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【ご相談】金・銀価格が下落していますが、このまま保有を続けるべきでしょうか?~保守的な資産配分における金・銀の位置付けとは~

【ご相談】金・銀価格が下落していますが、このまま保有を続けるべきでしょうか?~保守的な資産配分における金・銀の位置付けとは~

Q.ご質問

私は株式や債券だけに偏らない資産運用を心掛けており、ポートフォリオの安定性向上を目的として金や銀を一定割合組み入れています。

もちろん値上がり益だけを期待しているわけではなく、インフレや金融市場の混乱時に備えた分散投資の一真として保有しています。しかし、ここ最近は金や銀の価格がやや軟調に推移しており、ニュースなどでも以前ほど強気な見方を見かけなくなりました。

長期的には必要な資産だと考えているものの、このまま保有を続けるべきなのか、それとも見直しを検討すべきなのか少し迷っています。

ファミリーオフィスでは、ポートフォリオの保守的な資産配分として保有している金や銀を、現在どのように評価しているのでしょうか。また、今後の位置付けはどのように考えればよいのでしょうか。

A.回答

結論から申し上げると、当社では金や銀を「短期的な値上がりを狙う投資対象」ではなく、「ポートフォリオ全体の安定性を高めるための実物資産」として位置付けています。

足元では、金価格が1月に記録した約25%の上昇分をほぼ帳消しにし、銀価格も1月の上昇分の約65%を帳消しにするなど、明確な価格調整(一時的な休止)が見られます。しかし、中長期的な視点では依然として注目すべき環境が続いていると考えています。

特に、世界的な財政赤字の拡大、中央銀行による歴史的なペースでの金購入、実質金利低下の可能性など、貴金属価格を支える構造的な要因は大きく変化していません。短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、まずは保有目的が変わっていないかを確認することが重要です。

なぜ今も金や銀を保有する意義があるのか

金や銀の価格を考える上で重要なのは、目先の値動きではなく世界経済の大きな流れです。現在のマクロ環境を見ると、貴金属にとって追い風となり得る要素が複数存在しています。

  • 実質金利低下の可能性:実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた実質的な収益率のことです。金や銀は利息を生まないため、実質金利が低下する(現金や債券を持つ魅力が下がる)局面で、購買力を維持できる資産として相対的な魅力が高まります。今後、景気減速や巨額の政府債務負担を背景に実質金利が低下へ向かう場合、貴金属市場にとって強力な支援材料となります。
  • 世界的な財政赤字の拡大:米国をはじめ主要国では記録的な財政赤字が続いています。歴史的に、法定通貨(ペーパーマネー)の大量増刷による価値の希薄化や政府債務の増加が意識される局面では、埋蔵量に限りがある「価値保存手段」としての実物資産へ資金が流入する傾向があります。
  • 市場の関心低下(逆張りの好機):今年年初には最も人気のある投資対象の一つだった金や銀ですが、足元で投資家心理は陶酔状態から「ほぼ完全な無関心」へと劇的に変化しています。構造的に支えられた資産が市場で無視されている時こそ、長期投資家にとってはしばしば最高の投資機会(エントリーポイント)となります。

金市場を支える中央銀行需要の「実態」

近年の金市場の下値を最も強固に支えているのが、世界の中央銀行による継続的な購入行動です。直近の2026年4月データを見ても、世界の中央銀行は17トンの金を買い越しており、3月に一時的な売却(30トン売却)が見られたものの、すぐに2ヶ月連続の購入へと転換しています。

特に注目すべきは、特定の中央銀行への「需要の集中」と「価格下落局面での押し目買いスタンス」です。

  • ポーランド: 4月に14トンを追加購入し、年初からの合計は45トン増。金準備高は595トンに達し、公式総準備高の約30%という記録的な割合を占めています。
  • 中国: 4月に8トンを追加し、18ヶ月連続の購入を記録。公式の金準備高は過去最高の2,322トン(総準備高の約9%)に達しています。
  • 東欧・アジア圏の主導: 過去36ヶ月間、これら東欧およびアジアの中央銀行は平均して月間約24トンの金を購入しており、世界需要の大部分を担っています。2022年以降は、中国、ポーランド、インド、イラク、チェコ共和国の5カ国が事実上、中央銀行の購入量のすべてを占めています。

