目次 ]1 1 …

FRBのタカ派サプライズ!市場はどう動く?今後の展望

FRBのタカ派サプライズ!市場はどう動く?今後の展望

米連邦準備制度理事会(FRB)が12月18日に開催したFOMCでは、予想通り0.25%の利下げが実施されました …

植田日銀総裁の発言にヒントあり【日本株・ドル円 週間見通し】 12月14日号(12月16日〜12月20日)

植田日銀総裁の発言にヒントあり【日本株・ドル円 週間見通し】 12月14日号(12月16日〜12月20日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 今週の日本株見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週(1 …

米11月CPI結果から見るFOMCの利下げシナリオ

米11月CPI結果から見るFOMCの利下げシナリオ

[ 目次 ]1 米11月CPI、予想通りの結果で安心感広がる2 住居費インフレの鈍化と「スーパーコア」への注目 …

年末に向けて米株高が続く。市場が動く次の材料は?【12/9 マーケット見通し】

年末に向けて米株高が続く。市場が動く次の材料は?【12/9 マーケット見通し】

先週も米国では様々な市場材料がありましたが、株価上昇が続いています。本日は、今後どのような材料が市場の転換点と …

インド株の調整と今後の展望:大型IPO、地政学リスク、トランプ氏再選でどうなる?

インド株の調整と今後の展望:大型IPO、地政学リスク、トランプ氏再選でどうなる?

今日はインド株市場の最新動向について解説します。インド株は最近、大きな調整局面に入っていますが、その背景にはど …

米国トランプ政権発足と新たな関税政策 〜製造業への影響と企業の対応策〜

米国トランプ政権発足と新たな関税政策 〜製造業への影響と企業の対応策〜

2024年11月5日に行われた米国大統領選挙で、トランプ前大統領が再び米国の第47代大統領に選出されました。同 …

【日本株・ドル円 週間見通し】 12月7日号(12月9日〜12月13日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 12月7日号(12月9日〜12月13日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

今週も米新政権の発言次第という不安定な相場が続きそう【日本株・ドル円 週間見通し】 11月30日号(12月2日〜12月6日)

今週も米新政権の発言次第という不安定な相場が続きそう【日本株・ドル円 週間見通し】 11月30日号(12月2日〜12月6日)

日本株先週の振り返り 先週(11月25日〜29日)の日経平均株価は、前週末比75.82円安の3万8,208.0 …

おすすめ記事