半導体製造の工程は、ウェーハ上に電子回路を形成する「前工程」と、完成したウェーハを個々のチップに分割し、外部と接続するための電極や配線を備えた基板上に固定し、外部からの衝撃やホコリから保護するために樹脂などで封止して実際にプリント基板などに取り付けられるICパッケージの形にし、テストを行う「後工程」に大別されます。前回は前工程における日本企業の活躍について述べましたが、今回は後工程に焦点を当て、その各段階で日本企業が発揮する技術力と世界への貢献について探っていきます。
前工程が完了したウェーハは、後工程に移される前に検査が行われます。この工程では、オランダの ASML や日立ハイテクなどが高度な検査装置を提供しています。日立ハイテクは、ウェーハ表面の欠陥や異物を高速で検出する装置を開発し、品質管理に大きく貢献しています。
検査を通過したウェーハは、次にダイシング工程へと進みます。ここでは、ウェーハを個々のチップに切り分ける作業が行われます。この工程で活躍するのが、ディスコと東京精密です。両社は高精度のダイシング装置を製造し、世界市場で高いシェアを誇ります。特にディスコは、薄型ウェーハの切断技術に強みを持ち、業界をリードしています。
切り出されたチップは、パッケージと呼ばれる保護材で覆われ、外部との電気的な接続が可能な状態になります。イビデン、新光電気工業などの日本企業が、高度なパッケージング技術を提供しています。イビデンは、高密度実装を可能にする基板で世界トップクラスのシェアを誇り、5G 時代の高速通信を支えています。新光電気工業は、最先端のフリップチップ・パッケージで業界をリードしています。
パッケージングされたチップは最終検査を経て、製品として出荷されます。この検査工程では、米国のテラダインと日本のアドバンテストが二大勢力として君臨しています。アドバンテストは、メモリやSoC(System on Chip)の検査装置で世界トップクラスのシェアを誇り、高度化する半導体の品質保証に不可欠な役割を果たしています。
後工程において、日本企業は検査装置やダイシング装置、パッケージング材料などで世界をリードしています。これらの分野では、日本が得意とする精密加工技術や材料技術が存分に活かされており、高品質な製品を安定的に供給することで、世界の半導体産業を支えているのです。
また、半導体製造において新たな差別化できる領域として後工程のパッケージング技術が注目されています。半導体アナリストに中には、これからは、パッケージング技術がこれから半導体製造の中心になっていくというコメントも聞かれます。日本はこの分野を得意としリードしてますが、日本はこの戦いを勝ち抜くことができるのでしょうか。
後工程は労働集約的な性格が強く、人件費の安い東南アジア諸国に生産拠点が移転する傾向にあります。日本企業は、自動化技術の高度化などを通じて競争力を維持する必要に迫られています。また、先端パッケージの開発競争も激化しており、日本勢は米国や台湾、韓国のライバルとのさらなる技術開発競争を強いられています。
IoT、AI、5G など、デジタル技術の進展に伴い、半導体への需要は今後ますます高まるでしょう。後工程を担う日本企業は、この需要に応えるべく、技術革新と生産性向上に努めていく必要があります。
特に、先端パッケージ技術は重要な競争領域となっています。2.5D や 3D といった立体的な実装技術、チップレット化など、日本企業のイノベーションが期待されるところです。また、検査技術の高度化も欠かせません。アドバンテストなどは、AI 技術を活用した新たな検査手法の開発を進めており、その動向が注目されます。
加えて、日本企業は材料分野での強みを活かし、パッケージ基板や封止材などの開発にも注力していくべきでしょう。素材の革新が新たなパッケージング技術を生み出す鍵となるからです。
半導体産業はグローバルなサプライチェーンの中で成り立っており、日本企業は海外企業との連携を一層深めていく必要もあります。特に、台湾や韓国、中国の企業とは、競争と協調のバランスを取りながら、Win-Winの関係を築いていくことが求められます。
半導体製造の後工程は、日本企業が世界に誇る「高品質・高精度」の技術力が存分に発揮される舞台です。検査装置やダイシング装置、パッケージング材料などで、日本勢は確固たる地位を築いてきました。
しかし、技術革新のスピードが加速し、競争環境も激化する中、日本企業は新たな競争優位の確立を迫られています。イノベーションを起こし続ける力、グローバルな連携を深める力が、今まさに問われているのです。
日本の半導体産業は、前工程と後工程の両面で世界に大きく貢献してきました。その実力は今も健在です。変化の時代にあって、日本企業がその力をさらに進化させ、世界の半導体産業をリードし続けていくことが大いに期待されます。
ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。
[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週は、 …
米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが11月1日にダウ工業株30種平均(NYダウ)の構成銘柄にエヌビ …
米大統領選挙にて、次期大統領にトランプ氏が選ばれました。それを受けて先週は株価が大きく上昇しています。例えば小 …
MOVE指数は、米国債市場の金利変動リスクを測定する重要な指標です。金利のボラティリティを示し、その上昇は市場 …
[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …
[ 目次 ]1 先週の日本株の振り返り2 今週の日本株の見通し3 来週のドル円相場の注目点 先週の日本株の振り …
景気が停滞する中で物価が上昇する、いわゆるスタグフレーションのリスクが高まっています。その原因と私たちにできる …
アメリカの長期金利が上昇を続けています。一時期は3.6%まで低下していた金利が、10月25日段階では4.27% …
金(ゴールド)と銀がともに高値を更新し、市場の注目を集めています。この記事では、金と銀の価格上昇を支える要因や …
[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 10月2 …
[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 10月1 …
世界が注目するBRICSサミットの概要 2024年10月22日から24日まで、ロシアのカザンでBRICSサミッ …
中国株市場が再び脚光を浴びています。国慶節連休が明けた直後から上海総合指数は連日上昇し、10月8日には上海総合 …
[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の株 …
米大統領選まで1ヶ月を切りました。2024年11月5日に投開票、2025年1月20日に就任式と約3ヶ月後には新 …
資産管理に正しい見積費用はあるのでしょうか? 例えば、資産運用の金融商品だけみても相当数あり、手数料は個別に異 …
ファミリーオフィスをつくりファミリーの資産管理を永続的に成長させる。 これがファミリーオフィスの究極的な目的で …
ファミリーオフィスとは、欧州や米国では広く認知されており、資産管理においてはとても優れたシステムだと周知されて …
ファミリーオフィスに依頼をすると費用が高いのではないかといことを良く質問されます。欧米からスタートしたファミリ …