世界金評議会(WGC)の2025年調査では、回答した中央銀行の95%が「今後12ヶ月間で世界の中央銀行の金準備高が増加する」と回答(前年の81%から上昇)しており、国レベルの旺盛な需要が金価格の構造的な床(フロア)を形成しています。

株式市場との比較で見る金の位置付け

近年は米国株が大きく上昇した一方で、金の相対価値は歴史的な平均値から見て割安な水準に据え置かれています。

テクニカル指標の代わりに「S&P500指数と金価格の比率」を見ると、この比率は長期平均である0.70を大きく上回って推移しています。これは株式に対して金が相対的に過小評価されていることを意味します。

過去のデータにおいて、この比率が同様の低下パターン(金の割安修正)をたどったのは以下の3つの時期です。

  1. 1929年の大暴落後
  2. 1970年代のインフレ(スタグフレーション)期
  3. 2000年のドットコムバブル崩壊後

これらはいずれも、その後に金価格が株式市場を長期にわたって大幅に上回るパフォーマンス(アウトパフォーム)を示す時期の先駆けとなりました。資産の一部を実物資産へ分散する考え方には、歴史的なデータからも高い合理性があるとも言えます。

銀市場に見られる深刻な構造的供給不足

銀(シルバー)は、金以上のスピードで現物の需給逼迫が進んでいる資産です。

シルバー・インスティテュートのデータから、具体的な数字を見ると危ういほどの需給ギャップが浮かび上がります。

  • 10年間の生産停滞: 世界の銀鉱山生産量は2010年以降、年間8億〜9億オンスの間で完全に停滞しています。2026年も鉱山会社が生産計画を縮小したため、総供給量は2%減少する予測です。
  • 6年連続の構造的不足: 2026年の世界の銀の供給不足は、前年比15%増の4,630万トロイオンスに拡大すると予測されています。
  • 既存在庫の激減: 2021年以降、世界の銀在庫は累計で7億6,200万トロイオンス減少しました。これは世界の年間鉱山生産量の約90%に相当します。つまり、銀市場はわずか5年間で、蓄積されてきた在庫から「ほぼ1年分の供給量」を食いつぶしたことになり、現物引き渡しの逼迫リスクが極めて高くなっています。

短期的には地政学的衝突(イラン情勢など)に伴う世界成長の鈍化懸念から、工業用加工需要が前年比3%減と4年ぶりの低水準に落ち込むリスクがあるものの、一方でインフレ対策としてのコイン・地金の小売需要は前年比18%増と急増しています。さらに長期的には、脱炭素(太陽光パネルやEV)およびデジタル化(AI半導体)に銀は不可欠であり、この供給制約は価格への強いレバレッジとなり得ます。

まとめ

金・銀ともに短期的には価格変動が続く可能性があります。しかし、中央銀行による歴史的な金購入、世界的な財政赤字の拡大、実質金利低下の可能性、そして銀市場の「5年で1年分の在庫を消費した」という猛烈な供給制約など、中長期のファンダメンタルズは極めて良好です。

当社では、保守的な資産配分を構築する上で、金や銀は「株式の代替」ではなく、「株式や債券だけではカバーできないリスク(通貨価値の低下、構造的インフレ)に備えるための保険」のような存在だと考えています。

現在の価格調整局面を「保有意義が失われた」と性急に判断する必要はありません。むしろ、市場の熱狂が冷め、投資家が一時的に無関心になっている今だからこそ、「歴史的な投資のセオリーに倣い、長期的な役割と投資仮説に基づく魅力的なエントリーポイント(仕込み時)が訪れている」と考えるアプローチには、客観的データから見ても相応の合理性があると言えそうです。

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