ファミリーオフィスの代表的な役割は、資産家一族の資産を保全・運用・管理することです。しかし、その機能は単なる資産管理に留まりません。その本質は、資産家が抱えるあらゆる課題に対し、包括的なソリューションを提供することにあります。

しかし、その運営には専門的な知見やノウハウが不可欠であり、適切な体制を構築しなければ、予期せぬ課題に直面するリスクも潜んでいます。

本記事では、ファミリーオフィスが果たす多岐にわたる機能と、その運用における課題、そして担当者に求められる役割について、2025年の最新動向も踏まえて専門家が徹底解説します。

1. ファミリーオフィスが果たす7つの主要機能

ファミリーオフィスは、資産家の資産管理を包括的にサポートするため、多岐にわたる機能を提供します。その主要な機能は以下の7つに分類できます。

1. 投資に関するアドバイス: 金融資産や不動産に関する投資戦略を策定し、金融機関の提案を精査・監視することで、顧客の資産を守る役割も果たします。
2. 事業承継・相続計画: 複雑な相続税や事業承継の課題に対し、効果的な計画の立案と実行をサポートします。
3. ライフスタイルサービス: 資産家一族の医療・教育・慈善活動など、個人的なサービスに関するアドバイスや業者選定を行います。
4. 税務・法務管理: 資産家一族の税務申告や法的問題に対するアドバイスと管理を包括的に行います。
5. 事務・経理作業: 資産に関する煩雑な事務・会計業務を代行し、資産家が本業に集中できる環境を整えます。
6. 家族ガバナンス: 事業承継における後継者への経営権の引き継ぎや、一族の人間関係を良好に保つための調整役を担います。
7. 次世代の教育: 次世代の資産家育成を目的とした金融教育や、リーダーシップ研修などの機会を提供します。

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2. ファミリーオフィスの運営における最新の課題

ファミリーオフィスの運営は、多岐にわたる専門知識と組織的なノウハウが求められるため、いくつかの課題が残されています。特に2025年現在、注目すべき課題は以下の通りです。

1. 運営責任者: 運営業務は属人的になりすぎないように、もし、責任者の交代が必要な場合は、円滑に行われなければいけません。特定の個人の能力に依存しない、組織的な体制構築が重要です。
2. 信頼できる運営スタッフの採用: 運営スタッフは、顧客のプライベートな情報に触れるため、採用には高いハードルがあります。
3. 外部専門家との関係維持: 外部の専門家は永続的に存在するわけではないため、代替可能なネットワークを常に構築・維持する必要があります。
4. 次世代への財産承継: UBSグローバル・ファミリーオフィス・レポート2025によると、多くのファミリーオフィスが次世代への財産継承を大きな課題と捉えていますが、継承計画の第一歩から次世代の意見を聞いているファミリーオフィスは少ないのが現状です。
5. テクノロジーの導入: リモートワークの普及や業務効率化のため、財務管理ソフトウェアなどのテクノロジー導入が求められていますが、その選定や運用には専門的な知見が必要です。

これらの課題を解決するためには、単なる業務代行ではなく、長期的な視点での「組織作り」が不可欠となります。

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3. ファミリーオフィス担当者に求められる役割

ファミリーオフィスの機能や課題を踏まえると、その担当者には多岐にわたる役割が求められます。

1. 資産管理とコンサルティング: 資産家一族の資産を包括的に管理し、客観的なデータに基づいたアドバイスを提供します。
2. 円滑なコミュニケーション: 資産家一族や外部専門家と円滑に意思疎通を図り、信頼関係を築く役割を担います。
3. 価値観の理解と具現化: 資産家一族の想いを深く理解し、適切な計画として具現化する「翻訳者」としての役割が重要です。
4. ゲートキーパーとしての役割: 金融機関や専門会社からの提案を精査し、顧客の利益を最優先する番頭役として機能します。

専門会社が提供するコマーシャル型のファミリーオフィスでは、これらの役割を内部スタッフと外部専門家が連携して分担することで、効率的かつ高品質なサービス提供が可能となります。

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4. ファミリーオフィスの運用に関するよくある質問（FAQ）

Q1: ファミリーオフィスに依頼する際、どんなことに注意すべきですか？

A1: 運営上の課題でも触れたように、担当者の能力が属人的になりがちな点に注意が必要です。特定の個人に依存するのではなく、組織としてのノウハウが蓄積されているか、そして複数の専門家が連携するチーム体制が確立されているかを確認することが重要です。

Q2: ファミリーオフィスは資産が少ないと利用できませんか？

A2: 伝統的なファミリーオフィスは莫大な資産が必要とされていましたが、現代のファミリーオフィスは多様な形態があります。資産規模よりも、資産管理の課題がどれだけ複雑かという点が重要です。複数の課題を抱える方は、少額からでもファミリーオフィス型のサービスを活用する価値があります。

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監修・執筆：渋谷 豊

ファミリーオフィスドットコム株式会社　代表取締役 大学卒業後、邦銀にてキャリアをスタート。大学院を修了後、Citibank N.A.、仏銀ソシエテ・ジェネラル信託銀行、Societe Generale Bank & Trust Singapore において、プライベートバンキングおよびアセットマネジメント業務に従事。海外勤務7年間を含め、グローバルな資産管理の実務経験を有する。 帰国後は、上場企業グループ傘下の投資顧問会社の代表取締役として、富裕層および上場企業オーナー向けの資産運用助言・ファミリーオフィス業務を統括。資産運用・管理領域における実務歴は25年以上に及ぶ。 2019年設立のファミリーオフィスドットコム株式会社において、中立的立場から資産管理・運用に関する総合的支援を提供。また、2019年より、厚生労働省年金局資金運用課（GPIF 所管）の資産運用研修にて講師を務めている。慶應義塾大学大学院修了。

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