雇用統計 | 5月結果 | 予想 | 前回(4月) |
非農業部門雇用者数(前月比) | 27.2万人 | 19.0万人 | 16.5万人 (修正前17.5万人) |
失業率 | 4.0% | 3.9% | 3.9% |
平均時給(前月比) | 0.4% | 0.3% | 0.2% |
平均時給(前年同月比) | 4.1% | 3.9% | 4.0% (修正前3.9%) |
6月7日に発表された注目の5月の米国雇用統計は、非農業部門の雇用者数が27.2万人増加と、市場予想19万人を大きく上回る結果となりました。平均時給も前月比0.4%、前年同月比4.1%の上昇を記録し、こちらも予想を上回る内容でした。
一方、失業率は4.0%と、2022年1月以来の高水準になりましたが、全体としては米国の雇用市場の力強さを示す内容だったと言えるでしょう。
今週は、6月3日の米雇用動態調査(JOLTS)、ADP全米雇用リポートの雇用者数、共に市場予想を下回り、また、2023年10~12月期の米雇用賃金統計(QCEW)では、「そもそも23年の米労働市場はさほど強くなかった」との見方が示されていたこともあり、事前予想では雇用者数は伸びず、結果次第ではFRBの利下げペースが想定よりも速くなる可能性が高いと意識されていました。そのため、今回の結果は、市場にとってはややサプライズの結果となりました。
ただし、米雇用統計については注意が必要です。以前より事業所調査と家計調査にギャップがあり、労働市場の実情を示していないのではないかとの声があります。そのため、今回の結果を受けて米雇用は確実に強い、という結論に市場は至ってないと思われます。とはいえ、今後の見通しを考える上では足元の市場反応は不可欠です。市場反応を見ていきましょう。
雇用統計の結果を受けて、金融市場では大きな反応が見られました。中でも目立ったのが、金(ゴールド)価格の大幅下落です。ニューヨーク金先物相場の中心となる8月物は、1トロイオンス2325.0ドルで取引を終えました。これは前日比2.8%安という大きな下げ幅です。
金価格下落の背景には、米国の利下げ時期が先送りされるとの観測が広がったことがあります。雇用統計の発表を受けて、シティグループは7月から9月に、JPモルガンは7月から11月に、それぞれ利下げ開始時期の予想を後ずれさせました。金は利回りのない資産であるため、金利上昇は金の投資魅力を低下させる要因となります。今回の雇用統計を受けて長期金利が急上昇したことで、金への売り圧力が高まったのです。
さらに、中国人民銀行が5月に金の追加購入を行わなかったとの統計も、金価格の下落に拍車をかけました。中国は世界有数の金の購入国であり、その需要動向は金価格に大きな影響を与えます。中国の金購入が停滞したことで、金の需要に対する警戒感が広がったのです。
雇用統計を受けて、来週は米国のインフレ指標と日米の金融政策に市場の関心が集中しそうです。
6月12日に発表される5月の米国消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコアベースで前月比0.3%上昇すると予想されています。これは4月と同じ伸び率です。4月のCPIは市場予想を下回り、インフレ圧力の後退を示唆する内容でしたが、5月の結果はどうなるでしょうか。インフレの動向は利下げの判断材料となるだけに、市場の注目度は非常に高くなっています。
また、来週は日米両国の中央銀行による重要な金融政策に注目です。米国では6月11日から12日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、政策金利の発表と金利見通し(ドットチャート)の更新が行われます。また、パウエルFRB議長による記者会見も予定されており、金融政策の先行きに関する重要な見解が示されるでしょう。
一方、日本でも6月14日に日銀の金融政策決定会合の結果が公表されます。現在の金融緩和策を継続するとの見方が大勢ですが、物価上昇を背景に金融政策の修正を求める声も根強くあります。日銀の判断は為替市場に大きな影響を与える可能性があるだけに、投資家の注目を集めるでしょう。
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